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その配信に命を懸けろ~【悲報】TS転生したワイ、借金のカタに売られた極道の元で美少女VTuberをすることになってしまう~  作者: 真嶋 青
第一章

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第15話 逸材って奴はいるもんだ

 メスガキ化事件を経て、私とエマはコミュニケーションを取れるようになった。


「エマ、使ったティッシュを床に捨てるな」

『無理』


 まあ、だからといって何が変わるわけでもないが……。

 エマは相変わらず怠惰な奴だ。


「せめて脱いだ服は片付けてくれないか?」

『うっざ~♡』


 しかも少し後遺症が残っているらしく、たまにメスガキを発症する。困ったもんだ。

 私も私で、クソな実家に住んでいたときの癖で自然と掃除やら片付けをしてしまう。

 これだからエマがいつまでも自分の事をやらない子になってしまうのだろうか。

 もしかして、両親が屑だったのって私が甘やかしていたことも要因の 1つだったりする?

 こういうのなんて言うんだっけ……ダメ男製造機?

 

「ハァアアア……。ま、いいか」


 

 あれからエマと話して色々分かった。

 彼女は自分の声にコンプレックスがあるらしい。

 エマが喋らない理由の九割はそれだ。ちなみに残り一割はただの怠惰。

 どうにもエマは物事の大半に興味がない。いつもの死んだ魚の目は怠惰故らしい。


 声については、学校かどっかで馬鹿にされてトラウマになったのだろう。

 過去については深入りすまい。聞いたところで過ぎた事は変えられんのだ。


「しっかしなぁ……お前、VTuberデビューすることになっちゃってるんだよな」


 そう、エマのVTuberデビューは着々とプランが進行している。

 予定は把握していないが、サンプルボイスだって近々撮るのだろう。

 

『矢崎殺したらやらなくていい?』

「こらこら、矢崎は私たちの大事なパトロンだぞ。殺しちゃダメ」


 とはいえ、どうしたものだろうか。

 このままではエマがコメント欄で視聴者と戯れるだけのクソ配信になってしまう。

 ある意味では前代未聞だろうけれど、私の時とは違って話題性が皆無だ。


「なぁ、エマ。 1回でいいから私に声を聞かせてくれないか?」

「…………」


 メッセージすら飛んでこない。エマは不機嫌そう顔で抗議してくる。

 だが、今回ばかりは引いてやれない。


「マジな話、私たちは矢崎たちに労働を対価に生かされてる。このままじゃお前、死ぬかもしれねぇぞ?」

「…………」


 声のトーンを落として真剣な話をしていることを暗に伝える。

 しかし、エマは不満気に息を吐き出し、しかめっ面を強調するだけだ。


「私はエマのことを大切な家族だと思ってる。お前を失いたくない」


 我ながら便所のカビみたいなド臭いセリフ。

 両親からこんな事を言われたら即行でゲロをぶちまけて失神する自信がある。


 だが、これはエマに対する本心だ。

 血の繋がりなんて関係なく、私はエマを妹のように思っている。

 可能な限り誠意が伝わるように真面目くさった顔を作ると、エマは唇を尖らせて頬を膨れさせた。


 やっぱりだめかぁ……。

 そんなことを思った時――――。

 


『笑ったらダメ』


 エマからメッセージが届いた。

 思わず返事も忘れてエマを抱きしめてしまう。


「ありがとうエマ!」


 まさか、エマが折れてくれるとは……これまでの献身が実を結んだのだろうか。

 しかし、一抹の不安はある。

 

 これでエマが濁声だったらどうしよう。

 私は全然気にしないけど、VTuberとしてはなぁ……。

 

 そんな私の心配を他所にエマは俯きがちになって言葉を発した。






 ――。

 ――――。

 ――――――――。


「お、ま……その声…………」

 

 確かにエマの声は変わっていた。というよりも、余りにも特徴的過ぎた。

 だが、瞬間的に私はエマがVTuberとして大成することを確信する。

 

「エマ、お前は間違いなく逸材だ」



 あれよあれよという間にエマのデビュー準備が進んでいった。

 今はエマのボイスサンプルを録音している最中。

 私はいつもの面々と管制室に居る。

 

 田村は録音に当たってエマにあーだこーだ指示を出しているが、エマは微塵も気にしていない。

 最後は自分が折れることになるのに、田村も馬鹿な奴だ。エマの好きにさせればいい。

 どーせ、()()()()()()()()


「矢崎さん、エマのこと分かってたんですね」

「ああ? 何のことだ?」

「惚けんな。あの声、……天賦の才ってのを初めて見ましたよ」


 私の真剣な言葉に、矢崎はニヤリと笑って答える。


「俺は初めてアイツの声を聞いた時、声の世界でやっていくべきだと確信した。だからVTuberなんてもんに手を出したのさ」


 前々からエマには何かあるのだろうと思っていたが、流石にアレは予想外だ。

 しかし、これでコイツらがVTuber業に手を出した理由にも得心がいった。

 

「やっぱりか……。おかしいと思ってた。勝算もないのに、これだけ立派なスタジオを用意するなんて馬鹿のやることだ。最初からエマを当てにしてたんですね」

「エマと、あともう一人はお目付け役で無難な奴をデビューさせる予定だった。しかし、良い拾い物をしたもんだ」


 私を見てそんなことを言う矢崎。

 何が拾い物だ。奴隷契約みたいなもんだろうが。


「ところで、……私が説得できてなきゃ、エマをどうしてた?」


 今回は偶々、私がエマを説得してVTuberデビューの約束を取り付けることができた。

 しかし、こうなっていなかったらエマは何をされていたのか。

 考えると腹の底からドンドンと煮えたぎる何かが湧き出てくる。

 

「へっ、怖い顔するんじゃねぇよ。アイツには条件を出されたから、それをクリアするまで粘るだけだった。正直、お前が居なきゃ手詰まり感はあったがな」


 エマがVTuberをやる条件……。

 少し考えて思い当たるものがあった。


「もしかして、歌か?」

「ほー? 良く分かったな。何かエマに言われてたか?」

「願い事を叶えるから声を聞かせて欲しいってエマに頼んだんすよ。そしたら歌えってさ」

「お前は本当の意味でエマのお眼鏡に適ったわけだ。お蔭で助かったぜ、こっちはずっと歌の上手い奴を探すのに苦労してたのよ」

 

 エマがどうしてそこまで歌が好きなのか分からないし、私にそれほど期待値があるのかも分からない。

 しかし、どうやら偶然にも色々な事が良い方向に転んだらしい。

 

「私の歌ってそんなに良かったですかね?」


 自分では歌の良し悪しなんて分からない。

 もしかすると隠れた才能があったのだろうかと思ってみれば、矢崎の回答は辛辣だった。

 

「いんや、ヘッタクソだったぞ! ダッハッハ!」


 そこは褒めて欲しかった……分かってたけど。

 まあ、エマの期待を裏切らないためにも、歌は練習しなきゃならないな。

 エマ曰く、私は『良い声』らしいから。


「…………ま、才能はありそうだけどな」

「なんだって?」


 珍しくボソボソ喋るもんだから矢崎の言葉を聞き取れなかった。

 聞き返しても矢崎は自分の頭をボリボリ掻いて話を逸らしてしまう。


「それより、エマの初配信も頼むぞ」

「言われなくても上手く立ち回るだけっすよ。それが私の仕事なんだろ?」

「いい面構えだ。……よろしく頼むぜ、()()()()()

「きっしょ~」


 いきなりお姉ちゃん呼びするんじゃねぇよ。

 思わずエマのメスガキが移っちまっただろうが。

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