エリュトロン王国の過去(俺とどういう関係が?)中編
母が消えてまもなく四人の見たこともない格好をした人間が城を訪れた。
とりあえず、広間に通され残った数少ない兵が周りを警護する。
「あんたがこの国の殿様?」
「と、とのさま?」
カチャカチャとなる重そうな服を身につけ、髭面のこわもての男が野太い声で話しだした。
単語の分からない王は首をかしげる。
それを補足するようにやせ型で神経質そうな背の高い男がメガネを上げながら聞いてきた。
「一番偉い人って意味」
「まぁ、そうだが」
戸惑いながらも頷いた王に、茶色の長い髪の女性が上から下まで品定めするように王を見つめて何度か頷いている。
「まぁまぁ、イケメンだね。合格かな~?」
「はぁ、イケメンって・・・あの~、これは一体・・・」
状況についていけない王も、大臣も残った数少ない兵士たちも警戒しつつも訳が分からずに四人に訪ねた。
「それはこっちが聞きたいわ!、いきなりこんな変な場所に落とされたのよ。おかげで爪が割れちゃったじゃない」
重要なのは爪なのか?と思いながらまともに話をできそうな相手を探す。
キョロキョロと落ち着きのない動きをする、小太りの少年。
動くたびにカチャカチャなる服を着ている、むすっと口を一文字に閉じている中年。
目の上が青く真っ赤な唇をしている女性。
メガネの奥からこちらを観察している青年。
冷静に今の状況を観察している青年に声をかけた。
「あの~」
「ん?」
相手がどの立場かわからない以上、大きな態度で出るのはまずいと思った若き王は、伺うようにしてメガネの青年に向き合った。
「えっと、もしかして森からいらっしゃったのですか?」
「森?あぁ、気がついたときは森の中だったな」
「もしかして!」
その言葉に、王と大臣はハッとした。
「あなた方がこの国、ひいては世界を守ってくれる神なのですか?」
「はぁ?神?ばっかじゃないの?今時神なんて存在信じてる人間いるなんて、笑っちゃうわ!」
女は王の言葉を鼻で笑った。
しかし、メガネの青年は顎に手を当てて何かを推測しているようだ。
「おそらくだが、貴方方は何らかの儀式をして神を召喚した。そして現れたのが自分たちということになるのかな?」
「私も儀式を見た訳ではないですが、近くに女性がいませんでしたか?」
「いたな。死んでたから連れてこなかったが」
「そう・・・ですか・・・」
やはり儀式の代償に母は死んだのだと肩を落とす。
すると、やはり命をかけてまで呼んでくれたこの四人は神なのだ。
だが、この四人にこの国が守れるのか?
一人はひょろひょろ、一人はガタイはいいが無口、一人は派手で口うるさく、最後の一人はオロオロと視線を彷徨わせ落ち着きがない。
本当にこの四人は神様なのだろうか?
母が命をかける必要はあったのだろうか?
「たたた、たぶん。いいいい、異世界ト、トリップ・・・」
「あれは想像の話だろう?」
「ででで、でも、現実におこ、起こってるし・・・」
小太りの男と、神経質な青年が話をしている。
「ふむ、儀式とも言ったし、俺達に何らかの事をして欲しいということか?」
「たたた、多分」
会話をしていた男たちは視線を王に流した。
「はぁ?何かするわけ?ただで?」
「勿論!無償というわけではありません。必ずお礼はします!」
「何くれるの?宝石?お金?こんだけ大きなお城なんだもんいっぱいありそう」
「金銭は・・・ありません」
「はぁ?ただ働き?冗談やめてよね。勝手に呼んでただで働け?ばっかじゃないの?この国のことなんて私に関係ないし、どうせなら皆死んじゃえば?」
男達が口を開く前に女が高い声で王に迫った。
甲高い声が気に障ったのか、無口の中年男性が眉間に皺を寄せる。
「女!黙るがよい」
「なによ!その古臭い格好。コスプレ?だっさ~い」
「むっ、拙者の甲冑を馬鹿にするとは叩き切ってやる」
「やれるもんなら、やってみなさいよ。人殺せば死刑なんだからね」
「本当に黙ってくれ。先に進まない」
メガネの冷たい眼差しに女は渋々というように口を閉じた。
「あなた方が我々に何をして欲しいのですか?」
「国を守ってもらいたい」
「何から?」
「数多いる魔獣から」
「魔獣とは?」
「あああああれ」
「ん?」
「くくく来るとき見たばばば化物」
「あぁ、狼もどきか」
「ふむ、あれが魔獣か?」
「えっ?魔獣とあったんですか?」
「魔獣がどのような形なのかは分からないが、3メートルくらいの大きさで真っ黒とし、口からヨダレを垂らしている、四足の化物見たいのなを見たな」
「大丈夫だったのですか?」
「拙者にかかれば余裕でござる」
「はぁ」
「あれを倒せばいいのか?」
「そうです。本当は全部と言いたいところですが数が無数におります」
「ねぇ~、いつまで立たせたままなの?私たちお客様でしょう?喉も渇いたしお腹も空いた~」
女性の言葉にとりあえず、場所を移すことにした。
客室に通されソファに腰掛けた四人の前には飲み物と軽食が用意された。
「ちょっと、これだけなの?お金持ちなんだから良い物用意しなさいよ」
