推し活ラプソディ〜一瞬即発!〜/短歌
〜一瞬即発〜
海月のイベント当日。
海月がまだ黒森ラジオに出演して日が浅い頃。
黒森ラジオ、とは晴香と魚崎、福田のスタッフ二人が開設した小さなラジオ番組のことだ。
「黒い森のさくらんぼケーキ」、略して「黒森ラジオ」。
海月"あ、晴香さん来てる、最前列か・・・
てかスタッフ二人もいる!?本当仲良いなぁ・・・(もやぁ)"
そんな考え事をしていると島谷が急に声を上げた。
島谷「クラゲ君!!」
海月「え?」
「くそっ!モテるからって調子に乗りやがって!!」
突如、二人に向かって男が一人ステージ上に上がって来た。
手にはナイフを持っている。
「きゃああ!!」
イベントに来ていた女性達の悲鳴が聞こえる。
が、その時。
ダッ!!
海月"やばい、刺される"
海月は思わず目を瞑った。しかし、衝撃は来なかった。
目を開けると、目の前に一人の女性の背中が見えた。
海月"刺された、ファンの子が、僕を庇って・・・え?この後ろ姿、まさか・・・"
男は晴香を刺した後、慌てて逃げていくが近くにいた警察官によってすぐに拘束され、連行されていった。
警察官「大人しくしなさい!!」
「くそおっ!!」
タタタっ。
魚崎と福田が晴香の元へ急いで駆けてきた。
ステージ上に上がり声を掛ける。
魚崎「晴香!!」
福田「晴香、大丈夫か!?」
晴香「うっ・・・あー!びっくりした!もうナイフがこうグサッて!!」
魚崎「グサッてじゃないよ、てか、何であなたはそんなテンション高いのよ」
福田「マジで一瞬、晴香死んだかと思った」
晴香「あはは、私もだよ」
魚崎「あははじゃないよ全く」
海月「晴香さん!大丈夫ですか!?さっきナイフ刺さって・・・」
晴香「大丈夫ですよ、ベルトに刺さっただけなので」
魚崎「そういやナイフが下に落ちたのに血出てないもんな」
晴香「そうなの」
晴香がスカートのベルトを外すと、ベルトにはしっかりと傷跡が付いていた。
魚崎「とにかくベルトだけで済んで良かったよ」
福田「本当だよ」
海月「もう・・・無茶しないで下さいよ晴香さん・・心臓止まるかと思ったじゃないですか」
島谷「でも、念の為に病院に行った方が良くない?」
晴香「大丈夫ですよ、アザはできたかもしれないですけどお腹に刺し傷はないので」
海月「だめだよ!」
島谷「え、クラゲ君?」
海月「お願いだから病院ちゃんと行って、ベルト越しだったとはいえ相当な衝撃だったでしょ?僕も付いてくから」
晴香「海月さん・・・わ、分かりました、でも、海月さんのお手を煩わせる訳には行かないので病院にはスタッフ二人と行きますから」
海月「僕も今日はもう仕事ないから大丈夫」
晴香「でも・・・」
と、その時。
魚崎「おおっと!!大変だ!!俺、これからすんごい大事な用事あるの忘れてた!」
魚崎は携帯画面を見るフリをした後、メガネをくいっと上げオーバーリアクションをし始めた。
福田「おわっと!俺もだ!」
それに釣られて福田もリアクションを取る。
魚崎「悪い晴香、とゆーわけで俺らはこれからだーいじな用があるんだ、晴香より大事な用がな!」
福田「海月さん、とゆーわけで晴香のことよろしくお願いします〜!」
海月「分かりました」
海月"うーん、この二人にはバレてるな・・・"
魚崎「それじゃまたな晴香!」
魚崎がサッっと手を挙げると二人は去って行った。
二人のあからさまなオーバーリアクションを見送った後。
晴香「何よ、薄情な二人ね」
晴香がプンプンしていると海月が話しかけてきた。
海月「大丈夫、晴香さんが病院から帰るまで僕が一緒にいますから」
晴香「海月さん・・・キューン」
晴香"やっぱりあの二人いなくて良かったかも・・・"
女の子達が晴香を指差して騒いでいたが島谷がすぐに声を掛けた。
島谷「今はそっとしといてあげて」
島谷のその言葉に女の子達は大人しくなる。
結局、島谷もあれこれ理由を付けて帰ってしまった。
病院に行き、検診をしてもらった。
海月は待合室にいる。
すると・・・。
医者「うん、内臓破裂してるね」
晴香「え?」
医者「まさかDVされてるとか?」
医者の眉間にシワが寄る。
晴香「いえ!違います!本当にたまたま、偶然お腹に強い刺激が・・・」
医者「偶然、たまたまねぇ・・・まぁとにかく、二週間は入院だよ」
晴香「に・・・そ、そんなにですか?」
医者「当たり前だよ、内臓破裂してるんだから、というか本当に痛くないの?」
晴香「そう言えばなんかお腹が痛いような・・・くらっ」
バタッ!!
