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 何か最近は人間よりも妖怪といる時間の方が長い気がしてきた。

 朝はとりあえず家族で朝食を食べる。午前は父と共に高等術式のお勉強。

 昼を食べ終わったら走って山まで行って鬼達と組み手とか狩りとか。

 日暮れになって帰って家族と夕ご飯。その後は紫さんとお勉強。



 あれ?家族以外の人間に会ってない…………。


「どうしたの?突然ボーッとして」


「あ、いえ……俺どうしてこんなことになったんだろうって」


 いや、望んでそうなったってのは分かってるし、不満も後悔もないけど。

 それでもこれは他の人から見たらかなり変なんだろうなぁと考えてた。


「そうねぇ、でも随分と楽しそうにしているように見えるけど?」


 そう……かな。いや、多分そうだろうな。

 最近は紫さんとの勉強で得た知識を元に術の作成を始めてる。

 紫さんの知識は本当に凄い。全然底が見えてこない。試しに荒唐無稽な質問をしてもあっさりと返されてしまった。


 でもそんな紫さんがいるお陰で最近は勇儀や萃香との闘いではいいとこまでいってる。

 一対一の組み手なら勝率は4割。二対一の闘いでも勝てないまでも立っていられる時間が長くなってきた。


 それが嬉しくて楽しい。

 それもあるが、今の俺は技を作るのが専らの楽しみだ。


「それにしても霊力を使った剣術なんて……よく思いついたわね」


「小さい頃から剣術は習ってきましたからね。それを上手く使えないかなって思っただけですよ」


 そう、今俺が考えているのは霊力を剣に纏わせて、そこから術を発生させたりなどの剣術の作成。

 まぁ、思いついたのは術の媒体は別に呪符じゃなくてもいいんじゃね?って思ったときなんだけど。

 それで後は現代で見ていたアニメやゲームにあるような剣を使った技の模倣。

 

 身体強化で縦横無尽に移動しながらアクロバティックな動きで派手な技をきめる。

 ……楽しみだなぁ。


「それで、鬼の方とは相変わらず仲がいいみたいだけど、家の人は何も言わないの?」


「そうですね。うちは比較的理解のある家なんで。他の家とかの事情は知りませんけど」


「そう、ならいいのでけど…………そこの文字間違ってるわよ」


「っと、すみません」


 今書いているのは魔法陣。これもまぁ呪符みたいに小さな紙に書くことで戦闘中に使うことが出来ないかなって研究中。

 いや、出来るんだけどね?紫さんがそう言ってたし。

 だから明日の萃香との組み手の隠し玉としてこれを使うとしよう。


「ところで晴明。あなたそろそろ陰陽師として宮中に上がってもいい歳よね?」


「そうですね?そういえばもうそんな歳でしたっけ」


 でも父からはそんな話全然聞かないし、もしかして俺はこのまま家でニート……はないか。

 だって仮にも俺は安倍晴明っていう存在なんだ。陰陽師にならないわけがない。


 それに陰陽師として宮中に上がらないと紫さんとの約束も果たせなくなっちゃうし。


「約束は忘れていませんよ。……そうですね、明日父に宮中入りの話をしてきます。

 それからはちゃんと頑張って出世しますから」


「そう、それなら安心したわ」


 そう言っている間にも魔法陣は完成。

 ……うん。不備はなさそうだ。


「問題なさそうね。それじゃ、そろそろ私は帰るわね」


「ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」


 紫さんは笑みを浮かべた後、いつものようにスキマを通って何処かへと行ってしまった。

 さて、そろそろ俺も寝るかな。明日は色々とやることありそうだし。








 翌日、屋敷にて父と高等術式の勉強中、宮中入りの話をポツリと溢してみた。


「……お前……それは本当か?」


 筆を落として眼を丸くする父。

 え、な、何?そんなに驚くことなの?


