表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さる❖とび  作者: 杉山薫
第1部 激突 関ヶ原
8/20

アイドル誘拐事件 2

 オレは白石警部と誘拐事件の身代金の受け渡し場所、つまり佐伯刑事が殺害された部屋にいる。橘美穂はアイドル復帰後、多忙らしく一向にオレのもとにはやってこない。オレとしてもボロを出すのが嫌なのでラインも挨拶程度で無難にこなしている。そんな折、白石警部から佐伯刑事の最期について話題が出たので、口裏合わせのため白石警部と二人でこの部屋へと来たのである。


「サスケ、事件簿にも書いたが、室内には佐伯刑事だけが入って私たちはそのドアの向こう側で待機していた。ドアは佐伯刑事が開けしめしたため銃声が聞こえるまでは閉まっていた」


白石警部の説明を聞きながらオレは部屋の右奥を凝視する。


「ああ、窓があるから密室ではないと⋯⋯。でも、あの窓からでは人なんて出入りなんてできないよ」


白石警部はそう言って窓に歩み寄り閉まっている窓を開けた。


「これはすべり出し窓っていってね。見ての通り、そうだな。子猫くらいなら通れるかな。まあ、ここは三階だから通ったとしても⋯⋯」


オレは白石警部の言葉を遮り口を挟む。


「白石警部、忍者屋敷というのはご存じですか?」


「ああ、伊賀とか甲賀にあるカラクリ屋敷のことだろ。昔、子供と一緒に行ったことがあるが、それがどうした?」


「急いでいたんでしょうね。微かにそこの床に傷が残っています」


オレはそう言って部屋の右奥の床を指差す。


「私には何も見えないが⋯⋯」


「まあ、開ければわかります」


オレはそう言って部屋の右奥の壁を強く押す。すると、壁は人一人通れるくらいに回転した。


「なんだ、これは!」


「白石警部、お静かに」


驚く白石警部に向かい、オレは唇に人差し指をたてて注意を促す。


「この先に誰がいるともわかりませんので⋯⋯」


オレがそう囁くと、白石警部は黙って頷く。それを見てオレはスマホのライトをつけ壁奥に進んだ。どうやら壁奥に人一人が歩ける空間がある。オレは慎重にスマホのライトを頼りに歩いていく。白石警部も慎重にオレについてくる。少し歩いていくと行き止まりとなった。というよりは、回転扉がそこにあるのだろう。オレは行き止まりの壁を強く押す。しかし、何かが向こう側に置いてあるのだろう。引っかかって開けることができない。


ん、男女の気配が⋯⋯。


オレは開けるのを諦めて白石警部に囁く。


「戻りましょう。向こうでお話しします」


オレがそう言うと白石警部は黙って頷いた。


 元の部屋へと戻ったオレは白石警部に苦笑いをする。


「向こう側の扉の前には何かあって開けられませんでした。向こう側ではその⋯⋯、なんというか⋯⋯」


「ああ、隣はラブホテルだからな。入口は反対側だがな。しかし、これで密室殺人ではなくなったな。問題は発砲した拳銃に佐伯刑事の指紋しか残っていなかったことか⋯⋯」


「相手が忍びであれば心当たりがあります。僕は遭遇したことはないのですが『死神 八郎太』という忍びがいました。奴の系統であればそれも可能かと」


「どのような忍術を使うんだ。その八郎太は?」


「原理はわからないのですが、自分が受けたダメージをそのまま相手に返すという不思議な忍術です。まあ、もっとも佐伯刑事が何故発砲してしまったのかは疑問が残りますが⋯⋯」


「そうか⋯⋯。まあいい。とりあえず隣のラブホテルについては令状を用意する。少し待て」


オレは白石警部の言葉に静かに頷く。


それでは逃げられてしまうのだが⋯⋯。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