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彼岸花  作者: Lilly
2/8

第二話

「私が皆さんをここに呼びました」

 その言葉に、彼岸以外の全員が驚いた。

「お前が?」

 星一の疑問に、彼岸は静かに頷く。

「はい」

 そう頷くと、彼岸は一人一人を見回し、紅茶を飲んでからこう言った。

「山瀬朝菜、鈴原光太、澤田美桜、青山星一、渡瀬華恋。あなた方は年齢、性別、職業は違えど自殺をしました。理由はどうあれ、自殺はとても、とても重い罪です」

 その言葉に、全員が顔を曇らせた。

「なので、それをここで償っていただきます」

 彼岸の言葉に彼岸以外の全員が驚き、顔を見合わせた。

 美桜が静かに首を傾げる。

「つぐな、う・・・?」

「はい」

「俺が自殺したことは認める。だけど、それをどうやって償うんだ。もう命はないし、死んでいるから失うものもない」

 星一の言葉に、彼岸は頷く。

「確かに失うものはありません。ですが、得るものならあります」

「得るもの?」

 今度は、朝菜が彼岸に聞く番になった。

「ええ。皆さんは、自殺した理由を覚えていますか?」

「そういえば、覚えてないかも」

 朝菜の言葉を皮切りに、それぞれが「確かに」という言葉を放った。

「おい、彼岸と言ったか?」

 華恋が、椅子の上に足を乗せ、膝に肘を置きながら彼岸を見据えた。

「はい」

「私たちに死んだ理由を思い出させて、何をするつもりだ?得るものってなんだ?」

「得るもの・・・それは、命です」

 命。その言葉の重みに彼岸以外の全員が驚いた。

 彼岸は、言葉を続ける。

「今から一時間以内に自殺した理由を思い出していただければ、命を差し上げます。命を得ることで、もう一度自分として人生を続けられる権利を差し上げます」

 華恋が不機嫌そうに首を傾げた。

「命?そんなもの、もらって何になるんだ」

 華恋の言葉を聞いて、美桜が立ち上がった。

「そ、そうですよ・・・!私たちは、自分の意思で死んだんです。なのに、どうして生き返らないといけないのですか?」

 美桜の言葉に、華恋が頷く。


「あなた方の命は、まだ残っている」


 彼岸以外が驚いた。

 驚いたり怒ったり、みんな大変だなぁと彼岸は他人事のように思う。

「どういうことだ?」

 華恋が、恐る恐る口を開いた。

「どういうことも何も、そのままですよ。あなた方が、自殺した理由を思い出せば、残りの寿命全て差し上げます」

「いらない」

 華恋は強気に言った。

「どうしてですか?」

 彼岸は、仮面の下の眉を下げながら聞いた。だが、声色は全く変わらない。

「残された寿命なんていらない。どうせ私には、もともと寿命なんて残ってないんだ!!」

 華恋は、吠えるように叫ぶ。

 その姿が、どこか痛々しかった。

 そんな華恋を、彼岸は仮面越しに眺める。本当はどう思っているのか、その真偽を確かめるために。

「十年」

 彼岸は、唐突に呟く。

「十年であれば、追加できますが」

「追加とかあるのかよ」

「どうされますか?」

 彼岸の試すような視線を跳ね除け、華恋は言い放った。

「いらない」

 彼岸は下を向き、「そんな・・・」と呟いた。だが、その呟きを拾う者はここにはいなかった。

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