1話
時は1615年5月、場所は大坂。戦国乱世最後の一戦が行われた。徳川家康による豊臣勢力排除の集大成、大坂夏の陣である。最後の一戦のラストは壮絶なもので徳川家康に切腹を覚悟させた真田幸村隊の突撃があった。しかし、この物語の始まりは真田丸のシーンでもなければ最後の突撃のシーンでもない。
最後の突撃を押しかえされた真田幸村隊は松平忠直の越前勢によって壊滅された。その後、大坂城の側にある林の中、二人の侍の姿があった。
「幸村さま、生きてますかぁ?」
「フッ、こんな時でも陽気だな。サスケ」
「死ぬ時は死ぬんですよ。今がその時だってことです。幸村さま、生まれ変わってもお仕えさせてください」
「あ⋯⋯⋯⋯」
どうやら真田幸村は事切れたようだ。
さて、オレも追うか⋯⋯。
そう思って、オレは自らの首筋に刀を突き立てた。
グニャリとオレの視界が歪んでいく。
「佐伯、佐伯。大丈夫か?」
誰だよ。
人が死のうとしている時に。
そんなに強く肩揺すったら⋯⋯大丈夫じゃねえよ。
それにオレは佐伯じゃねえし⋯⋯。
ぐはあ。
口の中に血の味が広がる。どうやらオレは血を吐いたようだ。辺りに血の臭いが充満していく。そして、オレの意識は遠のいていった。