2話
次にオレが目覚めた時は高床式の床の上だった。どうやら十日ほど眠っていたらしい。なんか頭の上にチカチカ光る物がある。しかも、腕に管のような⋯⋯。
「ああああああ、佐伯さん。引っ張っちゃ駄目でしょ」
なんか白いオバサンにえらい剣幕で怒られた。しばらくすると、白石という男がやってきた。
「どうだ、佐伯。気分は?」
佐伯じゃねえし⋯⋯。
「貴殿は?」
「何言ってんだ。お前の上司の白石だろ。頭でも打ったのか?」
「拙者の上司は真田幸村さま。他にありえん。で、ここは?」
「まあいい。おそらく記憶の混濁が起きているんだろ。ここは病院といって傷を治すところだよ。で、なんと呼べばいい?」
白石の言葉にオレは頷く。
「拙者は真田幸村隊の猿飛佐助。サスケでいい」
「オッケー、サスケ。しばらくここで寝ることになるが何かご所望は?」
「白石殿、お気づかい痛み入る。では、この世界の言葉が知りたい。拙者の知っている言葉とは少し違うようだ」
オレの言葉に白石は少し考え込む。
「わかった。では『国語辞典』を用意させる。まあ、しばらくゆっくりしろ。あ、それからこれ。お前のスマホだ。充電器も用意した」
白石はそう言って何かを穴に差し込んでいる。良しと言って、オレの枕元に置いた。
「ミホさんにも連絡しておいたから、使い方はミホさんに訊いてくれ」
「何から何までかたじけない」
オレがそう言うと白石は苦笑いをして部屋を出ていった。