私の中の小さな小人(800字ホラー)
「ねえ、面白い昨日さ、見たテレビの奴が」
「あの鰻を食べる為の神様に出会う子供が狐」
目の前の友達が何を言っているのか全く分からない。
そこへ別の友達が寄って来た。
「寂然、交合、三千世界」
また別のが寄って来た。
「階段を回したら坂を超えてエネルギーを得られるよねぇ」
また別の。
「信号に乳母車が来るから逃げようって。どう?」
分からない。友達の話が全く理解出来なかった。気味が悪くなって早退した。
家の玄関を開けた瞬間、焦げた臭いに思わずむせた。
慌てて駆け込むと、台所に姉と妹が居た。私が理由を尋ねると、
「包丁で切れ込みを入れて七つ八つ。五条の丈夫は武士の末」
妹が泣き声を上げながらそう答えた。何を言っているのか分からない。ここでもか。
「別に良いけどさぁ。あーあー、私のエプロンまで」
「朋姉ちゃん、いあさりながんとめうご」
姉は妹を慰め始めた。朋子と書かれたエプロンを握りしめて妹は泣いて謝り続けた。様に見えた。言葉は壊れて滅茶苦茶だった。
恐ろしかった。恐ろしくなって、私は逃げた。後ろから妹のおかしな叫びが聞こえた。それを振り払って、私は家の外へ飛び出した。
怖くて怖くて、我武者羅に走っていると、曲がり角で人にぶつかった。
そこには私と同じ年頃の男子が居た。
「大丈夫ですか?」
言葉が分かった。
私が大丈夫だと告げると、その男子は驚いた様子で私に迫って来た。
「君、普通に喋れるの?」
それはこちらの台詞だ。ようやくまともな人に会えた。
「良かった。何だか周りの人達の言葉がおかしくて」
ふと、目の前の男子に厚みが無い様な気がした。
嫌な予感がして、男子の横に回ってみた。
「それで怖くなって走り回ってたんだ」
横に回ってみると、男子は張りぼてだった。竹の骨組みに厚紙を張られた空洞を晒していた。中にはパソコンが一台あって、それを小人達が必死に打ち込んでいた。『僕は貴保。君の名前は?』と。
「僕は貴保。君の名前は?」
「私は朋子」