第27話 顔合わせ①
今日は坂神リリアとのファーストコンタクト。
どうやら、ぶっつけ本番のコラボ配信とはいかないらしい。
アイスブレイクを兼ねて、配信前の打ち合わせ的な事をするのだとか。
流石に業界最大手というだけあって、どこかの弱小ゴミ事務所と違って事前準備がしっかりしている。
泥ライブさんでは、決してアドリブで演者の顔面をSNSに公開したり、生配信中に他の演者を無計画に乱入させることは無いのだろう。
どこかのバカどもにも見習って欲しい。
とにかくそんなわけで、今日はカメラ無しではあるが、『互いに挨拶を済ませておこうの会』と相成った。
のだが――――。
「あ、あの、初めまして……。わたくし、坂神リリアと申します。今回は、こちらからの急な提案に応えていただき誠にありがとうございます。近頃は爽やかな秋風を感じる季節となってまいりましたが、極ライブ様に置かれましては――」
「リリアさん、硬い。硬すぎるよ……」
懇切丁寧なご挨拶を始めるリリアに、彼女のマネージャーさんからツッコミが入る。
私は早速リリアの意外過ぎる一面を見て衝撃を受けていた。
これ、マジで本人なのか? いや、声は同じなんだけど……。
どうにも彼女が坂神リリアだとは信じがたい。
なにせ、坂神リリアと言ったら高飛車なお嬢様キャラとして名を馳せるVTuberだ。
今は配信外とはいえ、ここまで大人しい人間に豹変するとは思っていなかった。
失礼な物言いだけど、今の彼女に登録者200万人を魅了するほどの風格は感じられない。
いったいどんなカリスマタレントが来るのかと身構えていたのだけれど、私と話す彼女はオドオドして全く覇気を感じない。
私が画面越しに何度も見た破天荒なお嬢様はここにはいなかった。
「えーっと、どうも、極東ミネネです。よろしくお願いします。こちらこそ、このような機会をいただき……ってこれだと距離が縮まらないね、アハハ」
こちらも相手に合わせて丁寧な対応になりかけたけれど、私は今回のミーティングの趣旨を思い出して少しだけ話し方を崩す。
「す、すみません、わたくし緊張してまして……」
「いやいや、何言ってるんですか、どう考えても緊張するのは私の方でしょ!」
「い、いえ、……わたくし、本当に極東さんのファンで……」
通話越しにも恥ずかしそうにモジモジした雰囲気が伝わってくる。
矢崎に聞いたときは案件を頼む上での建前だと思ったのだけれど、本当に私を推してくれているのかもしれない。
この人の場合、キャラを演じているだけという可能性も拭いきれないのが怖いけれど……。
「それ、本当なんですか? むしろ私の方こそ坂神さんの配信をよく見せていただいているので、なんだか信じられません!」
ちなみに私のマネージャーとして隣についている田村は、私が演じるピュアな女の子キャラに驚愕している。
今もアホ面で口をあんぐりと開けてやがる。
拳を突っ込んでやろうか?
「嘘じゃないです! わたくし、初配信から欠かさずお姉様の配信を見ていますの! 実は100時間配信もリアルタイムで完走して……」
「え゛」
その後もリリアの推し活模様は長々と語られるのであった。




