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魔王の箱庭  作者: 恵比原ジル


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32/40

32 スクショ祭り

 魔界ネット担当のジローによりスクショ機能が実装されて以来、作業通話は連日スクショの話で持ちきりだ。



 まず、ウーゴがスクショ機能実装一日目で300枚のスクショを撮った。リコがドールハウスに来た初日の動画まで遡って、お気に入りのショットを撮りまくったのだ。

 そして三日で千枚を超え、【まおはこ】共有フォルダはあっという間に容量オーバーとなり、当然ジローに叱られた。


「いい加減にしてくださらんか。手当たり次第に保存するなど、無理に決まってござろうが」

「すまん」

「まずは百枚まで減らして、そこから更に削りますぞ」

「しょぼーん……」

「ほれ、どれを残すでござるか?」


 枚数はがっつり減らされたものの、興奮状態が落ち着いてからのウーゴは大人しく厳選したスクショのみを保存している。

 撮影しまくった結果腕が上がったのか、ドールハウス正面からのアングルしかない動画でいかにリコの動きや表情をより多く押さえるかに腐心するようになった。

 リコの体の向きを左右する家具の位置や向きなどにこだわりだし、細かい調整を毎日のように頼んでくるので、さすがに魔王も若干うんざりしている。


 だが、その魔王はもっぱらウーゴが撮ったスクショを見て楽しんでいるので、それほど文句を言うことはない。

 アルバム機能を使ってまとめたものやスライドショーを執務の合間や休憩時間にこっそり見ている。

 自分でもスクショを撮ってはみたが、ウーゴのと比べて出来がイマイチなので、あまり熱心には撮影していない。

 ただし、リコが階段の手すりをすべすべしてにっこりしているところはウーゴの撮影した中にはなかったので、自分で撮影してよく眺めている。


 スクショ機能にとても満足した魔王はジローに褒美を取らせた。


『欲しいものがあれば言ってみろ』

『それでは、魔王城の食堂に故郷のメニューを加えていただきたく』

『よかろう。お前の率いるチームのメンバー全員、一人一食ずつ加えていいぞ』

『ありがとうございます! 大殿のお心遣いに皆の士気も上がりましょう!』

『うむ。ところで次の仕事だが、俺以外の者たちも複数魔ディスプレイを出せるようにできないか? それから、ウーゴが動画から切り抜いてショート動画を作りたいと言っているので、そちらの対処を頼む。あとは建築雑誌の最新刊だが──』


 どんどん積み上がっていくタスクにジローは涙目になっていたが、食堂の追加メニュー第一弾の牛丼をもりもり食べて頑張るだろう。たぶん。


 そして、ジローにより可動式関節に見えるよう画像処理されたスクショが異世界のSNSに投稿された。マリルーの希望どおり「#うちの子かわいい」のハッシュタグ付きで。

 記念すべき最初の投稿は、「新しいドールハウスにお引越し♪」という文章と玄関ホールに立つリコの画像。ただし、リコが初めてドールハウスに入った時は自前の服を着ていたので、ワードローブで着替えたあとのスクショを代用した。

 スクショと文章はウーゴとマリルーが担当し、投稿はジローが行う。毎日一枚ずつ投稿していく予定で、既に十日分の画像と文章の準備を終えているそうだ。

 ウーゴとマリルーはいいねがついたと言っては作業通話で喜んでいるが、アカウントを管理するジローとしては交流等をさせるつもりはないので、SNSでの活動はひっそりとしたものになる予定である。



 マリルーのスクショはウーゴや魔王とはだいぶ趣が違う。

 服飾担当なだけあって、リコの毎日のファッションをスクショに収めている。

 玄関ホールの吹き抜けの壁は漆喰で、二階から階段への降り始めの位置はちょうど白バックになる。リコが正面を向くこともあり、マリルーはその位置でスクショを撮り集め、アルバム機能でファッションカタログを作り上げた。


『マリルーちゃんのカタログは資料性が高くて素晴らしいですな』

『……白と赤系に偏ってた……反省……』


 普段着は順調に撮れているが、一方で、寝間着姿はなかなかうまくスクショできずに苦労している。

 ワードローブがドールハウスの正面に対して側面を見せている関係で横からのアングルでしかスクショできない上に、着替え後はほぼそのままベッドに上がってしまうのだ。

 ウーゴと家具の位置調整でなんとかならないかと話し合っているが、今のところ問題解決には至っていない。



 最後にロレンソ。

 彼はまだ自作品が三点しか飾られていないのでそこまでスクショにのめり込んではいない。

 ただ、次のドールハウスの庭作りを考えると、樹木や花の配置やその高さはスクショのアングルに影響してくるだろう。


『魔王よ、そろそろ庭のレイアウトを決めたいですぞ。図面とイメージイラストを提出するので詳細を詰める機会をいただけますかな?』

『よかろう。できれば全員で行いたいが、図面のサイズとなると魔ディスプレイでは全体を俯瞰できんだろうな』

『……どこかで集まる……?』

『それいいな。打ち合わせついでにオフ会しようぜ!』

『(オフ会? よくわからんが)集まるなら場所は俺が提供しよう。ウーゴ、ついでにエアブラシの使い方を教えてくれ。窓枠を塗装したい』

『オッケー!』



 そんな感じで、【まおはこ】オフ会が魔王城で開催される運びとなった。



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