首刈り事件 3
その日の真夜中日付が変わる頃、場所は歌舞伎町、ゴジラという怪獣がいるという辺り。オレは連続放火事件の犯人を捜すためパトロールをしていた。
アレがゴジラか⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?
なんか口の辺りに何かいるような⋯⋯。
天地光闇風雷火水土⋯⋯。
風!
「風神さまのお通りだ! 疾風脚!」
オレは疾風のようにそのビルを駆け上がっていく。オレはゴジラの頭に腰をかける。
伊蔵!
ゴジラの口に女を磔するのに夢中でオレに気づいていない。
「おい、伊蔵。久しぶりだな」
オレの言葉にビクッとして顔を上げる伊蔵。
「久しぶり? 誰だ、お前!」
「おいおい、ひどいな。猿飛佐助だよ。忘れたのか?」
オレの言葉を聞き、まじまじとオレの顔を見る伊蔵。
そうか。
やっぱり顔だよな。
「新宿署の佐伯だ。言い逃れなどできんぞ。首刈り伊蔵!」
オレはそう言って警察手帳を伊蔵に見せる。
「ここまでか⋯⋯」
そう言って伊蔵は命綱を切り捨て背後に跳ぶ。オレは慌てて女を抱きかかえるのがやっとで伊蔵はそのまま地面へと転落していった。時間帯もよかったのだろう。下の道路には誰もいなく被害もでなかったが、転落時の大きな音がしたため人が転落現場に寄ってきたためオレは女を抱えビルの陰に隠れた。女は息があるようだ。睡眠薬のようなもので寝ているだけのようだ。
オレはビルの反対側から女を抱きかかえながら地面へと降り立つ。向こう側ではパトカーや救急車が到着して蜂の巣をつついた騒ぎになっている。オレは深呼吸してから白石警部に電話をかける。
「どうした?」
「白石警部、今どこですか?」
「歌舞伎町だ。お前もすぐ来い!」
「あああ、それ、首刈り伊蔵です。単なる転落事故です。今からそっちに行きます」
オレは電話を切り、転落現場へと向かった。
「白石警部、こちら未遂なんですが、首刈りの被害者です」
オレはそう言って、女を白石警部に託す。
「場所を変えよう」
白石警部の提案にオレは静かに頷く。