第七話
あなたは、私の全てだった。
あなたがいるから世界はきらめき、あなたのおかげで私の世界は回っていた。
あなたの笑顔だけで私は元気になり、嫌なことも全て忘れられた。
あなたに言われた言葉は一生忘れられない。一言一句、漏らさず覚えている。
あなたしか考えられない。あなたのいない世界なんて考えられない。
なのに、どうして。
どうして。
私の目の前からいなくなったの?
お姉ちゃん。
「私、お姉ちゃんのことと死の記憶、思い出しました」
美桜の発言に、周りは驚いた。
「おめでとうございます」
彼岸は緩やかに頭を下げ、死の記憶を思い出した美桜を心の底から祝福した。
「おい、お前の姉の名前は!?」
星一が美桜に詰め寄り、そう問いただす。
「・・・すみません、名前だけは思い出せなくて」
「使えねぇ」
星一は舌打ちをしながら自分の席へ戻った。
「使えなくないだろ。姉の情報があるだけで有益だと思わないか?」
華恋は思わず、といった調子で星一に言った。そのあと、一瞬だけ顔をしかめた。
「確かに、そうだね」
朝菜の努めて明るい声に彼岸と華恋以外が頷く。
彼岸はそっと紅茶のおかわりを入れに、消えていった。
それに気づかず、華恋以外は話を進める。
「どんな人だったの?美桜ちゃんのお姉さん」
光太が優しく問いかければ、美桜も穏やかに答える。
「笑顔が多くて、どんなに暗い雰囲気でも明るくさせていました。それと、ゲームが好きでした。会社の休憩中には、同僚とバトルゲームをしていたそうです」
「そう」
朝菜はその情報を咀嚼するかのように考え、吟味し、理解した。
彼岸はいつの間にか戻ってきていて、紅茶を飲んでいた。
「・・・あの、彼岸さん」
意を決したように美桜は口を開き、彼岸を見た。
「なんでしょうか」
「仮面を、取ってくれませんか?」
「申し訳ございません、仮面は取れません」
彼岸は少し眉を下げながら、そう言った。
「やっぱり規則ですか?すみません、無理なお願いをしてしまって」
美桜の言葉に彼岸はさらに眉を下げた。
「美桜の死の記憶教えてくれないか?」
華恋が申し訳なさそうに聞いた。しかし、その瞳には興味がある。美桜の死の記憶がどのようなものなのか、何としてでも聞きたいという感情が見え隠れしている。
「おい、そう簡単に聞いていい話じゃないだろう」
星一が華恋を止めに入る。華恋は嫌そうに顔をしかめ、星一を睨んだ。
「星一はバカだな。美桜の話を聞けば何か思い出せるかもしれないだろう?」
「・・・なるほど」
渋々、といった感じで星一は身を引いた。
「分かりました」
美桜は、全員の顔を見渡すようにして言う。
「話します。私の、死の記憶を」
己の中で、理解するように、かみしめるように。




