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魔王の箱庭  作者: 恵比原ジル


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11 スクショと呼び名とSNS

『スクショとは何だ』

『魔ディスプレイに映ってるのをそのまま画像にする機能だよ。SNSに載ってる画像とかあるだろ?』

『ああ、あれか』

『ドールの動画観てて、あ~ッ、今の場面画像で欲しい!って思ったら、スクショ撮れば画像で保存できるってわけ。ドールのかわいい瞬間をたくさん集めて共有しようぜ』


 ドール動画は長いので延々と観ていると時間を食ってしまうが、画像なら見たい場面だけを簡単に見れるし、じっくり見ることもできるとウーゴは力説する。

(たしかに何度も見たい場面はある。それに執務の合間にも楽しめそうだ。ふむ、悪くない)


『いいだろう。お前から直接発注しておけ』

『へヘッ、やったぜ!』

『……わたしも魔王にお願いがある……』


 すると、今度はマリルーが魔王に頼みごとがあると言い出した。口数の少ない彼女が個人的な要望を口にするのはとても珍しい。


『なんだ。言ってみろ』

『……ドールの名前……教えて欲しい……』

『名前? そんなものを知ってどうする』

『……“ドール”じゃなくて、名前で呼びたい……』

『おっ、いいな! オレも愛称とか付けてえ』

『何故そんなことをしたがるのかさっぱりわからんが、いいだろう。しばし待て』


 魔王はドールの名前を覚えていなかったので履歴書を探した。確かドールをこの作業部屋に連れてきた時に手にしていたから、テーブルの上にでも置いてあるはずだ。

 散らかったテーブルの上をごそごそと探す魔王をウーゴが冷やかす。


『作業テーブルはあんまり散らかさない方がいいぞ。パーツ失くした時探すの大変だからよー』

『わかっている───む、あったぞ。ドールの名は“リコ”だ』

『リコ! なんかちまっとした感じでかわいいな』

『……きゃわっ……イメージに合う……』


 魔ディスプレイに映るウーゴが和やかな顔になった。マリルーの表情は厚く長い前髪のせいでよく見えないが、口角が上がっている。

 たった二文字の名前を聞いただけで何故そんなほのぼのとした反応をするのか、魔王には理解できない。


『へえ~、リコかー。よし、オレはリコリコって呼ぼっと』

『何故繰り返すのだ』

『かわいいだろ?』

『意味がわからぬ』

『……わたしはリコピ……』

『待て。ピとは何だ。何故余分なものを付ける』

『細けえことはいいんだよ! リコリコ~』

『……リコピ……きゃわわ……』


 誰かを愛称で呼んだことのない魔王には、名前以外の呼び名などまったく思い浮かばなかった。


『で、魔王はなんて呼ぶんだ?』

『別に、ドールでよかろう』

『親しみ覚えるから魔王も愛称で呼んでみろって。リコリコ真似してもいいぞ?』

『するか!』

『……リコピでもいいよ……』

『呼ばぬ!!』





 翌日、魔王が作業通話にインすると、すかさずウーゴが報告を始めた。

 スクリーンショットの件を魔界ネット担当者のジローに依頼。他にも追加したい機能があればまとめてやった方がいいということになり、二人で話し合って仕様などをまとめたという。


『検索とかスライドショーとかアルバムとか、いろいろできるようにしてもらったぞ。出来上がりを楽しみにしててくれ。間違いなくドール画像堪能ライフが始まるからなー』

『面倒なのは御免だぞ』

『オレが作ったアルバムを共有フォルダに入れとくから、魔王はそれを見てればいいさ。あと、SNSに投稿できるように頼んどいた。アカウントは1つしか無理って言われたんで【まおはこ】で共有な』

『SNS? 異世界のか?』

『もちろん』


 ジローの構築した魔界ネットは、彼がいた元の世界のインターネットと密かに繋がっている。

 今のところジローが率いる魔界ネットチームと、魔王が許可したごく少数の者しか利用できないが、そのごく少数に【まおはこ】メンバーも入っていた。

 魔王は建築関係、ウーゴはミニチュア全般から模型・ジオラマなど幅広く、マリルーはドールと服飾全般と、それぞれ関心のあるジャンルを閲覧しては【まおはこ】の活動にいかせそうな情報や画像・動画などを共有している。


 なので、彼らは異世界のSNSにも普通に接していた。しかし閲覧のみで、投稿はもちろん“いいね”などのアクションもしたことはなかった。



『異世界へのアクセスは魔力消費が多いってんで、投稿は一日一回が限度。画像も一枚のみだってよ。画像の加工もあるし、思ってたより手間が掛かるみたいだ』


 ドール役の住人は、ドールハウスに転移すると三頭身キャラになる。単に身体が縮小されるだけでなく動きやビジュアルも単純化され、見た目は完全にドールだと魔王は思っていた。

 しかし、ウーゴの説明で初めて気付いたのだが、手首などの関節部分がドールとは違うらしい。


『──そうか、関節などの可動部は球体になっていなかったな』

『このまま画像をSNSに投稿したら、ドールの関節はどうなってるんだって疑問を持たれちまうだろ? だから、可動部をそれっぽく画像処理してから投稿することになった』


 その辺りも簡単な操作で処理できるよう、ジローが工夫してくれることになっている。ジローは元いた世界でプログラマーとかシステムエンジニアと呼ばれる職業に就いていたそうで、この手のことは得意なんだそうだ。

 SNSの投稿やその他の操作もジローが担当するため、トラブルの心配はしなくていいらしい。


『オレらは文面とスクショ担当な』

『……#うちの子かわいい で投稿して欲しい……』

『おーいいな。ジローに頼んどくわ』

『あいつにあまり負担をかけるなよ……』

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