エリュトロン王国の過去(俺とどういう関係が?)後編
「右側に特大火力!」
「「「「はい」」」」」
「一匹も生きて返すな。突撃~~~~!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ」」」
まず、攻撃魔術により敵を殲滅。
取りこぼしてしまった魔獣を勇蔵や勘三郎が叩き切っていった。
「こここ後方の皆様。3時方向にバリアをおおお、お願いします」
「はい」
今までは連携の取れていなかった部隊は、勇蔵や勘三郎、至によって統制が取れ始めた。
今までは個々の技術に頼っていて、連携、統制などという事をしてこなかった。
しかし、三人がきたことにより自分たちの役割分担をはっきりと示され、彼らの攻撃力は格段に上がっていった。
「どおぉぉぉぉ、りゃぁぁぁ」
最後の一匹を串刺しにして仕留めた勘三郎は、流石に肩で息をしていた。
「だだだ、大丈夫ですか?」
「うむ。かたじけない」
とてとてと寄ってきた至は勘三郎に水を渡している。
喉を鳴らしながら一気に飲み干した勘三郎は大きな息を付いた。
「王よ。この村で最後ですかな」
「はい。ここが一番最初に襲われた村です」
「そうか」
勇蔵は辺りを見渡す。
土壁でできた家は戦闘によりボロボロになり、あたりには魔獣の死骸がゴロゴロ転がっていた。
死んだ魔獣を避けながら至達後方部隊は、前衛部隊に水を渡したり傷の手当てをしている。
「随分強くなりましたね」
「ん?」
「至君です」
「そうだな」
最初は泣き喚いて何度も気を失っていた。
それが、今は率先して傷付いた兵士たちを気遣っている。
「ありがとうございます。貴方方のおかげでこの国は救われました」
深々と頭を下げる王の姿に兵士達もヨロヨロ立ち上が足りながら、彼らに頭を下げた。
「えっ、えっ、だだだ、大丈夫です。ああ、あた、頭を上げてください」
水を渡していた兵士に頭を下げられ至はオロオロした。
「う~む。頭を下げるのはまだはやかもしれん」
「勘十郎どの?」
「嫌な予感がする」
勘十郎の勘は当たる。
この一年で彼らはそれを身を持って知っていた。
「せいか~い♥むっさいおじさんだけどいい勘してんじゃん」
場違いな台詞にその場にいた全員が声の方に振り返った。
「あわわわわ」
その姿を見たとたん怯えた至は勘十郎の背後に回って身を隠す。
「逃げんじゃねーよオタク!」
怒鳴り声にビクッと肩をすくめた至は、勘十郎の背後で小さい声何度も謝っている。
「・・・森川・・君?」
「あら、覚えてくれたの?嬉しいわ」
にっこり微笑んだ唇はありえないくらい真っ赤に染まっている。
「お主死んだのでは?」
「私が死ぬ?ありえな~~~い」
勘十郎の言葉に甲高い声で笑い始めた。
そして突然笑いを収めたと思ったら、その場にいた全員を睨みつける。
「だが、魔獣に食い殺されたと聞いたが」
勇蔵は視線と指の動きだけで兵士達に下がるように促した。
それを確認した兵士たちも、雪にバレないようにゆっくりとした動きで移動していく。
「食われたわよ。森で私の体を魔獣が囲み生きたまま食われたわ。あなたに分かる?自分の内蔵が引きずり出される感触。ねぇ、自分の肉を引きちぎられる痛みが分かる?自分の骨を噛み砕かれている音を聞いたことがある?」
その言葉に情景を想像してしまったのだろう。至が口元を手で覆って吐き気に耐えていた。
「何故、何故なの?私は被害者だわ。勝手に呼ばれてその上魔獣に食い殺されて。許せるわけ無いでしょう!だからお願いしたの、私を食ったんだから力を寄越せ。私にあいつらを殺す力を寄越せって」
そう言いながら雪は目深にかぶっていたフードをゆっくりと外す。
