第31話 説教
配信の翌日には私のアンチ煽りは功を奏してくれた。
SNS上ではまだ極々少人数が必死に私への嫌がらせ活動に精を出しているが、それまで騒いでいた有象無象の大半は静かになっている。
エゴサーチをしてみれば、先日まで私と坂神リリアのコラボについて物申していたアカウントたちがパッタリ私に関する投稿をしなくなっていた。
「流石に訴訟するとか言っちまったのは、やり過ぎだったかもな」
独り言のつもりだったけれど、田村に聞かれていたらしい。
田村は携帯を弄りながら若干嫌悪感を滲ませつつ、
「ああいう輩はメンタルが弱い奴を狙って楽しんでんだよ。訴訟云々よりも、何してもオメェが動じてくれないってのが良く分かって手を引いたんだろ」
そんな、やけに実感の籠った言葉を口にする。
「やっぱりド畜生だな。VTuberってこういうの多いのか?」
「配信者ってのはどうしても目立つからな。特に気の弱い女の子は標的にされると執拗に嫌がらせを続けられたりするみたいだぞ」
「やっぱり何処かで大掃除は必要だったわけか」
もともと増えつつあったアンチに対して何かしらの手を打つ予定ではあったのだが、坂神リリアとのコラボという特大の釣り針を得たことを良い事に、私はそれを利用する算段を立てた。
「にしても、よく私の提案を相手方は飲んでくれたよな」
「あれには俺も吃驚だった。というか、大手事務所相手にいきなり訳わかんねぇ提案をおっぱじめるお前に驚かされたぞ。……ああいうのは前もってマネージャー役の俺に言っとけや」
「そしたら止めるだろアンタ」
「当たりめぇだ! 最悪今回の話がなくなるところだぞ!」
「仕方ねぇだろ。こっちは少しでも数字を取るのに必死なんだよ。多少リスクを取ってもリターンが欲しい。私は2億も稼がねぇといけないんだよ! どっかのバカのせいでな‼」
喋っている内に私は怒りが込み上げて語気も強くなる。
あのクソ両親め……思い出すだけでも腹立たしい。
そして借金額を知って絶望する私を見て大笑いする矢崎の野郎だ。アイツにはいつか吠え面をかかせてやる。
「お前なぁ……あんなもん…………」
「あ? なんだよ?」
「………………自分で気づけ」
どうにも言葉を濁すことが多い奴だ。
先が気になるからやめて欲しい。
「あんまり人を巻き込んで危ないことはするんじゃねぇぞ……」
「分かってるよ……一応、リリアにも散々確認は取ってたろ?」
「あの子がお前の頼みを断るわけないだろ」
「……ないことはないだろ」
「ねぇよ。お前、意外と鈍いんだな。とにかく、お前は巻き込んだ責任をしっかりとれよ」
珍しく真面目なお叱りを田村から受けてしまった。
……ちょっと頭を冷やすか。




