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山と谷

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/09/07

自慢たかしな「山」と、弱気な「谷」。一見あわないふたりですが、ある大カンバツをきっかけに絆が生まれます。自分とは違う誰かを思いやるあたたかさを感じていただけたら嬉しいです

「山と谷」

高がり屋の大きな山と、弱虫な小さな谷がありました。

山はいつも、遠くの街や雲を見下ろしながら自慢していました。

「どうだ谷よ、見ろよこの絶景! お前はいつも影の中にいて、何も見えまい」

谷は小さくため息をつき、静かに答えました。

「うん、ぼくには広い世界は見えないよ。でも、ここはとても落ち着くんだ」

ある年、大カンバツがやってきて、何ヶ月も雨が降りませんでした。山を飾っていた美しい花は枯れ落ち、緑の木々もすっかり黄色く変色してしまいました。山は日差しを直に浴び、どんどん喉が乾いてボロボロになっていきます。

「助けてくれ、暑くてたまらない…!」

山が悲鳴を上げたとき、ふもとの谷からさわやかな風が吹き上がってきました。

谷の底には、山から流れ落ちた水分が小さな池として残っており、日陰のおかげで干上がらずに済んでいたのです。谷はその冷たい水と豊かな木陰を、山の根元へとそっと分け与えました。

やがて恵みの雨が降り、山は再び青々とした姿を取り戻しました。誇り高かった山は、少し照れくさそうに下を見下ろしました。

「谷よ、さっきは悪かったな。お前が下で支えてくれていたから、俺は倒れずに済んだんだ」

谷は照れながら微笑みました。

「ううん、ぼくこそ。君が風を防いでくれるから、ぼくはここで静かに過ごせるんだよ」

それからというもの、山は高さを誇るのをやめ、谷は影を恥じるのをやめました。お互いがお互いを引き立てる、一番の仲間になったのです

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

高がりな山と、静かな谷。一見正反対に見えるふたりですが、欠点を補い合い、お互いの大切さに気づく姿を描きました。自分とは違う誰かを思いやるあたたかさや、自分自身の置かれた場所の魅力に気づくきっかけになれば嬉しいです。

あなたは、自分の周りにいる「大切な誰か」の存在に気づけていますか?

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