フードの下から現れた雪の頭には黒々とした角が生えていた。
「私ね。力が使えるようになったのよ」
「力?」
「そう、こんなふうにね!」
腕でを横になぎ払った瞬間、その軌道上にいた人間たちの首が胴と離れた。
「あぁ、あ、あ、」
目の前に転がってきた首と目があった至は言葉を失った。
「私ってば優しい」
「優しいって!」
「優しいでしょう?一瞬にして死ねた。食われる恐怖も、引きちぎられる痛みも知らないで死ねたんだもん。優しいでしょ」
「森川君。君は」
「あなたたちは、人間代表として魔獣を殺し私は魔獣代表として人間代表を殺す。平等でしょう?」
両手を広げてアピールするその顔にはうっすらと笑が浮かんでいる。
「だからね」
一旦止まった雪は、笑みを深め勇蔵、勘三郎、至を順番に見つめる。
「皆殺しだ!」
雪にはありえないくらい低くいこえで叫ぶと両手を交差させる。
「うわ~~~~!」
その場が阿鼻叫喚に包まれた。
なんとかその場を立て直し命からがら逃げたが、生き残ったのは僅かだった。
戦闘を終えたばかりで安堵感に包まれていた上、対雪への作戦もままならないまま大勢の死者を出した。
「くっそ。あの女のせいで!」
勘十郎は会議室の机を力いっぱい叩いた。
「ふむ。あの力は一体何だ?」
足を組んだ勇蔵は顎に手を当てて考える。
「あの・・・たたた、多分、かっ、かまいたちと呼ばれる、もっ、物じゃないか・・と」
「ふむ、かまいたか。空気を真空状にして刃にして飛ばしてきたのか」
「あ、あの!」
「ん?」
「ゆ、ゆゆ雪さんを殺すんですか?」
「しかたない」
冷たい勇蔵の言葉に至は眉間に皺を寄せた。
「でででも、雪さんも、ひ、被害者なんじゃないかなって」
「確かに彼女も被害者かもしれない。だが。人を多く殺した」
「ぼ、僕たちが、あの、あの時直ぐに探していれば、たす、助かったかもしれない。ぼぼ、僕達も彼女を、ここ殺したんじゃないかな」
「至よ。確かに拙者達はあの女を見捨てた。だからといって人を殺していい理由にはならないじゃろう」
勘三郎の言葉に至は下を向いて項垂れた。
そんな至るの肩に労わるように勇蔵は手を置いた。
「もし、このまま彼女を野放しにしていたら、もっと多くの犠牲が出る。なんの関係もない人達が多く死ぬだろう。彼女は言ったろう?皆殺しだと」
「う、うん」
「これ以上彼女が罪を重ねないように、俺達が殺してあげよう。ね」
「わ、分かった」
勇蔵の説得に至はやっと頷いた。
その後三人は作戦を立てる。
先ずは、後援部隊がバリアを張り、その後前衛魔術師部隊が攻撃をする。
最後は、勘三郎が一瞬で命を絶つという戦法だ。
少なくない犠牲を出したが確かにうまくいった。
勘三郎が雪の胸に刀を突き立てたところまでは。
「私からの贈り物よ。受け取ってね」
突如この世界全体に土砂降りの雨が降った。
通り雨だったのだろう、一瞬にして止んだが、人々は自分の姿に驚いた。
自分の頭上にありえない物が付いていたのだ。
「おい!雪。これは一体・・・」
勇蔵が問い詰めようとしたが雪はすでに息を引き取った後だった。
国は平和を取り戻したが、後に残ったのは頭上に生える変な耳。
呪われたと人々は恐怖に陥り、生まれてくる子供の異様な耳と尻尾を見て、絶望した家族が一家心中や子供を殺してしまう事件が数え切れないくらい起こった。
王や大臣それから異世界から人間も協力し合い人々の心のケアにあたった。
そのかいあって数年後には自ら命を絶つものは減り。
真実を知る者たちは固く口を閉ざした。
だが、同じ過ちを繰り返してはいけないとおとぎ話にして後世に伝えたのだ。




