俺には野望があるんです
俺には野望があるんです。
異世界と言ったら・・・バトルでしょう。
城門でハンターを見た時に、働くならハンターでと決めました。
ただ、おじさんをどう口説くかが問題なんです。
一度決めたら即行動のおじさんだけどそこに至るまでが長い。
攻略方法を考えます。
「なぁ、シャクくん。この世界って広いの?」
唐突におじさんが口を開きました。
まぁ、いずれは聞かなければいけないことだと思いますが、いきなり過ぎてシャクさんも驚いています。
「まっ、まぁ、広いですね。この世界には3つの大国があるんです」
立ち上がったシャクさんは、白い紙に図形を書き出しました。
子供の落書きですか?
全く何を書いてるのか分かりません。
「えっと、何を書いてるんですか?」
「ん?世界地図」
え~~~これが世界地図・・・
大きな楕円形の丸がバラバラに並んでるだけの絵。
「シャクは絵が壊滅的に下手なんだよね~」
可哀想な子を見るような目でシャクさんをみながらリョクさんが呟く。
自分もシャクさんに同情的な視線を送ります。
「なんだよ~。言いたいことあるなら言えよ!」
「下手だな」
おじさんがトドメを刺しました。
胸を抑えてシャクさんがその場に倒れ込みます。
「個性的な絵だと思いますよ」
ピカソだって死んでから絵の評価が出たんだ。
未来では素晴らしい絵として認められるかもしれない。
現在は、ただの落書きに見えたとしても。
「一海ちゃん。聞こえてるから。そしてそれフォロォーいなってないから」
リョクさんが俺の肩を叩き促した先を見ると、更に落ち込んで立ち直れない様子のシャクさんがいました。
フォローのつもりがトドメを刺してしまったらしいです。
「書いてやる。説明しろや」
おじさんがシャクさんから紙とペンを奪うと、立ち直ったシャクさんの説明を元にサラサラと地図を完成させていく。
途中で、地図を取りに行けば早いんじゃないかと思いましたが、余りにも真剣な様子に控えました。
物凄く分かりやすくなった地図を元にやっと説明が始まりました。
「一つはここ、エリュトロン王国。後クサントン王国。カエルレウム王国がある。一番安全なのがこの国ね。一番危険なのがカエルレウム王国。ここでは内戦が起こっていて、大勢の人が死んでる。で、クサントン王国は戦争とかないけど一年中氷の世界だね。物凄く寒いよ」
王子の用意した地図を覗き込みながら頷く。
一つ一つの国の大きさは、ロシアくらいに大きい。
フムフムと頷いていたおじさんが、この国を指さしました。
「んじゃ、この国全部回ってみっか」
「えっ?」
「だって、エリュトロン王国って安全なんだろ?シャクくん今言ったじゃん」
「言ったよ!確かに言いました。でも他の国よりも安全ってだけで、盗賊とか魔獣とかいっぱいいるんだよ」
「国がデカけりゃ、危険だって伴うさ」
「だけど!」
「シャクくんはうるさいなぁ」
進言を無碍にあしらわれたシャクさんは、床に沈み込みました。
うわ~おじさん逆ギレですか。
細かいことはおじさん気にしませんもんね。
でも、自分にとっては絶好のチャンスです!
旅と言ったらやっぱりハンターですよ!
異世界を股にかけるハンター!
ここで、失敗は出来ません。
慎重に行動しなくては。
「旅するのはいいけど、お金はどうしますか?」
「ん?日雇い?」
「じゃぁ、ハンターします?」
「ハンターってなんだ?」
「一つのものを究極に追い求めるんです」
「みぃ~の言葉難しい」
「簡単ですよ。トレジャーハンターとか聞いたことありません?」
「ある。でも宝に興味はねぇな」
「宝だけじゃないんですよ。悪い人がいたらおじさんどうします?」
「許せねぇな」
憤慨したよにおじさんが顔をしかめる。
手応えアリ。
もうひと押し。
「そうでしょう。悪者を退治したりするのもハンターの仕事なんです」
「ほぉ~。悪者退治・・・」
まだまだ、押しが弱いのか興味は持ってくれたが食いつくほどではない。
ならば最後の手段。
「釣りとかもできますよ」
「釣り!?」
「幻の魚を追い求めたりするのもハンターです」
「よし。ハンターになろう」
やりました。
同行者の許可を取りました。
こうなったら異世界を満喫します。
異世界といえばギルド登録でハンターでしょう。
定番です!
