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街の中は殺気に溢れてました。

裸足に気づいたリョクさんは、サイズの合わない靴を再び履かせてくれました。

足の傷は薬のおかげで、ゆっくりですが歩けるようにはなっています。

靴底をするように歩く俺に、リョクさんは何度も背中に乗ればと声をかけてくれます。


だが、断る!


先程の女のようにいらない敵を作る気にはなりません。

街中を歩くと、すれ違う女性は熱い視線をリョクさんに送ってます。

そして、隣を歩いてる俺に気づくと、打って変わって鋭い視線を投げかけてきます。

怖いです。

こんな状態で背中に乗ったら・・

考えただけ寒気がします。

絶対に闇討ちされる。


「あっ、ちょっと待ってて」


何かを見つけたリョクさんは、再び俺を置いて行ってしまいました。

ヤバイです。

ジリジリと女性たちが自分に近づいてきます。

あ~、先程の嫌な記憶が思い浮かびます。

また、女性にいちゃもんをつけられるのでしょうか・・・


「お待たせ~。はい」


すぐに戻ってきたリョクさんの手には、一足の靴。

ピンクの花のコサージュがついている可愛い靴です。


おい!


思わずジロリとリョクさんを睨む。


「違うよ!これが一番小さいサイズだったの。後は子供用だんだよ。本当に色もその色しかなかったし、とりあえずってことで。ねっ」


必死に言い訳する姿に怒っているのもバカらしくなってきます。


「お金、持ってないんですけど」

「あっ、それは大丈夫。プレゼントってことで」


ただより高いものはない。

金は借りるな、貸すな。

貸すときはあげるつもりで渡せ。


俺なりの持論です。

これを曲げるつもりはありません。


「理由もなく物を貰えません」

「へ~しっかりしてるんだね。じゃぁ、理由作ればいいじゃん」


だから、その理由がないんです。

むしろ自分があげる立場だと思うんですよね。

助けてもらったし、迷惑かけてるし。

迷惑料としての金額はかなりのものだろう。


「理由・・理由・・あっ!」


何かを思い出したのか、リョクさんがポンと手を鳴らす。


「おっぱい触らせてもらったから、そのお礼ってのはどう?」


空いた口がふさがりません。

確かに触らせました。

だけど、それは確認のためであって・・・


って、前後の語をすっとばさないでください。

その言葉だけだと、周りに変な誤解を与えます。


あっ、既に手遅れなんですね。

一気に膨れ上がった殺気が俺に降り注いでます。


「いい物触らせてもらいました」


両手を合わせてお礼を言われてしまった。

いえいえ、粗末なものを・・・って違うし。

気づいてください。

周りの殺気を。

女性の鋭い視線を。


ここは、逃げるが勝ちです。


「ありがたく頂戴致します」

「いえいえ喜んでいただけて幸いです」


喜んではいません。

本当は履きたくないです。

でも、さっさとこの場から離れたいのが一番の理由です。


どこに行くかは知らないけど、靴を履き替えた俺は先に歩き出す。

いつの間に横に並んだのか、ちらりと横目で見れば置いてきたはずのリョクさんがニコニコ笑いながら付いてくる。


「お腹空いたね。どっか入る?おすすめのお店がこの先にあるんだよ」


あんまり話かけないで欲しい。

先程から突き刺さる視線が痛いです。

横を歩くだけで睨まれるのなら、離れて歩けばばいい。

無言で実践しているんだけど、上手くいきません。

ゆっくり歩けば、彼も歩く速度を緩め。

早く歩けば、歩調を合わせ。

離れれば近寄ってくる。


「あの~、離れて歩いてもらえますか?」

「ん?どうして?」

「あなたのせいで女性に睨まれているからです」

「え~、感じないけど」


そりゃぁ、あなたは感じないでしょう。

彼女達はピンポイントの殺気を自分に飛ばしてきていますから。


「ん~、離れちゃうと迷子になっちゃうよ」

「大丈夫です。少し後をついて行きますから」


自信を持って言えます。

見失わないです。

女性の視線を追えばどこにあなたがいるのか直ぐに分かります。


納得のいかない顔をしたリョクさんを残して、数歩離れて歩いてみる。

背が高いのもあるし、道行く人がリョクさんを避けるので分かりやすい。


でも、何故だろう?


離れて歩いているのに。

睨まれる。

その上、先程まではなかったのに態と肩に当たっていく人もいる。

よろけながらも見失わないように必死に後をついて行く。

すると、クルリと振り返ったリョクさんは大きなため息をついた。

なんだろう?

首を傾げながらリョクさんが近づいてくるのを待った。


「あのさ、俺の上着着ている限り状況は変わらないと思うけど・・・むしろ守れない分大変な事になってるじゃん」

「あっ!」


忘れてました。

上着を借りていることを。

軍服みたいな上着だから、俺が着ているのもおかしい。


って、俺が大変な事に気づいていたんじゃん。

すっとぼけやがって。

ちょっとイラっとしたことは内緒です。


「でも、どうしてこの服がリョクさん物だって分かるんですか?」

「ん~、色かな」

「色ですか?」


上着の色は白です。

因みにリョクさんの履いているズボンの色も白です。

上下白の軍服に近いような物をリョクさんは着ていました。


「白に理由があるんですか?」

「まぁね。すぐにわかるよ」


なら待ちましょう。

直ぐじゃなかったら怒りますからね。

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