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公園に棲む人

作者: 福口哲郎
掲載日:2026/04/15


とくにやる事のない何気ない平和な土曜日。今日もかなり寒い。

でも、うちの近くの公園では、このクソ寒いのに日向ぼっこをしている男の人がいる。よくあるいつもの光景だ。


ダンボールを引いて気持ちよさそうに寝ているサングラスの男。屋外用ガスコンロでラーメンでも食べたのだろうか、鍋が無造作に置かれている。鍋はなぜか、4つぐらいある。そんなに必要なのだろうか・・・どうでもいいが、寒そうである。


確か日本国憲法第二十五条で

「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とある。

これがはたして最低限の生活なのだろうか?ゴミを漁り、自販機の下を必死で覗いていたり、空き缶を集めたりして。


自由気ままに誰の指図も受けず、コンビニの賞味期限切れの弁当をもらい、炊き出しの暖かいご飯を食べたり

思ったよりいい?生活をしているような人もいるだろうが。


しかしながら公園を我が物顔で支配している人もいる。ただでさえ、遊べる公園が少ないのにまた一つ子供の遊び場が減っているのも現状だろう。

高速道路の下や、駅の線路下などに生息している別世界の住人。何もしていないのに居るだけで忌み嫌われ、疎まれ、馬鹿にされ、挙句の果てに暴力まで振るわれ命を落す人もいる。

しかし、紛れも無い同じ人間なのだ。



もうお昼。お腹も空いた。くるくる寿司でも行こうかな。やっぱり寿司はまわらないとってコロナで回っているお店はもう絶滅危惧種かあ・・でも、そういえば昔から、回ってるのを一度も取った事がない。

なんとなくかなり前から回っているんじゃないだろうか?と疑問に思ってしまう。

もちろん、実際は、皿にICチップなどでしっかりと管理されているだろうし、そんなちょっと時間がたったぐらいで味なんて変わらないのだろう。


もしも、皆が皆、男のように一切取らなかったらどれだけもったいない事になるだろうか。しかし世の中というのは、案外うまく出来ている。

皆がマクドナルドで単品ハンバーガーしか頼まなかったら、喫茶店でモーニングしか頼まなかったら、すぐに潰れてしまうように。



人によっては、頼むのが面倒だから嫌って言う人がいるのだから。頼んでもすぐに来ないという理由もある。他にも回っているのを取るのが楽しいからというのもあるだろう。

確かに、毎回注文で回っているのを取らないなら、回転寿司の意味がないだろう。それなら回らない普通のお店に行けばいい。誰も取らないのなら全く皿が回っていない「回転」寿司になってしまうのだから。


ただ、安いだけのお店だろう。そう考えると、回転寿司=安価という方程式を勝手に作り出していただけなのかもしれない。


本当は回転寿司で頼まなくても、お金さえあれば、回らない普通に頼めるカウンターだけの店にいきたいと思ってしまう。

土曜日の回転寿司はいつも混んでいる。でも、名前を書くところがない。いつの間にかタッチパネルになっている。ハイテクである。まあそれが当たり前になっているのだが。紙がでてきて待つ。効率がいいのだろう。

一人でも多くのお客を入れる。案内する人もいなくなってきてる。だから、これだけ安くも出来る。

味は、はっきりいってそこまでわからない。もちろん、高いお寿司は当たり前だが、美味いに決っているだろう。けれど一皿110円でも十分美味い。そこが貧乏人なのだろう。一度も回転寿司なんて来た事ないような人は中には「こんなもん不味くて喰えるか」ってなるのかもしれない。ただ安いだけ。そりゃあ一貫最低数百円と比べる事自体ナンセンスだろう。


帰り道で、ランボルギーニカウンタックをみた。

物凄い音で、一気にサーキット場かと思う程の爆音だ。車に全く興味のない人もつい振り返ってしまうだろう。まあ、実際は喧しいからってのが一番の理由かもしれないが。

そしてフェラーリもだがたいてい爆音にするためにマフラーを換えている。

あまり知られていないがヨーロッパは規制が厳しいので案外ノーマルマフラーは静かなのである。


車を知らない人は七百万ぐらいじゃないか?って思うらしいがそんな安いわけない。安くても最低三千万ぐらいはするだろう。


もしも、あんな車に乗れたら、どれだけの優越感を味わえるのだろうか?街を走れば、誰もが振りかえる。なんともいえない光悦感。羨望の眼差し。最高の気分に浸れるだろう。まるでスターにでもなったような。まるでヒーローにでもなったような。


