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【魔法省選抜試験3】 〜薄暗い古代遺跡の謎解き ドッキリはほどほどに〜


 先に進むと小さな部屋に到着した。

 この部屋は円筒形をしており、壁沿いにぐるりとたいまつが灯っている。

 明かりが過剰で少し眩しいくらいだった。


 また壁に文字が刻まれている。


『善は悪、悪は善なり。迷いの先には死神の行列』


『6つの使徒達よ、勇気を持って英雄と対峙せよ。そしてその偽りの輝きを封じよ。己が影の先に光明あり』


 部屋の真ん中には英雄と思われる石像が置いてある。

 その姿は剣を高く掲げており、今にも襲いかかってきそうな躍動感だ。

 そしてこの部屋にもガーゴイルの像、それに加えて今度は天使の像もたいまつを掲げている。


 それらは4方向から英雄を取り囲む格好で立っている。


 ……しばしの沈黙が生まれた。二人は腕を組み思考を巡らせる。

「また石像に火をつければいいのかな? エルサ、次はどっちにしたらいいかな?」

 4つの石像のたいまつには明かりが灯っていない。


「そう思っちゃうでしょ? でもきっとハズレだよ。こんなの簡単すぎて通過儀礼にもなら〜ん」


 エルサはあくびをしながら部屋の真ん中の英雄の像にもたれかかった。

 何かを思考しているようで、髪を人差し指でくるくると巻く仕草を繰り返していた。


「え、火をつけるところはそれぞれの像にしかないよ?」


「そう。でも、善が天使、悪がガーゴイルの像だと考えるでしょ?お題のメッセージによれば、善と悪は相互に矛盾してるから迷いに繋がるじゃん。つまり答えだとは思えないかな」

「あとは〜、英雄さんをもっと輝かせてやるのもだめかな」

 なるほど一理あるとルチアは思った。


「試しにだけどね、それっ」

 エルサはガーゴイルの像の片方に火の玉を放ち火を灯した。

 次の瞬間──。

 ガコン! ガッシャーン


「うわっ! びっくりした!」

ルチアの背後で、入り口の鉄格子のドアが突然閉じた。


「きっと順番に火をつけていくと、最後に天使ちゃんと昇天〜。ま、一発目でいきなりアウトは無いよね」


 思考力と判断力を試すのであれば、エルサの右に出るものはそうはいないだろう。

 この試験において、彼女の存在は絶対的優位だ。

 だが、ついていく身からすれば心の準備くらいさせて欲しい。


「も〜、やだ〜!」

 涙目になってわめくルチアを尻目に、エルサはご満悦だった。


「ドッキリ成功! じゃ、元に戻しま〜す」

 エルサは風の魔法を放ち、石像に灯した火を消した。


「はあ〜あ。やれやれだよ。ドッキリされる身にもなって!」

 ルチアは嘆息をついた後、また謎解きの世界に戻った。


「そしたら後は、この英雄の像が怪しいってことだよね。なにかわかる?」


「うーん、考え中!」

 今回はよく考えないと通してもらえないらしい。


「難しいね。一応壁の言葉はまたメモしておこうかな。……あっ!」

「おっ! なにか思いついたー?」

「最初の壁の言葉と関係あったりしないかなって」



『澄んだ眼で見極めよ。己が影の先に光明あり』


『6つの使徒達よ、勇気を持って英雄と対峙せよ。そしてその偽りの輝きを封じよ。己が影の先に光明あり』



「きっと今度も影がカギなんじゃないかな?」

 石像の周りを調べてみる。光源に囲まれているので、石像側が必ず影になるのだった。


 躍動感のあるポーズの正面に恐る恐る立ってみる……何もなさそうだ。


「気をつけてね〜、ルチア。動き出したりして」

「ダンジョンにありがちなフラグをたてないで!」


 慎重になりながら、像の後ろに回り込んでみたところ……。

「あっ!」

「石像に影が落ちる場所だ」

 ルチアの影が石像に伸びている。

 周りの4つの像を見ると同じ状態だ。つまり、たいまつの反対側に立つのだ。


「あと1つの光源はどこだろ…」 辺りを見回した。

 残りのたいまつは、入り口の真上に1つ。火が灯っている。


「エルサ、英雄の正面に立ってみてくれない?」

「了解。ほいっと」

 石像と人間合わせて6つの影が英雄の像に伸びた。


 条件を満たしたからなのか、次の瞬間、全てのたいまつの火が消えた。


「なるほどね〜、ルチアえらいぞ〜」エルサも感心の声をあげた。


「お題は影がキーなんだね。ルチアはマメな子だからいつも助かるよ〜」


「ありがと。ん? 何か光ってるよ」


 石像の足元に、橙色の宝石が埋め込まれていることに気づく。

 たいまつが消えたことで、ぼんやりと光を放ち出したようだ。徐々に光が強まっていく。


「これ、なんだろうね?」指で触れると──。

 ゴゴゴゴ……英雄の石像の台座が動きだした。後ろに向かってスライドしていく。

 ガタン! 台座の下に隠されていた階段が現れた。


「お、おめでとうございます! 次のフロア、最新部への階段です」

 試験官のアルベルトは、小さな拍手を送った。


「やったあ!」2人はハイタッチした。

 しかし喜んだのも束の間、今度は石像の体が震え出した。


「え、まだ何か起こるのかな? 罠じゃ無いよね?」


「あ〜、これ動き出すやつじゃないの?」

 エルサは身構えた。

 ゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴ、ゴゴ ……パカッ。


 なんと、石像の兜が割れてツルピカ頭が姿を現したのだ。


 ──エルサは、一瞬で意味を理解した。壁の文字のことを思い出す。


『6つの使徒達よ、勇気を持って英雄と対峙せよ。そしてその偽りの輝きを封じよ。己が影の先に光明あり』


「……は? 偽りの輝きってこれのこと?」


「ハゲてるやないかい!」

 怒りのツッコミをいれるルチア。


「ちょっとアルベルトさん、これふざけすぎてません? ハゲがばれて頭が光ってるだけじゃないですか! 罠かと思ってびっくりしたんですけど」

 さすがのルチアも目を三角に吊り上げている。なんならツノが生えん勢いだ。


「し、試験官の私からは、お答えできません」


「なんじゃと〜?」

 すかさず石像の頭に火炎放射を浴びせるエルサ。

 その勢いには一切の容赦が無い。


 石像の顔はというと、人の良さそうなおじさんの顔をしている。

 ──いまにも溶けそうだ。


「ひ、ひえっ! え、英雄さんは明かりが暗くなったことで、安心して兜をぬぐことが、で、できたんですねえ。はい」


 ……沈黙が訪れた。


「は〜、魔法省ってもしかしてこう言うノリなのかな? 真面目な組織だと思ってたんだけど」


 魔法省とはどういう組織なのだろうかと、ふと考えさせれたのだった。

 どんな組織であろうとも、外からの印象だけでは計れないものはあるのであろう。


「面白くていいじゃん。ま、ヒヤヒヤしたけどね〜」


「よくない! ふざけていい場面ってあると思うけど。真面目にやってるのに。もう」

 ほっぺを膨らませるルチアだった。


「エルサも、ドッキリさせられる気持ちわかったでしょ?」


「アタシは結構すき〜!へへっ」


「も〜!」


 ドッキリさせるのが好きな人の性格って、きっとドSか、ドMの極端な人種なんじゃないか……??

 絶対そうに違いない!何故だかそういう気持ちになった。


 2人は次のフロアへと足を進めた。


 ちなみにこの課題を考えた人物がアルベルトだというのは、後で知った話……。


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