第四話
「で、では・・・気を取り直して、死ぬ前の状況を言っていきますか」
美桜の言葉に、彼岸以外が頷いた。
「じゃあ、私から言いますね」
こういうとき、先陣を切るのは朝菜だ。
「私は、自宅で死にました。・・・なぜかは、思い出せませんが」
朝菜のを聞き、光太が口を開いた。
「僕も、自分の部屋です。死ぬ直前に何やってんだと思うんですけど・・・笑いながら後悔、してました」
「後悔・・・ですか?」
美桜が首を傾げる。
「はい。・・・恋人が、いたんですけど・・・それ関連かと思います」
「誰かな?」
朝菜が聞くと、光太は残念そうに首を振った。
「ま、それが分かったら苦労しないよな」
華恋の言葉に、それもそうかと全員が頷いた。
「私は・・・家の近くの公園で夜桜を見てました。同時に・・・罪を、償っていました」
「どんな罪ですか?」
光太の問いに、美桜は緩く首をふる。
「それも、分かったら苦労しないよな」
華恋の言葉に、美桜は諦めたように笑いながら「そうですね」と呟いた。
「俺は・・・綺麗な星空の日に・・・誰かを憎みながら、誰かに約束した気がする」
「誰に・・・ですか?」
朝菜の問いに、星一が答えようとしたところで、華恋が口を挟んだ。
「だから、それが分かったら苦労しないだろ?なんで、同じことを毎回毎回聞くんだよ」
「それもそうだね。ごめん、華恋ちゃん」
「はぁ・・・。これで、全員言ったか?」
華恋が、やれやれというふうに周りを見渡した。それから紅茶を飲もうとして、華恋は手を止めた。
「待って、華恋ちゃん。華恋ちゃんのー」
「ーおい、彼岸」
「なんですか?」
「なんで、私はコーヒーなんだ。紅茶じゃないのか?」
「あなたは、コーヒーのほうが好きでしょう?」
彼岸の言葉に華恋はハハッと乾いた笑いをした。
「そうだな。よく分かってやがる」
そう言い、華恋はコーヒーを飲んだ。
「・・・彼岸、コーヒーのおかわりもあるのか?」
「ええ、ありますよ」
朝菜が華恋をじっと見つめている。その視線に気づきながら、華恋はわざと無視していた。
「じゃあ、おかわりをくれ」
その言葉に彼岸は頷いた。
「おかわりを入れてくるので、私は少しここを離れますね」
彼岸の言葉を合図にどこからともなく、黒い扉が現れた。
その扉を開け、彼岸はどこかへ消えてしまった。
「ねぇ、華恋ちゃん」
「あぁ、分かってるよ。話せばいいんだろ?」
ニヤリと笑いながら、華恋は口を開いた。
「私は、病院で死んだ。コーヒーを飲みながら、な」
「それだけか?」
星一の問いに華恋は空を見上げた。
「あぁ、それだけだ」
華恋がそう言ってから、彼岸は帰ってきた。
「コーヒーを、お持ちしました」
「お、さんきゅー」
華恋はそう言って、コーヒーカップを渡した。
「そういえば、彼岸さんが死んだときの状況を聞いてもいいですか?」
朝菜が彼岸を見ながら、そう聞いた。
ーガシャン
華恋が、コーヒーカップを落とした。
「華恋ちゃん?」
朝菜の声にハッと我に返った華恋はぎこちなく笑った。
「ご、ごめん。つい、ボーッとしてたわ」
「そう・・・」