数億円の資産、数億円の現金。何部屋もある大きな家。何十万もするブランド物のカバン、服、何百万の時計。何千万の煌びやかな宝石。モデルのような美男美女な彼氏、彼女。誰ももっていないような貴重な物。


人は優越感を得るために、それらを欲するのかもしれない。そう、本当に、それが欲しいわけではなく。

生きていくためには、そんなものいらない

生活必要品ではない。それでも憧れ、何が何でも手に入れたいと思う。ただ、注目を浴びたいだけ。優越感に浸りたいだけ。ステータスが欲しいだけ。たったそれだけ。

可哀想な人間。愚かな動物。自己満足の世界。


でも、それも生きていくためには、自分が頑張るためには必要な事なのだろう。それが支えになるのなら。


そのために、毎日毎日頑張る。

誰よりも努力する。誰よりも知恵を出す。それもまた、人間。

欲望があるから生きていける。


他の生物からしたら、くだらない理由かもしれない。食べる為などではなく、着飾った偽りの自分。

何かが違うってわかっているのかもしれない。でも、それで幸せになれるなら、それが幸せだと思えるなら、それもまたありなのだろう。

ただただ贅沢をするために生きるというのも。


公園には、まだあの男がいた。いつもの日課の筋力トレーニングをひたすらもくもくとしている。

シャドーボクシングや腕立てや、公園をジョギングしたり、なにやら怪しげなものをせっせと上げたり下げたりしている。冬なのに汗水をたらして。かれこれ、二時間ぐらいしている時もある

わからない。

そんな体を鍛えて何がしたいのか?そんな暇あるなら、お金の為に、仕事でもしたらどうか?まわりからは、そんな陰口を叩かれる。

彼はわりと綺麗めな服を着ていて、コンビニで買ってきた(もらってきた?)弁当が横に置いてある。

自転車には、たくさんの空き缶がこれでもかと積まれている。ときたま、独り言をぶつぶついっては喚いている。そして今日も彼はこの寒い中で寝るのだろう。震えながらなのか?ゆっくり寝れるのだろうか?


一体、彼は何を求めて生きているのだろうか?

彼は、幸せなのだろうか?どうしても疑問に思ってしまう。

名前すら知らない赤の他人なのに。ただ毎日見かけるだけの関係。


しかたがなくこういう生活をしているのか?それとも本当は、物凄い金持ちなのかも知れない。サバイバルなどの道楽でやっているのかも知れない。それとも精神障害者なのか。知的障害者なのか。ただのイカレタ、アル中なのか。それとも、薬中か。それとも・・・。


通り過ぎる人々に常に注目されて生きている。子供は、ジッと彼の方を興味深々で見つめている。どうしておうちに帰らないんだろう?どうして毎日いるんだろう?どうして?

そんな目で見つめる。そんな子供に親は「見ちゃだめ」「近寄っちゃ駄目」「汚いでしょ」と厳しく言いつける。


大人は、さりげなく横目で彼を見ながら通り過ぎる。絶対に目を合わせ様とせず。まるで、ゴミ、汚いもの、腐ったものでも見るような、見下した目でみていく人々。


彼は、今日もそんな人の目などまったく気にすることなく、ただひたすらにシャドーボクシングを続けていた。

いや、もしかしたら、人の目を気にして優越感を味わっているのかもしれない。ルールに縛られない。「自由」という名の彼にしか味わえない最高の優越感を。


ほとんどの多くのサラリーマンは会社の奴隷だろう。お金の為に毎日毎日嫌な上司の命令を素直に聞き、お金の為に家族より仕事を優先させて、お金の為に夢を諦めて、お金の為に個性を無くして、お金のためにプライドも捨て、会社のいいなりになる。個人を無くして、人間性を失い、会社の機械になる。


自分もそんな社会のしがらみに取りつかれた一人だ。ほんの少しだけ思った。彼を、羨ましいと。

自由になれる気がするそういう生活に。



ほんの少しだけだが本気で思った。



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 福口哲郎さん、こんにちは。 「公園に棲む人」拝読致しました。  なろうトップの「新着の短編作品」から流れてきました。  ホームレス。  回転ずしにためらいを思える自分。  スーパーカーを乗り回す…
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