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同帝会

作者: 佐伯峰吉冨

「それでは議論を始めようと思います」

 議長の声に一同の背中にまるで針金が入ったかのようにピンと伸びた。

 僕たちは議長の下部だ。

 絶対の信頼がそこにあって、議長も僕らを裏切らない。

 いつだって議長は僕らの憧れの存在であり、目標にすべき人間である。

 そんな議長からの緊急招集を受けた僕らには、今日の議題について何も知らされていない。

 しかし、何か学校内で問題が起こったに違いない。

 常に迅速にその問題にぶつかっていく議長はやっぱりカッコイイんだ。

「それではさっそく今日の議題についてだが、書記君、ホワイトボード用意した前」

 これは驚きだ、議長自らホワイトボードに文字を書くなんて……やはり今日はとても重大な議題について話し合うに違いない!!

『議題:僕が体育のバスケットボールで女子とちょっと接触してしまった時に腕に感じたあの感触について』

「(一同)………………………」

「今日はこの議題でいこうと思う。その為に皆には集まってもらった」

「(一同)……………………………………………………………………」

「さぁ、存分に議論してくれたまえ」

 童貞が許されるのは高校生までだ。

 しかしなんだ、この中学1年生的なファーストステップは。

 僕は議長に失望した。

 あの完璧な議長が女子に免疫がなかっただなんて……。

「1年生の君、君は何か言いたそうだな、言ってみろ」

「は、はい!?」

 議長から当てられてしまった……。

 普段ならば声をかけてもらえた事に喜びすら感じる場面なのだが、今はもう議長なんて単なる童貞にしか感じない。

 ここはハッキリと言ってしまおう。

 思いの丈をぶちまけて、僕はこの先永久に議長の命令に従わないと誓おう。

「ぎ、議長は……男女交際などの経験はないのですか!?」

 その瞬間、周囲が一斉にざわめくのを肌で感じた。

 隣の人へのヒソヒソ話が多重に重なる。

 そのヒソヒソ話は、全て僕について語られているかのような、そして悪意が込められているかのようなそんな感じがした。

「き、きききみは、さも男女交際をしていることが当然のようにいいいいいいいいいいいいぃぃいいい言いましたが――」

 小刻みに震えだす議長を見かねて書記がコップ1杯の水を差しだし、落ち着きを促すのだが、議長のあまりの手の震えにコップに入っていた水は、議長の体内に入る前に8割ほどが床に落ちてしまっていた。

「は、ははは、ははははははははは。わ、わたしとした事が、ちょっと動揺してしまってるようだな、ははは」

 いったい何が起こったのか分からない僕だったのだが、なんとなくそういう空気を悟った。

 ここには………童貞しかいないな、と。

「議長、おっぱいですか?」

 僕は開き直って単刀直入、いやこの場合短答直乳に核心をついた。

「あsfぎあえwg;おあえwhgらhwb;bw。こ、コラ!!!!!!」

 僕の中の議長像が完全に死んだ。

 しかも周囲からは「冒涜だ!!」だの、「反逆者だ!!」だの、「スパイだ!!」だの、「現世のユダだ!!」だのとにかく罵声を浴びせられてしまった。

「き、ききき、ききき君はなんだ!? 先ほどから知ったような事ばかり言って!! 君もこここここココにいるという事は同帝会の一員じゃないのか!?」

「すみませんねぇ、議長……僕、こういう者なので」

 怒り焦り狂う議長にトドメを刺した。

 携帯からのワンコールで、直ぐに室内に侵入者が現れる……それも3人。

「もぉ~遅いってぇ~」

 甘ったるい香水の匂いを散らしながら、女子生徒3人が室内にズカズカと入って来る。

 そして3人による僕の腕の奪い合い。

 勝者2名は見事僕の腕、それを当ててんのよ状態に入った。

「どうですか、議長……これがその感触の正体ですよ」

 僕はそう言い放ち、同帝会を後にしたのでした。

 Fin。



「というシチュエーションを考えました」

「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 室内がドッと湧いた。

 流石は俺たちの議長とでも言わんばかりの大歓声。

「これは、ウケがいいみたいですね。それでは書籍化を検討しましょうか……さて挿絵は誰に……」

 こうして、今日も同帝会の活動は活発に行われるのであった。


 めでたし、めでたし。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんてアホな話なんだwww
[一言] 何も めでたし じゃないと思われw
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