連続放火事件 3
もし、佐伯刑事以外の関係者が全員グルだったとしたら彼の死は何を意味するのだろう。それに徳川家康が現場に出てくることはない。大坂の陣の我らの突撃で思い知ったはずだ。どんなに戦力差があったとしても向き合ってしまったら、まさかの大逆転があると⋯⋯。だとしたら、現場には別の転生者がいたはず。一体、誰だ?
オレはそんなことを考え、例のラブホテルを見上げる。
ん、なんだ?
天地光闇風雷火水土⋯⋯。
風!
「風神さまのお通りだ! 疾風脚!」
オレは両足に激しい風を纏って雑居ビルの上空へと舞い上がる。
見つけた!
そのまま目的の人物の行く先に舞い降りた。
「どけ! 邪魔だ」
「新宿署の佐伯だ。少し話がしたい」
オレはそう言って、火炎を纏った女に警察手帳をみせた。
「警察かい。権力の犬には用はねえよ」
火炎を使うためなのかしれないがコイツもヘソを出している。
「まあ、そう言わずに⋯⋯。あんた、くノ一か?」
「アンタには関係ねえだろ!」
「ごめん。君、火の粉撒き散らしてるだろ。僕は今、放火犯を捜してるんだよね」
「あたしじゃねえし」
「じゃ、とりあえず。天地光闇風雷火水土⋯⋯。水! 水神さまのお通りだ! 水牢!」
見様見真似の水牢が一瞬だけくノ一を水の塊に閉じ込める。
「ぷはぁ!」
くノ一は呆然としている。
そうだよな。
石田三成の専売特許の水牢を使ったんだからね。
驚け、ハレンチくノ一!
「ひょっとして、サスケ様?」
なんだ?
様って!
「あたしは甲賀のくノ一火炎のユキ。サスケ様、そのお姿は?」
「火炎のユキ? 知らねえな。まあいい。火の粉撒き散らしているのは悪意ないみたいだし、さっさと行け。急いでいるんだろ」
「いいえ、間違いなくサスケ様です。あたしがお慕いするサスケ様です」
はあ⋯⋯。
でも、こんなくノ一知らないんだよな。
「まあ、とにかく。今回の連続放火事件の方は僕がどうにかしておく。君もむやみやたらと火の粉を撒き散らさないようにしてくれ」
「承知しました。サスケ様」
だから、この娘知らないんだけどな⋯⋯。
困った。
非常に困った。
昨夜のくノ一、独身寮のオレの部屋までついてきたんで追い返したんだけど、一晩中部屋の前にいたらしい。独身寮なんだから困るんだよね。しかも、ヘソ出してるし⋯⋯。
「あのぉ、ユキさん。ここ独身寮なんで、そんな格好で真夜中うろついていると危ないから⋯⋯」
「あ、大丈夫です。サスケ様に変な虫がつかないか心配なので⋯⋯。あ、あたしは大丈夫ですよ!」
いや、君じゃなくて独身寮の男どものことを心配してんだよ!
「それからさぁ、僕は君に会った記憶がないんだけど、どこで会った?」
「えっ、お会いしたことはないですよ。ただ、仲間からの話を聞いてお慕い申し上げていました。ダメですか?」
会ったことないんかい!
「ダメじゃないけど⋯⋯。じゃあ、とりあえず大ぴらではなく陰ながら見守ってくれないかな!」
ユキは渋々頷いた。
その日の帰宅途上で風魔小太郎に声を掛けられた。
「サスケ殿、いいか?」
オレは黙って頷く。
『石田三成の情報はまだなのだが、佐伯刑事の殺害についての情報が入った。これから一緒に会ってほしい男がいるのだが、時間はあるか?』
風魔小太郎は唇だけ動かす。オレは黙って頷きながら歩を進める。
『徳川家康だ。六本木までいいかい?』
風魔小太郎は唇だけ動かす。オレは意外な男の名前に顔を歪める。
「僕はいいんだが、家康のやろうは⋯⋯。まあいい。あんたが間に入ったんだ。間違いはないだろう」
オレの言葉に風魔小太郎は瞳を伏せる。
「まあ、会えばわかる。君のわだかまりが杞憂に終わるはずだ」
オレと風魔小太郎は家康の待つ六本木へと向かっていく。それが激戦の始まりとなるとも知らずに。




