エリュトロン王国の過去(俺とどういう関係が?)前編
明けましておめでとうございます。
今年最初の更新。
だが、本編とはいえ番外編のようなものになっていまいました。
すみません。
「王よ。また東にある村が魔獣によって滅ぼされました」
「そうか」
生気のない声を出して報告してきた大臣に、王は窓辺に立ちどんよりとした空を見上げながら頷いた。
人間よりも魔獣が跋扈している時代だった。
多くの民衆は苦しみ、そしてなんの手立てもなく殺されて貪り食われて死んでいく。
無論、人間も何もしないわけではなかった。
討伐隊を組み、魔獣たちを退治していく。
しかし、人間よりも圧倒的に魔獣の方が多かったのだ。
「第56討伐隊はいかがした?」
「全滅しました」
「・・・そうか」
「はい。それと、国庫に残っておりました食料も・・・」
「・・・・・そうか」
悲しそうに若き王は目を伏せた。
王がまだ幼かった頃、この国は幸せに溢れていた。
余裕があった生活をしているわけではなかったが、街は活気に満ちていた。
しかし、今は人の姿を見ることは稀である。
人々は魔獣の恐怖に家に閉じこもり、街はゴーストタウンのようだった。
また、魔獣に襲われて死ぬだけじゃなく、飢えによって死んでいくものも多かった。
「私は、ただ、この国の幸せを願っただけなのにね」
遠くを見つめながら王が呟いた。
そもそも魔獣が蔓延る原因になったは、3年前の事。
突然先代の王が39歳という若さで急死した。
民にも慕われた王だった。
お忍びで城下街に遊びに行ったり気軽に街の人間に声をかけたりと民のことを一番に考え賄賂や横領な事を好まない公明正大な王だった。
そんな王を疎ましく思っていたのが、私利私欲に目がくらんでいる大臣だった。
コソコソと裏で暗躍する大臣たちを処罰しようとしていた、そんな時の急死。
人々は暗殺を疑った。
しかし証拠はどこにもなかった。
誰もが大臣達を疑ったが証拠がない以上処罰することはできない。
そんな中次の王に選ばれたのが、第一王子のメランだった。
メランは当時8歳。
当然第一王子なので教育は受けていた。
だが若すぎる上に性格にも難があった。
我が儘で癇癪持ちその上自己中心的。
気に入らないことがあるとメイドにあたり、調度品を壊す癇癪持ち。
母親である正妃はそんな息子を満足そうに見ていた。
何故なら第一王妃である母親が、我が儘な自己中心な性格だったからだ。
母親の父は、賄賂疑惑ナンバーワンに上がっていた右大臣。
金に困ることもなく幼い頃から欲しいものを与えられてきた正妃には、王の政策が耐えられずに財務省に賄賂を渡し出金伝票をごまかし贅沢三昧を繰り返していた。
その事をわかっていた王は、自分の跡を継ぐのは第二王子にしようと決めていた。
王子が16歳になったら発表しようと思っていたのだ。
第二王子のユミンはその時14歳。
そして、第二王子の母親こそが先代王が惚れて結婚した相手だった。
明るく優しく、元々城下町生まれなので質素なものを好んでいた。
正妃とはまるっきり反対の性格。
勿論息子である第二王子は第二王妃の優しさと明るさを受け継ぎ、真面目で勤勉、その上使用人たちにも好かれた。
一部の人間以外次の王は第二王子しかいないと思っていた。
そんな矢先の王の急死。
第二王子と第二王妃は首都から遠く離れた離宮に移され、王の実質的権利を握ったのは第一王子の祖父右大臣だった。
右大臣がした最初の政策は重い税を課すことだった。
人々は税を納めるために働き笑うことを忘れていった。
そんな時、大臣が目をつけたのが禁断の森だった。
今まで誰ひとり手を付けなかった森だ。
きっと多くの鉱山物が眠っているのだろう。
いざ、その森に立ち入ろうとした時、森の近くに村を構えた住民達が立ち塞がる。
「その森だけには手を出しちゃならねぇ」
「ばあさん、仕事の邪魔だ。あっち行け」
「だめだ~~!絶対にダメだ!その森は禁断の森だでや!手をづけじゃなんねぇ」
「そう言われてもな。禁断とか言ってもたかが森だろう?いざとなったら俺たちにゃお強い魔術師様がいる。大丈夫だって」
「だめだ~~~。絶対に森を犯しちゃならね~。祟りが下るぞ」
「なんだ?このばばぁ。耄碌してるんじゃねぇか?」
「おらぁ、邪魔だ!」
立ちふさがっていたおばあさんを乱暴に投げ捨てて、大臣から命を受けた人達が森へと進んでいく。
「あぁ~、行ってしもうた」
「ばぁさん。俺たちも逃げようや」
山の麓に住む村人たちはその日の内に全て村から抜け出し、遠い国へと旅立っていった。
禁断の森には言い伝えがあった。
深き暗闇迷いし小人、光ささずに永遠の闇。
闇より溢れし住人が光の世界を埋め尽くす。
だから立ち入ってはいけないよ。
村人たちの決断は正しかった。
確かに大量の鉱石や珍しい鉱山、そして宝石の原石などが山のように出てきた。
しかし、それだけではなかった、今まで見たこともない魔獣達も現れたのだ。
あっという間に山に入った人々は食い殺され、魔獣たちは森を続々と抜け出して行った。
