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END1「輝かしい人生」

 こんなに遅い時間に訪ねてくるなんて非常識な人だ。王子とわざわざ話すつもりもない。寝たふりをして今日は無視し続けよう。この時間なら寝ていても不自然ではない。


 押し入られたらその時はその時だ。襲われるようならばその時起きた風にして、口汚く罵って、その気を失せさせてやる。王子が少しでも傷つくような言葉を考える。


 幸か不幸か、その言葉を使う瞬間は訪れなかった。私が物音を立てないでいると、「寝ている、か……」と落胆を隠さず呟き、去っていった。


 王子はその後も何かと絡んできたが私の心はピクリとも動かなかった。私にドレスや装飾品を送ってきたこともあった。そんなものを買うくらいなら平民の暮らしをより良くするために少しでも使えば良いのにと、私は小さくため息を吐いた。それは誰にも届くことなく消えていった。



 ドレスを着せられた日の夜、寝巻きとして用意された服に着替えようとすると、元々着ていた服から紙切れが出てきた。


「七日夜革命。机の引き出し」

あの場にいた何者かからのメッセージだろうか。とりあえず机の引き出しを見てみる。


 そこには短剣が入っていた。私でも扱えそうなサイズだが、切れ味は良さそうだ。


 紙切れに書かれていた「革命」という言葉は平民議会で良く使われていた言葉だ。そして支持された場所に入っていた短剣。つまり私は要人――王子を殺害すれば良いのだろう。簡単だ。王子は私が望めば簡単に部屋に入ってくるはずだ。



 この国の歴史を語る際、避けては通れないのが「革命」である。これを境に我が国では横暴を働く王侯貴族を廃し、市民が政治の実権を握るようになった。つまり、時代が大きく変わる瞬間であった。


 この時代で一番有名なのは初代議長であるが、第一回の議会から寿命が尽きるまで議員として政治に関わり続け、現代にまで続く大企業を立ち上げた女性もまた有名である。当時は男尊女卑の傾向が強かったが、才能に恵まれた彼女は向かい風の中、議員としてだけでなく商人としても生き抜いたと云う。その姿は当時も今も女性たちに勇気を与え、国の偉人として数えられている。


 彼女には最後の王子の愛人だったとか、王子をその手で殺したとか、様々な説がある。王子に婚約者もいないのに愛人であるというのは滑稽な話であるし、彼女は何も訓練していないただの少女であったため、王子殺害の任を授かるというのはおかしな話だ。しかしながらどれが真実か、あるいは真実はなかったのか、それを知る人物はいない。


 ただ一つ確かなのは、彼女は「革命」が起きた国を支え続け、商人として大成するという輝かしい人生を送ったことだ。

恋愛要素……。

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