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その配信に命を懸けろ~【悲報】TS転生したワイ、借金のカタに売られた極道の元で美少女VTuberをすることになってしまう~  作者: 真嶋 青
第一章

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第3話 先住民 a.k.a. ロリータ先輩

 オッサンが部屋から出て暫くすると、神妙な顔つきになったハゲが話しかけてくる。

 黙ってこの男と見つめ合っている時間は苦痛だったから、正直会話を仕掛けてくれるのは助かる。

 

「お前、どういう育ち方したんだ?」


 何かと思えば、素朴な疑問を投げかけられてしまった。

 どう、と聞かれても困る。

 毎日ラリッて暴れ出す親父と、ヒステリーで金切り声を上げるババアを眺めながら家事をしていた。


「頼りにならない両親だったんで、ある程度のことは一人でやって育ちましたよ。特別な事はしてないっすね」

「なら、生まれつき心臓に毛が生えてんだな」


 乙女に向かって毛が生えているとは失礼な。

 セクハラですわよ?


「俺の脅迫に動じないガキはお前で二人目だ……自信無くすぜ」


 それは良いことだ。

 これを機に心を入れ替えて真っ当な世界に羽ばたいてほしい。

 ついでに私のことを解放してしていってくれ。


 それにしても、――()()()か……。

 

 もう一人とやらは、もしかすると今からこの部屋に来る人物だったりするのだろうか。

 そんなことを思っていると、部屋を出たオッサンが早々に戻ってきた。


「アニキ、エマを連れてきました」

「オウ、中に入れろ」


 銀髪、碧眼。

 ゴスロリ服の北欧風ロリータ。

 大きな瞳には生気を感じない。

 身長は私よりも幾分か小さい。150センチ程度だろうか?

 まるで、人形のような少女が扉の前に現れた。

 

「こいつはエマだ。お前と似たような境遇だと言えば分かるだろ?」


 どうやら私には先輩がいたらしい。

 もしかすると、VTuber活動というのも私だけでやるわけではないのかもしれない。


 何はともあれ、相手が先輩だというなら先んじて挨拶をさせていただこう。

 仕事をする上で、先輩から気に入られることは重要な下準備の 1つ。


「初めまして、如月ハズレです。本日からこちらでお世話になることが決まりました」

「………………」


 私を見てるのか見ていないのか、エマさんとやらは焦点の定まらない目で私の方を眺めたまま固まっている。

 

 ここの連中、この子の事を廃人にしちまったのか……?

 それとも、日本語が通じないだけか?


 私が困った顔でハゲの方を見ると、彼も何とも言えない表情で私の方を見返してきた。


「ハァァ……。元からこういう奴だ。基本会話にならねぇ。日本語は理解できてるはずなんだが」

 

 おいおい、コミュニケーションができない先輩とか最悪だぞ。

 こんな奴とこれからどうしろってんだ。


 平時ならば可愛らしい女の子を見られただけで眼福と言いたいところだけど、今はこんなのに構ってる余裕はない。


「携帯はソイツが持ってるのを使え。連絡先が制限してあるのと、親機で使用履歴を監視してる。下手な事は考えるなよ。それと、お前には今日からそいつと生活してもらう」


 屑な両親の次は廃人少女……。

 私の同居人はいつになったらまともな人間になるんだ?


「んじゃ、そういうことだからよぉ、携帯使わせてやる代わりにソイツの面倒見てくれや」

 

 なーにが()()()()()()だ。

 面倒事を押し付けやがって、ガキのお守してる余裕なんかこっちもないぞ。

 

 まあいい、どうせ何をしても言う事を聞かないなら放置していても同じだ。

 部屋の置物として考えるとしよう。


「了解っす。じゃあ早速、携帯お借りしますよ~」


 私は返事を待たずにエマの服を弄る。

 やはり彼女は何も反応を示さず、ボーッとした顔でどこかを眺めていた。


 おっほぉ! これで私もインターネッツの住人に!


 と、思いきや携帯は見つからない。

 そもそもゴスロリ服にポケットなんぞ付いてないらしい。

 エマの着る服に携帯を入れられそうな場所など無かった。

 

「部屋に置いてきた感じですか……」

「丁度いいからお前の住む場所に案内するか。携帯もそこにあんだろ」


 そんなわけで、我が新居のルームツアーが始まった。

 

 

「結構広いじゃん! いいっすね!」


 私たちが向かった先は配信室からすぐ近場にある一室。

 10畳以上はあるだろうか、広々としたワンルームだ。


 部屋にあるのはシングルベッドとテーブル。あとは椅子が 1つ。

 テーブルの上には例の携帯らしきものが置かれていた。

 

 酒の空き缶だの怪しげな白い粉の入ったビニール袋が床に転がっていることはない。

 しっかりと清掃されている綺麗な部屋だ。

 

「マジでここに住んでいいんですか!?」


 思わずテンション爆上げでハゲに確認を取ってしまった。

 

「テメェはどういう神経してんだ……?」


 はて、どういう意味だろうか?


「……これからここで監禁生活が始まるんだぞ? 状況理解してるか?」

「ああ、ここならいつまででも監禁オッケーです。実家に戻るより全然ましっすね」

 

 これは本心だ。

 いつ暴れるか分からない両親に怯えて部屋の片隅で過ごした日々を思えば、広い部屋での引きこもり生活なんて天国みたいなもの。

 しかもネットまで使えるというのだから好待遇と言っていい。


「あ、飯はどうなるんすか?」

「決まった時間にウチの誰かが持ってくる。それを食え」

「私、ここの子になります!」


 三食ネット付きのワンルーム!

 わけわかんねぇ同居人はいるけど、マジで最高じゃん!

 

 ハゲは眉を潜めて心底嫌そうな顔で呟いた。

 

「問題児が増えちまった……」


 失礼なハゲだ。

 それにしても、これからお世話になる。いつまでもハゲでは私も失礼だろう。


「あの、名前聞いといていいですか? これから長くお世話になるんで」

「長居しようとするんじゃねぇよ…………葛西(かさい)だ」


 ハゲの癖にカッコいい響きの苗字だった。

 もう一人のオッサンに視線を送ると、おずおずといった様子で名乗る。


「俺は、田村(たむら)だ」


 厳つい見た目の割に覇気のないオッサンはすぐに名前を忘れてしまいそうだ。

 ちなみに、借金の取り立てで我が家のドアを蹴りつけていた不届き者はコイツだった。

 

 ドアを蹴った不届き者、田村。

 よし、覚えられそうだな。


「これから、よろしくお願いします」


 私は二人に向かって深くお辞儀をした。


 ――ここから、私の新たな生活が始まる。

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