森から溢れ出る魔獣達は途切れることを知らない。
血に飢えた魔獣は村を襲い人々を食い殺しながら、街の中心に迫っていった。
その報告を受けた右大臣は娘と孫を連れて真っ先に逃げ出し、逃げる途中の道で魔獣に殺された。
国中が悲鳴と恐怖に怯える中、次の王に立ったのが離宮に隔離されていた第二王子だった。
離宮で報告を聞いていた第二王子は真っ先に討伐部隊を送り出していた。
母親と王宮にもどる道すがら見たは、廃墟になった村。
そして食い荒らされた村人たち。
悲しみにくれながら王宮に戻り最初にしたことは、民の安全確保や食料の配給だった。
しかし、どんなに討伐隊を出しても魔獣は減ることがなく被害者が増える一方。
このまま国どころか世界が滅ぶのかと若き王は絶望にくれた。
その時、一人の老婆が若き王に面会に訪れた。
若き王の前に現れたのは、禁断の森の近くに住んでいた森に入ろうとする人物たちを止めた老婆だった。
「どうしましたか?私に用があるとの話でしたが」
優しく問いかける王に老婆は鋭い視線を投げかけた。
「あたしらは森の麓の村に住んでいた。言い伝えを守り森を守り、国を世界を守ってきた」
「はい」
「それをお前らが壊した!」
自分がしたことではなくても、王族の一員である人間がやったこと。
老婆を止めに入ろうとした大臣を視線で止めた王は怒りを一手に引き受けた。
「この世界は終わる!」
森番だという老婆の言葉に、絶望を感じた。
「深き暗闇迷いし小人、光ささずに永遠の闇。
闇より溢れし住人が光の世界を埋め尽くす」
老婆が発した言い伝えに首をかしげた。
それは王も知っている。
何故今更・・・
「続きがある。これは我が一族だけに語り継がれた伝承だ」
世界が暗澹に包まれし時、一人の御子が現れ祈りを捧げたし。
神が降りたち世界は光に満ち溢れる。
「どういうことですか?この国はまだ救えますか?」
「救えるが、犠牲が必要じゃ」
「えっ?」
「神に祈りを捧げた巫女は帰ってこなかった」
「それって」
「死んだ。自分を犠牲にして神を呼び出したんじゃ」
お前に出来るか。
老婆の目がそう言っていた。
「それは女性ではなくてもいいのですか?」
「それは知らん。ただ、御子としか伝わっておらん。女か男か処女か非処女かもな」
「分かりました」
「王!」
この優しき王が何を言い出すのかを察した大臣が声を荒げる。
「なら男の俺でもいいんですね」
「王!この国は王がいなくいてはならないんですよ」
「違うよ。王とは国民を守ってこそなんだ。国民がいなきゃ国はできない。その国民が死の淵にいるのに王である私が立ち上がらないでどうする」
「しかし!あなたのような王は二度と現れない」
「そうか?父上が生きていても同じことをする。ほら、俺と父で二人だ。この先きっと現れる」
ニコニコと話す王の足にすがりつき大臣は何度も止めようと試みる。
「父の代から今までありがとう。これからもこの国を頼む」
片膝を付いた王は、泣き崩れるその肩そっと手を置いた。
「・・ユミン王子」
「呆れたの~」
二人のやり取りを冷めた目で見ていた老婆は口を開いた。
「何ですと!王子は!」
「はぁ~。この老いた婆でもわかるわい」
よっこらせという掛け声とともに老婆は、ソファに腰掛ける。
「死んで後は野となれ山となれってことかい?」
「先程から、老婆といっても王に対する狼藉の数々許しがたい」
憤る大臣を無視して、老婆は王子に語りかける。
「死ぬのは簡単じゃ。ここまで壊れた国を立て直すことのほうが大変なんじゃないかい」
「それはそうですが、でも!」
「あたしは、言ったよ。誰でも構わないって」
「だが、国民を犠牲にしてまで・・・」
「王族ってあんただけかい?」
「えっ?」
「さっきから扉の向こうにいる、女はあんたの母親じゃないのかい?」
「えっ?」
老婆の声と共にゆっくりと扉が開かれた。
「話は聞いていました。おばあさん、私でも大丈夫なんですよね」
「おそらくな。男よりは確率はあがるかもの~」
「では、ユミン。母が参ります」
「母上!」
「この国にはやはり指導者が必要。あなたの使命はこの国を立て直すこと。母にはそれはできません」
「ですが!」
「ユミン。私は息子の役に立ちたい。陛下の好きだった、私が生まれ育ったこの国を守りたい」
呆然と立つ息子に近づいた母親は、力の限り息子を抱きしめた。
「あなたにはやるべきことがあるでしょう?私とて陛下に嫁いだ時から覚悟はしていたのよ。あなたも腹をくくりなさい」
「・・・母上」
「この国を頼みましたよ」
そう言い残し母親は立ち上がった老婆とともに姿を消し二度とその姿を見ることはできなかった。
『あの~、お話の最中すいません』
『ん?』
『今ってお話のどのくらいなんでしょうか?』
長い話にしびれを切らし、シャクさんを伺いながら恐る恐る手を挙げた。
『ん~、序章かな』
『うへっ』
長い。長すぎる。
まだ半分も行ってません
横目でチラリとおじさんを伺うと、すでに彼は夢の中の住人と化していた。
思ったよりも長い。
もっと簡潔にしたかった><
続きます。




