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彼岸花  作者: Lilly
7/8

第七話

 あなたは、私の全てだった。

 あなたがいるから世界はきらめき、あなたのおかげで私の世界は回っていた。

 あなたの笑顔だけで私は元気になり、嫌なことも全て忘れられた。

 あなたに言われた言葉は一生忘れられない。一言一句、漏らさず覚えている。

 あなたしか考えられない。あなたのいない世界なんて考えられない。


 なのに、どうして。



 どうして。




 私の目の前からいなくなったの?





 お姉ちゃん。






「私、お姉ちゃんのことと死の記憶、思い出しました」

 美桜の発言に、周りは驚いた。

「おめでとうございます」

 彼岸は緩やかに頭を下げ、死の記憶を思い出した美桜を心の底から祝福した。

「おい、お前の姉の名前は!?」

 星一が美桜に詰め寄り、そう問いただす。

「・・・すみません、名前だけは思い出せなくて」

「使えねぇ」

 星一は舌打ちをしながら自分の席へ戻った。

「使えなくないだろ。姉の情報があるだけで有益だと思わないか?」

 華恋は思わず、といった調子で星一に言った。そのあと、一瞬だけ顔をしかめた。

「確かに、そうだね」

 朝菜の努めて明るい声に彼岸と華恋以外が頷く。

 彼岸はそっと紅茶のおかわりを入れに、消えていった。

 それに気づかず、華恋以外は話を進める。

「どんな人だったの?美桜ちゃんのお姉さん」

 光太が優しく問いかければ、美桜も穏やかに答える。

「笑顔が多くて、どんなに暗い雰囲気でも明るくさせていました。それと、ゲームが好きでした。会社の休憩中には、同僚とバトルゲームをしていたそうです」

「そう」

 朝菜はその情報を咀嚼するかのように考え、吟味し、理解した。

 彼岸はいつの間にか戻ってきていて、紅茶を飲んでいた。

「・・・あの、彼岸さん」

 意を決したように美桜は口を開き、彼岸を見た。

「なんでしょうか」

「仮面を、取ってくれませんか?」

「申し訳ございません、仮面は取れません」

  彼岸は少し眉を下げながら、そう言った。

「やっぱり規則ですか?すみません、無理なお願いをしてしまって」

 美桜の言葉に彼岸はさらに眉を下げた。


「美桜の死の記憶教えてくれないか?」

 華恋が申し訳なさそうに聞いた。しかし、その瞳には興味がある。美桜の死の記憶がどのようなものなのか、何としてでも聞きたいという感情が見え隠れしている。

「おい、そう簡単に聞いていい話じゃないだろう」

 星一が華恋を止めに入る。華恋は嫌そうに顔をしかめ、星一を睨んだ。

「星一はバカだな。美桜の話を聞けば何か思い出せるかもしれないだろう?」

「・・・なるほど」

 渋々、といった感じで星一は身を引いた。


「分かりました」

 美桜は、全員の顔を見渡すようにして言う。

「話します。私の、死の記憶を」

 己の中で、理解するように、かみしめるように。

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