問題は解決してません。
「ん~、みぃ~は、兎と犬とどっちがいい?」
「はぁ?」
突然のおじさんの発言についていけません。
何故、兎?犬?
「ん?ネコのほうがいいか?」
「いやいや、何故に兎?」
「角隠すのに兎耳作ってやる」
「え~~~、兎だとシャクと同じになっちゃう。犬、犬、ぜ~ったい犬!ぐほ」
喚くリョクさんの腹に一発お見舞いする。
「も~、みぃ~はわがままだな。しょうがない。日替わりで付けるか」
いやいやいやいや、一言も言ってません。
隠すより、むしろなくす方法を教えてください。
「ん?そのままで行くのか?まぁ、牛?闘牛か?ワイルド系だな。だけどみぃ〜はワイルドより、可愛い方が似合うぞ。犬って感じだよな」
元々ワイルド系は求めておりません。
貧弱でガリガリなワイルドなんていないだろう!
「もー、どうしたいんだよ!ハッキリしろ!」
えーー!いきなりキレられても困ります。
何も言ってないですよ。
心では思ってますけど。
「みぃ〜は顔に出る」
慌て顔を撫でながらシャクさんとリョクさんを伺うと無言で頷かれました。
そんなに分かりやすいかな〜。
ヘコミそうです。
「いきなり言われても一海ちゃんも決められないしさっ、また明日って事で」
天の助け。ありがとうリョクさん。
煩くてバカで使えないと思ってたけど、訂正します。
猫より役に立ちます。
「みぃ〜それ誉めてないぞ」
あらら、心の声がだだもれです。
リョクさんは猫ってなに?と首を傾げてます。
猫とは目の前で展開についていけず、ぽけ~と口を開けているパールスさんのことです。
可愛いくせにプライドが高く我が儘で気まぐれで憎めない。
そんな生き物です。
まさにパールスさんそっくりですね。
特にプライドが高くて高慢ちきなところ・・・
「高慢ちきってなんですの?」
可愛く首を傾げて答えを求めてきますが、絶対に答えられません。
憎たらしい人を罵る言葉なんて・・・
「猫とは、可愛らしく人間に愛されている生き物です」
「そうなの?」
「はい。とっても可愛いんですよ」
「そっか・・・」
真っ赤になって照れて下を向いてしまったパールスさん。
そんな彼女を見てホッと胸をなでおろす。
危ない危ない。
下手すればまた暴れられるところだった。
パールスさんが馬鹿でよかった~~~。
「一海ちゃん。聞こえてるから」
ポンとリョクさんの手が肩に置かれた。
そしてフルフルと小さく首を横に振っている。
慌てて口を押さえるがすでに遅し・・・
恐る恐る伺うとパールスさんが怒りで震えてます。
そっとリョクさんの後ろに隠れます。
「馬鹿って、この私に向かって・・・許せませんわ!」
「まぁまぁ、パールスも落ち着いて。バカって言うのは否定できないでしょう?これだけの事を起こしたんだから」
「そうだ!そうだ!」
「大体、被害者である一海ちゃんはお前を罰することもできるんだよ。それをバカって一言だけで済ませてくれるんだからありがたいと思わないと」
「そうだ!そうだ!」
「パールスは反省が足りないよ」
「そうだ!そうだ!」
リョクさんの後ろで隠れながら体を上半身だけ出して相槌を打つ。
歯ぎしりしているパールスさんに舌を出して小馬鹿にする。
「リョクお兄様を後ろに隠れるなんてずるいわ!」
「ばーかばーか!使えるものはなんでも使うんだよ~」
「き~~~~!!」
「へっへ~ん。べろべろべ~~~」
リョクさんがいるために俺に手が出せないパールスさんは物凄く悔しがっている。
ニヤリと笑っていると、頭に軽く衝撃が加わった。
「いで」
「みぃ~、遊んじゃダメ」
原因はおじさんでした。
ちぇ、折角楽しいおもちゃを見つけたのに。
唇を尖らせて不服そうにする。
「今日は遅いから明日にしなさい」
えって?そういう問題?
明日ならいいの?
パールスさんも思わぬ言葉にキョトンとした顔をしている。
あれ?パールスさんの怒りも溶けてるや。
俺も水を差されて遊ぶ気分じゃなくなっちゃったし。
しょうがないね。
「シャクくん。もう、眠い。俺。明日にしよう。」
いや、カタコトだし。
さっきまで寝てたよね。
もう眠いの?
「そうだね。明日にしようか。パールス行くぞ」
「おやすみ~~~」
パールスさんを連れて部屋を出て行くシャクさんを見送ると、何故か俺たちサイドにリョクさんもいる。
「お前もでてけ~~~!」
「え~~~ん。ひとり寝は寂しいよ~~」
「永眠してしまえ」
ブツブツ言っているリョクさんを蹴り出してやりましたよ。
ひと仕事終えて「さぁ、寝るか」と振り返るとおじさんがベットにいた。
そこ!俺のベット!
中央で寝ないでくださいよ。
既に鼾を掻いて熟睡しているおじさんを足でどかしながら自分の場所を確保する。
「あ~、長い一日だった」
大きなため息をついて目を閉じた。
だけど中々眠ることができない。
今後自分はどうなるんだろう・・・布団の中に潜り込みながら不安が押し寄せてきました。
元々そんなにポジティブな性格ではないのです。
思考がネガティブまっしぐら。
嫌な考えしか浮かんでこない。
ウトウトしても嫌な夢を見て飛び起きてしまいます。
夢の内容は、大勢の軍が自分を囲んで攻撃してくる。
その中には、おじさんもリョクさんもシャクさんもいて・・・
助けを求めているのに冷たい目で自分を見つめている。
シャクさんから放たれた攻撃が自分の心臓を貫いた。
そこで目が覚める。
「いきてる?」
何度も瞬きをして自分の現状を確かめる。
ここは、自分に与えられた部屋で自分がいる場所はベットの上。
隣には鼾をかいて口を開けて寝ているおじさん。
「大丈夫。大丈夫。生きてる」
目尻に涙が浮かんできます。
「大丈夫。みぃ~は大丈夫」
「おじさん?」
突然おじさんが俺にギュッと抱きついてきた。
えっ?泣いてるの気づかれた?と思って慌てたけどおじさんが起きている気配はない。
寝言かよ!
泣き顔を見られていないという安心感とおじさんの温もりに体の力ふっと抜けた。
そのまま目を閉じると、ゆっくりと眠りの淵に吸い込まれていった。




