表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

インターミッション 少女が守り抜いたもの

 ──翌朝。ルチアは病院で目を覚ました。


「…チア、ル……ア。大丈夫? ルチア」


 どこからか声が聞こえてきた。


「うう、私、まだ……はっ!」


 目を覚ますと真っ白の天井が目に入ってきた。

「え? ここはどこ? たしか私は…… うっ」

 まだ記憶がはっきりしない。ベールに包まれたかのように目が霞む。

 しばらく目をつぶり、片手でじっと頭を押さえていた。


「ルチア! 目を覚ましたんだね。よかった」

 聞き慣れた声がした。優しくて暖かさを感じる。


「お母さん?」


 少しずつ視野が回復していった。すると目の前に母が座っていた。


「良かった。あなた、世界樹の庭園で倒れていたらしいのよ。それを巡回中の王国軍の兵士さんが見つけてくださって」

「助けてもらって、急いで病院に運んでくださったようだ」

 父が言った。2人とも付きっきりで看病してくれていたようだった。


「……心配かけてごめんなさい」


 実は、ルチアは養子だった。それでも2人の両親は本当の我が子のように大切に育ててくれた。ルチアも両親を血が繋がった家族のように思っていた。それ位に、とても良い両親だった。

 そんな2人に迷惑をかけないように今まで生きてきた。やってしまった。


「あなた、丸2日寝込んでたのよ。体は大丈夫?」

「え? 2日も。体の方はなんともない気が……! そういえばオーブは?」

「ん? 何をよくわからんことを言ってるんだ?」

「お母さん、私のバッグはある?」

「ええ、荷物ならそこにあるわよ」

 

 ベッドの脇に、バッグが置いてあった。ほうきも杖も無事のようだ。

 急いでバッグの中身を確認した。

 中にきらりと輝くオーブがあった。


「あった! 良かった。それに夢じゃなかったんだ」


 安堵してまたベッドに突っ伏した。命を賭けて守ったティアとオーブは無事だったのだ。

「あら、案外元気そうね。良かったわ。今お医者さんを呼ぶわね。診てもらいなさいな」


 その後、ルチアは医者の診療を受けた。あれだけ激しい戦いを繰り広げたにもかかわらず、体に異常はないという話だった。その時の状況を簡単に説明したのだが、重大なダメージは受けていないという結果だった。


 もしかしたら、精霊たちが治してくれたのかもしれない。そう思った。

 不思議なことが起こり過ぎて、そんな奇跡のような話があったとしてもおかしくないと思えた。


「ルチア、今の話本当なのか?」父は怪訝な表情で聞いてきた。

「うん、強い魔法を使う男に襲われて。なんとか追い払ったけど、だいぶ重症だったと思う」

「体を打ちつけてぼろぼろだったと思うんだけど……なぜか傷が無くなってるの」


 改めて思い出すと恐ろしかった。あの錬金術師と言っていた男は強力な力を持っていた。おそらくオーブの力で対抗できたものの、それも奇跡的に助かっただけだと思った。


「お母さん、私怖かった」

 母は、何も言わずにぎゅっと抱きしめた。


「あらあら。ルチア、もう無理はしないで。危ないことは王国軍に任せればいいのよ」


 ルチアはその温もりに安堵しながら、世界樹の女神との約束を思い出していた。


「私、本当に約束をはたせるのかな……」


 アップルティーの香りがしてきた。

 

 母が淹れてくれていたみたいだ。

 そんな思いを抱きながら、温かい紅茶を飲んでゆっくりと過ごした。

ここまでで物語のオープニングという感じです。

この後、魔法省試験に向けてエピソードが進んでいきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
noteの方も見させていただきましたので、なろうの方にある続きの話も読ませていただきました!! 序章の話として、よくできていると思います! これからも頑張ってください!! 応援してます!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