刺されたこと、海月と会話できたことによって興奮状態だった晴香だったがアドレナリンが切れた瞬間急に腹痛を訴え、意識を失った。
医者「宇奈月さん!!」
急遽、病院のベッドに寝かされた晴香は手術は必要なかったが二週間入院することになってしまった。
海月「内臓破裂・・・」
晴香「みたいです・・・」
海月「ごめん、僕を庇ったせいですね・・・入院費は僕が持ちますから」
晴香「だ、ダメですよ!海月さんにそんなことさせられません」
海月「いや、それくらいはさせて欲しいんです、じゃないと僕の気が済まないです」
晴香「ありがとうございます・・・助かります」
海月「もう、無茶しないで下さいよ」
晴香「すみません、体が勝手に動いてしまって」
海月「ダメって言っても晴香さんのことだから無理そうですね」
晴香「すみません、これが私なので・・・」
カラカラ。
病室の扉が開き、担当医が入ってきた。
医者「おや、お連れの方がいたんだね」
晴香「あ、はい」
医者がじと〜っと海月を見た後。
医者「原因作ったの、まさか君じゃないだろうね」
海月「え?いや、原因は確かに僕ですが・・・」
医者の眉間に更にシワが寄る。
晴香「違いますよ!その方は悪くないです」
医者「いや、だって本人が原因は自分だって」
晴香「だって・・・こんなカッコ良くて素敵な人が人を殴るはずありません!」
バアアン!!
その言葉を聞いて医者がじと〜っと海月を見る。
自分の良いように彼女を操っている極悪人でも見るかのようだった。
事件のことは伏せていた為に説明が難しい。
しばらくの間、海月は医者からじと〜っという視線が痛かった。
晴香が弁解すればするほど怪しまれる為、晴香も何も言えなかった。
二週間後、晴香は無事に退院した。
その間、魚崎と福田もお見舞いに来ていた。
二人によって海月がDV彼氏だという誤解は解けたようだ。
魚崎「ぶっは、何そんな面白いことになってんのか」
福田「ほんと、晴香の周りはいつもドタバタだな」
晴香「彼氏って勘違いされて嬉しかったけどね」
魚崎「呑気な奴ー」
その後。
二人が飲み会をしていた時。
島谷「ねぇ、クラゲ君」
海月「何?」
島谷「クラゲ君って晴香さんのこと好きでしょ?」
海月「ぶっ!」
海月は島谷にいきなり晴香の話を振られ、危うく飲み物を盛大に吹き出してしまいそうになる。
島谷「やっぱり・・・」
海月「げほげほ・・・何でそう思うの?」
島谷「だってあんな取り乱したクラゲ君初めて見たもん」
海月「そりゃ人が目の前で刺されたら取り乱すでしょ!」
島谷「それだけじゃないじゃん、無事だって分かった後もさ」
海月「あー!分かった!分かったからそれ以上僕を分析しないで!」
島谷「ニヤニヤ」
海月「君には敵わないな・・・」
島谷「てか、気付いてないの晴香さんだけでしょ?」
海月「だろうね・・・魚崎さんと福田さんはあからさまに分かってたし」
島谷「いつも余裕なクラゲ君が珍しいねぇ」
海月「むぅ・・・そんな分かりやすいかなぁ」
島谷「めちゃくちゃ分かりやすかったよ、まぁ俺としては面白いもんが見れて嬉しいけどね」
海月「島谷君、今度仕返しするからね」
島谷「えー」
海月"でもね島谷君、事件が起きたあの日から
ああ、この人は僕が守らなきゃいけない人なんだって思ったんだ"
<短歌>
眩しさに
焼かれてもいい
本望だ
太陽よりも
輝くあなた
目の前に
急に現れ
転げ落ち
手を差し出され
慌てて立てず
初デート
浮かれポンチッチ
タラリラ〜
お花畑は
私脳内
世界一
幸せくれた
旦那様
生涯ずっと
推し活ライフ
タキシード
花嫁姿
霞むほど
輝いている
大好きな人
ああ神よ
こんな素敵な
旦那様
出会いをくれて
感謝します
ああ恋よ
あなたを愛す
その為に
産まれてきたわ
宇奈月晴香