「てっきりお前は宮中に上がって仕事がしたくないからあぁやって鬼のところに行っているのかと……」


 いや、確かに仕事とかはしたくないけども……。

 

「そろそろ宮中入りする年齢なのかなぁ、と思いまして」


「そうか……実際には遅すぎるぐらいだが、それでも問題はないだろう。

 お前ほどの実力があれば宮中でも上の方に行くのはそう難しいことではない」


 なんと。今まで父ぐらいしか他の陰陽師の力を知らなかったけど、それぐらい俺って強くなっていたのか。

 紫さんと柘榴さん達には感謝だな。


 それにしても宮中で陰陽師は一体どんな仕事をするんだ?

 妖怪退治が陰陽師の主な市議とだと思っていたんだけど……。


「ふむ、そう言えばお前は宮中のことについて何も知らないんだったな。

 よし、今からは陰陽師の仕事や宮中についての勉強をするとしよう」










 父が張り切って宮中の仕事を俺に懇切丁寧に教えてくれた。

 陰陽師の仕事は要約すると占いがメインらしい。

 占いで天皇の手助けをして国の指針をきめていく。……これってかなり重要なことじゃない?

 そして父が最も詳しく話していたのが宮中の権力争いだった。


 父自身はどちらにも属さない中立派で、様々な派閥がある中でも珍しい立ち位置だったらしい。

 大体の陰陽師の息子というのは父と同じ派閥に所属するということなので、俺の場合は無所属に所属することになる。


 だが無所属は色々な派閥から勧誘が来たりと面倒も多いのだとか。

 まぁドロドロの権力抗争に巻き込まれるよりは遙かにいい。


 ……けどここで問題になってくるのが紫さんとの約束だ。

 権力抗争を避けるというのは権力を放棄するのと同義。

 そんなんで陰陽師の中でのし上がっていくなんて……。

 

 いっそどこかの派閥に所属してみようか?

 でも新参の俺が所属したところで権力を手に出来るはずがない。

 

「どうすればいいかな」


「知らないよ。人間の醜い争いなんて」


 やっぱり柘榴さんにする相談事じゃなかったか……。

 そう思いつつ俺の膝で眠ってしまった久遠の頭を優しく撫でてみる。

 すっごいサラサラ、上質な布を触っているような気持ちになるなぁ。たまに指が角に引っかかるけど。


「まったく……随分と久遠に好かれたみたいだねぇ。初めて会った時は同じぐらいの身長だったてのに」


「人間は成長が早いですから」


「私に指一本で吹き飛ばされてたガキンチョが今では宮中入りして立派な陰陽師とは。そんなんで本当に陰陽師が勤まるのかい?」


 正直言って今でも腕一本で吹き飛ばされる自信があります。

 それに柘榴さんと対等に渡り合って初めて陰陽師って言うなら日本に陰陽師は2~3人しか居ないと思う。


「力面だけじゃないよ。あんたは私達鬼と関係がありつつ陰陽師をする気かい?よくわからんが、人間の中じゃそれは疎まれるんじゃないのかい?」


 そのことも悩んでいた。

 陰陽師になるということはここの鬼達との関係を断ち切る必要がある。

 何も宮中の俺の立場だけの問題じゃない。宮中で仕事をするようになればここに来る時間もなくなるだろうし。 

 今まで毎日ここに来るのが普通で、そして習慣だったからなぁ。


「そう、ですね。……まぁ何とかなるでしょ」


「随分と軽いねぇ?あんたのことだから随分と悩むもんだと思ってたんだが」


「ある人と約束しまして、陰陽師の中で偉くなるって。だから悩んだってやる以外の選択肢がないんですよねぇ」


「ふーん……そんなもんかい。まぁ、たまには遊びに来なよ。久遠も喜ぶからね」


 そんな会話をした後に、勇儀と萃香に見つかってしまった。

 今日はのんびりと過ごせるのかと思っていたんだが、俺が明日から来ないってのを告げると。


「じゃあ最後は景気づけに派手にやろうじゃないさ!!」


 ってことで鬼全員でサバイバルみたいな乱闘が始まった。

 鬼に混じって最後まで立っていることは出来たが、結局勇儀と萃香に吹き飛ばされて気絶するというオチ。

 柘榴さんに治療して貰ってから重たい体で家路についた。


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