「すいません、今の食料事情ではこれでも精一杯でして」
大臣は相手が神かも知れないと思うと女の言葉に強く出れない。
「いや、温かい飲み物とご馳走。かたじけない」
「そう言っていただけて恐縮です」
ゴツイ男の言葉に、涙を浮かべる大臣。
一人静かに飲んでいたメガネの青年はカップをソーサーに戻すと口を開いた。
「とりあえず自己紹介をしましょうか?私は山本勇蔵、歳は21歳。大日本帝国の将校をしている」
「拙者は勘三郎。農民の出だが戦にて軍目付の名を頂いておる」
「ぼぼぼ、僕は、いた板橋、至、こ、日本の高校生です」
「私は、森川雪。こいつと一緒の高校生。でもうちの学校にこんなオタクいなかったわよ」
「底辺学校のくせに」
「あぁ?」
ボソリと呟いた至の言葉が聞こえた雪は掴みかかる。
「もういっぺん言ってみろよ。おあぁ?デブのくせに生意気なんだよ」
「ごめ、ごめんなさい」
「森川とやら、話を進めたい」
「うっさい貧乏侍。黙れ!」
「なんだと?愚弄するきか?」
「いい加減にしてもらおうか?とりあえず森川君、あなたは口を開かない方が懸命だ」
「なんですって~!」
「黙れってことだ」
「なっ!わかったわよ!」
雪は怒りのあまりその部屋を飛び出していった。
慌てて追おうとした大臣を雄三が止めた。
「追わなくてもいい。あいつがいては話が進まない」
「ですが・・・お仲間なのでは?」
「こちらに来て初めて会った。というよりあんな女今まで見たことがない」
「うむ。拙者も」
「ぼぼぼ、僕はあるけど・・・」
「そうは言いましても、街の外は魔獣がいますし、とりあえず兵に追わせます」
「そうか?ならお願いしよう」
「いえ」
話を聞いていた大臣は部屋に居た一人の兵に指示をだし雪の後を追わせた。
「私は、ユグランド王国の王をさせてもらっているユミンと申します」
「ふむ、王のくせに嫌に謙虚だな」
「そうですか?王だからといって威張っているのが正しいとは思いません」
「そうだな」
今まで冷たい目をしていた勇蔵の口元に一瞬笑が浮かんだ。
「ふむ、話を聞こう」
メガネを人差し指で上げた勇蔵に今までの出来事を全て包み隠さず話した。
「ふむ、なるほど」
「すみません」
「お主は悪くはないだろう。悪いのは、その~、う、右大臣と姫様なんだろう?」
「ですが、同じ王族のしでかしたことです」
「ふむ、我々が魔獣を倒してこの国を救えばいいのだな」
「お願い致します」
「ふむ」
そう言って顎に手を当てて考え込んでしまう。
「あああ、あのあの」
「どうしたのだ?」
「ぼぼぼぼ、僕、たた戦えません」
「むっ、男であろう?」
「むむむ無理です」
涙目になりながら否定する至を三人は見つめる。
「ふむ、おそらく戦闘的には私と勘三郎殿が呼ばれたのではないですか」
「ぼぼぼ、僕は巻き込まれただけですか?」
「板橋君、学校の成績は?」
「わわわ、悪くはない・・・です」
「得意な物は?」
「ととと、得には・・・」
「じゃぁ、好きな事は?」
「いいいい、囲碁・・・しょしょしょ、将棋・・・です」
小さく答えた至の言葉に勇蔵は何度も頷く。
「王よ、多分板橋君は戦略方面で呼ばれたのだろう」
「なるほどなるほど。拙者はやらないが将棋は何十手も先を読むものだと聞いたことがある」
勇蔵の意見に勘三郎も頷いている。
「と,いうことだ。だが、我々だけでは無理だろう」
「勿論です。私共も戦います」
「問題の森川君だが・・・」
勇蔵の言葉にその場が沈黙で満たされた。
一緒にた時間は短いがいても邪魔になるだけじゃないか。
そう思っていても誰も口にはしない。
「いいい、一緒にいるのは・・・むっ、無理です」
「拙者も不愉快だ」
「ふむ、だが、何らかの役割があって呼ばれたのかもしれないし」
「ででで、でも、ぼ僕、こわ怖い」
涙目で至は首を振り続けている。
チラリと勇蔵が王を見ると眉間に皺を寄せている。
城で留守番させることはできるが、短い間だが、あの様子を見ていれば絶対に問題を起こしそうだった。
問題を起こした場合、相手が神の一人ということで誰も文句を言えないし、おおごとになった時に対処に困る。
考えて顔を上げると勇蔵が伺うような視線で王を見つめている。
王はその視線に首を横に振ることで答えた。
「ふむ、彼女のことは後で決めればいいい」
ため息混じりの言葉で勇蔵が吐き出した直後、雪を追って部屋をでた兵士が慌てた様子で駆け込んできた。
森川雪が城の外に出てしまい、魔獣にさらわれたと。
その際護衛としていた兵士3名が食い殺されたとの報告だった。
魔獣にさらわれたら最後生きてはいない。
巣に持ち帰られたのだろうと推測が建てられ森川雪は死亡として扱われた。
「まだ、話してるのか?」
目を擦りながらおじさんが起きだした。
「えぇ、まだです」
「長いのか?」
「さぁ、多分本編には入っていると思いますが・・・」
「そっか~」
そういうとおじさんは再び夢の中に旅立って行きました。
俺だって、寝たいです。




