パンのなる木
さて、ひとまずパンツを作れる材料は揃いました。
次は、糠です。
日本の主食はお米だったので米ぬかは簡単に手に入りそうなものですが、この国に米なんてあるのだろうか。
「リョクさん」
「ん?」
「米ってある?」
「こめ?」
いざ説明しようとすると難しいな。
なんの疑問も持たずに食べてたもんな。
「細くて長くて小さいもの」
おじさん・・間違ってない、間違ってませんけど説明が雑すぎて見たことない人には想像もつきませんよ。
隣を見るとやっぱりというかリョクさんとシャクさんは懸命に考えています。
「えっと、この国で頻繁に食べられてる物ってなんですか?」
「ん?メロだな」
「メロ?」
「あぁ、毎食出てきただろう」
思い返せば、食事を出してもらうと必ずバスケットに丸いパンが入っていた。
なんの違和感もなく食べていたけど、そっか、あれはパンという名前ではなくメロというのか。
まぁ、パンがあるなら小麦があるよな。
最悪米がなくても麦があればなんとかなる。
・・・・きっと。
「えっと、メロの素材に近いんですけど」
「メロの素材?」
「メロを作るための原材料ですよ」
説明しても三人の頭にはハテナマークが浮かんでいる。
王族だからなのか?
木にパンがなっているとでも思っているのだろうか。
アホだろう。
小学生でも分かるぞ。
原材料が小麦だって事は。
呆れた視線を向けながら口を開こうとした時、爆弾級の発言があった。
「メロはメロ栽培の人が作ってるけど」
「えっ?」
「えっと、メロはメロって木に大量になっているのを職人がもいで市場に出回っているんだ」
なんという異世界。
ワンダーランドですね。
パンが木になっているのか・・・
見てみたいな。
パンが木になる光景。
自分の妄想では、大量の食パンが木に連なっている。
シュールだ。
ぷくくく。
思わず笑いが漏れてしまう。
なぜ笑っているのか分からない、三人と原因が分かっているおじさんもニマニマと頬が緩んでる。
「シャクくん。オイラ見てみたい」
「いいよ。今から行く?」
頼られて嬉しいのかシャクさんがニコニコしてます。
目尻まで緩んでいて傍目にはスケベじじいにしか見えません。
まぁ、若いけどね。
しかし、困ったことになった。
こうなると糠ができなくなってしまう。
パンがあるということは米がなくても最低でも麦で糠を作ろうかと思っていたのに。
どうしよう・・・
俺は腕を組んで、悩む。
「とりあえず、メロ見に行こう」
「糠はどうするんですか?」
「なんとかなるべ」
おじさんの興味は既に木になるパンに向かってしまっている。
おじさん、器用じゃないから一つの事に集中すると他は疎かになるんだよな。
先ずは、おじさんの興味を満たすことにしましょうか。
でないと、パンツ作りに支障をきたしそうだし。
「分かりました。今から行っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。馬に乗れば1時間もかからずに行けるし」
「馬!!」
おじさんの瞳が輝きました。
例えその馬が日本の2倍もあって額に角が付いていても乗れるのはワクワクしますよね。
まぁ、馬は楽だからいいですけどね。
来た時とは別の門へと向かう。
出口専用の門だ。
リョクさんがその場にいた人に何か言うと、しばらくして3頭の馬がやってきた。
一頭は自分も乗ったことのある馬、コウだ。
俺を覚えていたのか、そばまで来ると顔を俺に近づけて匂いを嗅いでくる。
円な瞳はくぁいいのだが、如何せん大きすぎて怖い。
他は真っ黒なコウと同じくらいの大きさの馬と、ひとまわり小さく乳牛のような模様の馬だ。
「俺の馬のセキだよ。涼ちゃん用の馬はないから俺と一緒ね」
おじさんは自分一人で乗りたかったのか残念そうに口を尖らせます。
いやいや、初心者にはハードル高いですから。
無謀な事はやめてください。
この国に病院があるかもわからないし、医療が進んでいるかもわからないんですよ。
落馬して骨折でもしたらどうするんですか。
気苦労が耐えませんよ。
ため息をつくと、リョクさんが俺の肩を叩いた。
何を言いたいのかよくわかります。
訓練所でも聞きました。
因みに乳牛模様の馬は、幼女専用の子牛で名前はシショク。
王族の嗜みなのか、幼女でも馬は余裕で乗れるらしい。
俺は、王族じゃないもん。
反論したら、王族じゃなくても5歳くらいから馬には乗れるらしい。
俺、この国の人間じゃないもん。
軽々と馬に跨る三人。
シャクさんが馬上からおじさんに手を差し出し、おじさんはその腕を掴むと軽くまたがった。
身軽ですよね。
俺といえば、差し出された手にすがりついて、よじ登っている状況です。
バタバタともがきながらよじ登ります。
華麗?そんな言葉存在しました?
自分の辞書には載っていません。
結局一度降りたリョクさんい持ち上げて貰いました。
あぅあぅ、運動神経のなさに涙が出てきます。




