女は怖いです
結果、すんなり街には入れました。
入口には守るように槍を手にしたおじさんが2人怖い顔をして立っていました。
中に入るためでしょうか?かなりの人数が並んで順番を待っています。
怖い顔をしたおじさんとは対照的に優しそうな顔立ちの人が順番を持っている人たちの対応をしています。
荷物検査とか何かカードを見せたりとかで一人一人に結構な時間をかけていました。
それなのに、リョクさんは馬に乗ったままその横を進んでいきます。
軽く手を上げてフリーパス状態です。
自分も止められるかなと思いきや何のイベントもなく通れてしまいました。
門番も片手を上げて挨拶して終了です。
並んでいた人も何も言いません。
この人何者?
自分の頭上にあるリョクさんの顔を見上げる。
視線に気がつかないのかリョクさんはニコニコしながら先に進んでいきます。
中に入ると馬から下ろされて、その場で待つように支持されました。
リョクさんは馬を引き連れてスタスタと歩いて行ってしまいます。
取り残されていしまいました。
中に入れた人や道行く人がチラチラ自分を横目で見ていきます。
物凄く居心地悪い。
早く帰ってきてください。
視線に耐えられないので意識を切り替えて人間観察を開始。
どうやらこの門は入口専用みたいです。
誰もこの門から出てく人はいません。
効率はいいですよね。
商人もいれば、農夫もいるし、ハンターらしき団体もいます。
ん?
ハンターの団体中の一人に目が惹きつけられました。
発見!
発見しましたよ。
念願の生猫耳。
それもめちゃめちゃ綺麗です。
銀髪の背中まで流れるサラサラの髪。
スラリとした手足。
そして、胸当てに抑えられても負けない胸の膨らみ。
あれはEカップ位ありそうですね。
キュッとしまったお尻。
そして、流れるようなふさふさの尻尾・・・
ん?
もしかして、猫じゃなくて狐?
狐でもいいです。
お姉さんぜひお相手を・・・
そう思っているその女性が不意にこちらを見ました。
視線が合う。
次の瞬間、その目が大きく見開かれ、こちらに近づいてきた。
やった~。
お姉さんに俺の気持ちが届きました。
ぜひぜひお相手を。
浮かれていたのも束の間そのお姉さんの様子がおかしいです。
まるで敵に遭遇したような剣呑な目つきです。
目が完全に座ってます。
睨まれてます。
すみません。
下心は捨てますのでそんなに睨まないでください。
美人のガン付けは迫力があるので怖いです。
「ちょと、あんた」
「なっ、なんでしょう」
蛇に睨まれた蛙とは、まさに自分の事を言うのでしょう。
自分の前にたったその女性は、見上げるくらい背が高いです。
自分の目線の先には、ふくよかな二つの膨らみが。
少し手を伸ばせば確実に揉める距離です。
触っていいですか?
「なんで、リョク様の服着てるのよ!」
リョク・・様!?
って誰?
思考が停止しました。
「ちょっと聞いてるの?あんたリョク様のなんなのか聞いてんだよ!」
「えっと・・・リョク様って・・」
「はぁ!?すっとぼけんのかよ!あぁ!?」
えっと女性なのにドスを効かせた口調はいかがなものかと・・・
胸が大きくても、やはり女性は物静かな方が好きです。
三歩下がってついてくる。
主人の影は踏みませんよ。
って女性がいいです。
今時いませんけどね。
「脱ぎなさいよ」
「えっ?」
「リョク様の上着脱げって言ってんのよ」
この下はボロボロのワイシャツなので脱げません。
元男なので脱いでもいいのですが、今はささやかながらも膨らみがあります。
脱いだら、公然わいせつ罪で即逮捕です。
「脱げって言ってんのが聞こえないのかよ!」
女性の手が、借りた上着にかかります。
やばいです。
ピンチです。
「何やってるの?」
救世主登場。
元凶でもあるけどね。
すぐ後ろから声が聞こえます。
振り向いて確認しようとして、無理でした。
近すぎて、広い胸板しか見えません。
「ねぇ、何やってんの?」
顔は見えないけどリョクさんの口調が冷たい。
女性がおどおどとした表情で、俺から手を離しました。
「わ!私は、リョク様の上着がこの女に盗まれたから取り返そうと・・・」
えっ!
自分泥棒設定ですか?
いつの間に、そんな設定に?
女性の頭の中ではどういうストーリーが作られているのだろう。
話出したので少し聞いてみることにします。
「この女は前からリョク様の周りをコソコソ付け回していたんです」
前もなにも、昨日初めてこの世界に来ましたからその設定は無理があります。
「リョク様の変な噂を流していたのもこの女なんです」
昨日知ったばかりの人の噂なんて流せません。
というか、この街はたった今来たばかりです。
むしろ変な噂ってどんな噂なのかそっちの方が気になります。
「大体この女は、何人もの男と付き合ってるあばずれなんです」
昨日女になったばかりで、男と付き合った経験はありません。
男の時でもフリーの期間=年齢。
それが何か問題でも?
「リョク様にふさわしくなんてありません!」
血管がキレそうな程力説されなくても大丈夫です。
付き合ってませんから。
「相応しいか相応しくないかはオレが決める。他人に決められたくはない」
怒気を帯びた低い声が後ろから聞こえます
女狐の顔色が見る見る青白く変わっていきました。
「で、でも」
凄い!
怯みませんよこの女狐。
俺だったらおしっこチビっちゃってます。
だって、肌を刺すような殺気がが後ろから流れてきてますから。
「まだ、なにか?」
冷え冷えとした声に、女狐は一瞬俺を睨むと脱兎のごとく逃げて行きました。
あっ、睨むのは忘れないのね。
変なところに感心してしまう。
「1人にしちゃってごめんね。大丈夫だった?」
「はぁ、大丈夫ですけど。噂ってなんですか?」
「さぁ」
両手を広げて肩をすくめる仕草が様になっている。
「とりあえず、行こうか」
無理です。
足元裸足なんで、歩けません。