今からワクワクしてきます。
しかし、邪魔はどこにでも入るもの。
ずっと床と友達になってくれればいいものを、シャクさんが復活をしました。
「ハンターになろうって、女の子なんだよ!野宿とかもあるんだよ!」
「大丈夫だべ、バックパッカーやってた時、野宿だってしてたし」
「今は女の子なんだって!ってか、リョクお前も止めろうよ」
床から起き上がったシャクさんがおじさんに詰め寄ります。
そういえば、さっきからずっとリョクさんは黙ったままで俺たちの会話に口を挟みませんでした。
「なんで?」
「なんでって・・・」
「だって、俺も付いてくし」
「「えっ!?」」
いつの間に一緒に行くことになっていたんでしょうか。
「一緒に行くんですか?」
「当たり前じゃん。一海ちゃんの行くところだったら例え異世界だって行っちゃうよ」
「おいっ!」
「っていうのは嘘だけど。シャクじゃないけど女の子だけで旅させるなんて危険な事させる訳無いじゃん」
当たり前のように告げる。
「でも、リョクさんは王子だから無理じゃないんですか?」
「あっ、王子だけど、第七王子だし。継承権とか絡んでないから全然平気。むしろ、さっさと出てけって思ってるんじゃないのかな?」
「仕事だってあるでしょう?」
「まぁ、でも、俺の代わりなんていくらでもいるし。それに、俺強いよ」
「知ってます」
最初に会った時あの獣を一撃倒したのを見ているのでリョクさんが物凄く強いのは実感しています。
それにあの殺気は並みの素人に出せるものだとは思わない。
一緒に行ってくれると心強いけど・・・
「ずるい」
「えっ?」
「俺も行く!」
「はぁ?」
唐突にシャクさんが宣言をしました。
「いいか、この世界を全く知らない二人。付き添いがテンション上がると右も左も見えなくなるリョクだ。いざとなったらどうするんだ。俺は頭脳派はだから被害も最小限に抑えられる」
「頭脳派って・・・結局剣術ができなかっただけじゃん」
「リョクは黙る」
シャクさんがポツリと呟いたリョクさんに鋭い視線を向けて黙らせた。
俺と視線があったリョクさんは苦笑いしながら肩をすくめた。
「でも、シャクさんはリョクさんよりも継承上なんでしょう?」
「大丈夫!視察の名目がある」
「こじつけ?」
「大義名分だよ」
すると寝ているかと思うほど静かだったおじさんが突然鋭い声を上げました。
「ダメだ!」
「えっ?」
「四人はダメだ」
「なんで?」
「戦隊ヒーローは5五人組だ」
「確かにそうですが・・・何の関係が?」
「物語が進まない」
「何の!?」
「俺たちの物語だ!最終的には悪の総統を倒す」
「悪の総統・・・っているんですか?魔王とか・・・」
「?いないよそんな危険なもの」
「ですよね。おじさんいないって。四人でもいいじゃん」
「やだ。五人じゃなきゃ。みぃ~と二人で旅立つ!」
おじさん曰く。
悪を倒す=ヒーロー=四人集まった=ヒーローは五人組
という図式がが成り立っているのでしょう。
俺とだったら、親友との旅行で済みますけど、下手に人数増えたから思い立っちゃったんでしょうね。
「ちょっ、いる!いるからちょっと待って!」
シャクさんに動揺が走ります。
リョクさんの側によると、ヒソヒソと話しだしました。
「えっと、リョクは誰かいる?」
「え~~~。思い当たらないよ」
「でも、このままだと二人で出かけちゃうよ?」
いい案が思い浮かばないのか二人して腕を組んで考え込んでしまった。
爆弾発言をしたおじさんは、眠いのか船を漕いでいる。
「あっ!」
何か思い当たったのか、リョクさんが大きな声をあげた。
「あれは?」
「えっ?ってもしかしてあれ?」
「そう」
「でもな~」
「あいつなら大丈夫だって。それに他に思いつかないでしょう?」
「まぁ確かに・・・でもな~」
渋々ながら納得した風のシャクさんは扉を開けて、外にいた人に声をかけている。
その人物を呼びにいかせているのでしょう。
でも、扉の外に人なんていたんですね。
もしかして、ずっと立っていたんでしょうか?
立ち仕事ご苦労様です。




