大事なモノが消えてしまったようです。
悲鳴を聞きつけてリョクさんが剣を片手に飛んできた。
「どうしたの?」
辺りを警戒しながら自分に問いかけてきます。
「ない」
「えっ?」
「ないの」
「何がないの?」
「俺のジュニアがなぁ~~~い!!!!」
男のシンボル。
男の象徴。
俺の分身。
それがないのである。
昨日まではあった。
学校でもトイレに行った。
そのときはきちんとそこに存在していた。
それなのに・・・
いまは何処にもない。
「え?」
リョクさんは不思議そうな顔をして自分を眺めています。
現状が理解できないという表情です。
「だ~か~ら~。男のシンボルがないの」
頭悪いな。
ここは直接単語を出すべきか?
放送では確実にピー音が入るであろう、単語を口にしようとする。
しかし、自分が口を開く前に相手からの衝撃の言葉がありました。
「ないのは当然でしょ?だって一海ちゃんって女の子でしょう?」
なんだって~~~~~!!
いやいや、生まれてから16年間男として過ごしてきました。
母親の股の間から生まれてきた時は、小さいながらも立派についてました。
美少女ゲームをして、何度もお世話になりましたよ。
そんな自分が女の子?
鼻で笑っちゃいます。
へそで茶が沸かせます。
それくらいありえないことです。
女みたいな名前だけど、
一つの海のように大きな心を持つって意味だよね。
とおじさんに言われてからは、名前でからかってくる相手を返り討ちにしていました。
力はないから言葉攻めだけど。
って、現実逃避してどうする。
今重要なのは自分のジュニアがどこに行ったのか、だ。
もしかして、足の間に挟まっているのかも。
パンツの奥に手を伸ばした。
するとありえない感触が指先に伝わる。
割れ目・・・
割れ目の先に穴なんてありましたっけ?
これは・・・そうだ!お尻の穴だ。
そうに決まってる。
そのはずなのに、穴が二つある。
涙が出てきます。
止まらないです。
「一海ちゃん。女の子だよ。だって・・・その・・・胸が・・・」
視線を逸らしながら、真っ赤になって横を向くリョクさん。
「胸?」
視線を下に向けると・・・
なんじゃこりゃぁ!!
小さいながらもきちんと盛り上がっております。
第一ボタンを外してるので、上から覗けちゃいます。
少し屈めば丸見えですよね。
まぁ、自分が女になったらきっと小さいよね。
なんて想像した通りです。
Aカップくらいの大きさかな。
貧乳って需要ないんだよね。
あははは。
って違う!
逃げてどうする。
分析するんだ。
どうしてこうなった?
これはきっと、偽物だ。
そうだ。
そうに決まっている。
手を伸ばして胸に触れると、小ぶりながらも柔らかい感触が手のひらに伝わった。
小さいから片手にすっぽりおさまっちゃ~~う。
じゃなくて、ヤバイ。
本物だ。
触っている感触もするし、触られてる感覚もある。
もしかして、女の子になちゃったの?
チートスキルの代わりがこれ?
神様。恨みます。
女に生まれ変わりたいなんて・・・ちっとも・・・
いや、一度・・いや、二度くらい考えました。
女の子胸って柔らかいのかな?触ってみたいなとか。
自分が女なら触りたい放題だぜ。やっほーーー!
なんて考えていましたが、本当に女になりたい訳じゃありません。
ごめんなさい。
もう考えませんから。
今すぐに男の子に戻してください。
そして、俺の分身を、16年間共にしてきたジュニアを返してください。
「か・・・一海ちゃん?さっきから一人でブツブツ言ってるけど大丈夫?」
心配そうに覗き込んでくる、リョクさんに視線を向ける。
その途端、ヒッと声をだして、後ろに下がった。
自分、殺気なんてもの出せませんよ。
それなのに何故怖がってるんですか?
「・・・リョクさん」
「なっ、なんでしょう」
リョクさんの顔が引きつっています。
まるで幽霊とうっかり遭遇しちゃった感じですね。
うふふふ
でも、逃がしません。
最後の手段です。
確かめるにはこれしかないんです。
「触ってください」
「えっ?」
「触ってください!」
俺はシャツをはだけて、怯えるリョクさんの両手を掴み自分の胸の上に置いた。
触られてる感触がある。
「揉んでください」
「えっ、えぇぇ~~~~」
「いいから!揉め!」
逃げようとしたリョクさんの腕を掴み命令する。
よほど怖かったのか、ビクビクしながらもゆっくりと胸を揉み始めた。
揉まれてる感触がする。
そして、ちょっと気持ちがいい。
その場に崩れ落ちた。
本物だ。
この膨らみは自分の胸についていて、神経も繋がっている。
紛れもなく、本物の乳だ。
四つん這いになりながら、涙が滂沱として止まらなかった。
死ぬような怖い目に遭うよりも、ショックだ。
このまま、心臓発作で死んでしまいたい。
いや、さっきのトラットに食べられてしまいたい。
男として生きていけないなんて・・・
「一海ちゃん。もしかして、男の子だったの?」
リョクさんが落ち込んでいる自分の肩に恐る恐る手をかけてくる。
こくりと頷くことでそれに答えた。
そして、今までのことを話始める。
自分でも信じられないような話を、経験したことない相手が信じられるわけがない。
俺だったら、信じないし。
むしろ白い目で見ちゃうよ。
そう思ってたからさっきは話さなかった。
でも、今は話さずにはいられない。
誰かに聞いてもらいたかったのだ。
自分の身に起こったありえない出来事を。
リョクさんは茶化しもせずに真剣に話を聞いてくれた。
整理しながら話したことが良かったのか、混乱も大分収まってきた。
まだ、ショックは引きずっているけど。
「そっか、それは辛いね。どうすれば戻れるか一緒に考えようか」
そう言って自分の上着を脱いで俺の肩にかけてくれた。
そういえば、前はだけていて、乳見せ放題のままでした。
「信じてくれるの?」
こんな嘘みたいな話。上目遣いにリョクさんを見つめる。
「本当は信じられないような話だけど、一海ちゃんが嘘言ってるように思えないし。なら本当なのかなって」
信じてもらえないと辛すぎる。
「本当です」
「うん。大丈夫信じるよ」
微笑んだリョクさんの手が伸びてきて、俺の頭を労わるように撫でてくれました。
優しくて大きな手です。
不安感を全て吹き飛ばし、安堵感に包まれました。
この先何が起こっても大丈夫。
そんな気がします。