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紙に書かれていた日になった。窓から見る町は普段と変わらない。
「ノックに気がつかないと思ったら……。何か面白いものでもあった?」
気がつくとリュシアンが隣に座って私の顔を覗き込んでいた。心ここに在らずで、ノックに気がつかなかったらしい。
「別に……。私が居なくても社会に何も影響はないんだなと思っていただけよ」
「僕には影響があるけどね」
彼は私の隣で一緒に町の様子を眺めた。
「ずっとこの平和な国が続けば良いね」
私は彼の言葉に何も返せなかった。
その後、少し話してから、彼が戻る時間になった。私は彼の袖を掴んで引き留める。
「夜ご飯をここで一緒に食べたい」
「本当?」
「……ええ」
「嬉しい。伝えておくね」
嬉しそうにする彼を見て、胸が痛んだ。……これは正義。正しいことなんだから怖がらなくて良い。痛いのはきっと一瞬だから。
夕食の時間になり、彼が食事と共に部屋へやってきた。ご飯を食べながら昼の話の続きをする。
隠し持っている短剣を握る。食事はあと半分ほど残っている。食べないのは勿体無いから、実行するのは食べた後。
食事してすぐは動きにくいから、短剣を持って襲いかかったところで躱されてしまうかもしれない。だから、実行するのはもう少し後。
ずるずると引き延ばすうちに外が騒がしくなっていった。彼がそれに気がつき、急いで部屋から出ようとする。これ以上はもう待てない。
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