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テンシル国の章 ④

 ライラはルーリエの話をじっと耳を澄ませて聞いていた。


 途中、嗚咽混じりに話すルーリエに僅かな時間ともにいただけのリオに随分と情をかけていたのだなと思う。


 離宮に虐待されていたリオに気づいたのが半年前なんて本当だろうか?

ほかの義兄姉たちはずいぶん前から知っていて暴行していたのに。

そこを問えば、ルーリエは唇を噛み締めながら吐き捨てるように言った。


「・・・私も神殿に軟禁されていたのです。」


 神殿、と言っても一般に開放されている王都や島の神殿とは違い王宮の奥深くに王族のみが祈る神殿がある。

 

 ルーリエは髪色もさることながら、微弱だが魔力が感知されていたため女神に愛されていると神殿が判断し、軟禁していたのだ。もちろんリオの状態とは大きく異なり移動制限があるだけの緩い拘束だがルーリエにとっては耐え難い状態であった。8歳から8年拘束されたが、特に魔力が伸びることもなく海の女神との親和性も見られないことで軟禁状態は解けたが行動を制限され、抑圧された環境はルーリエの精神を蝕んだ。


 軟禁状態を解かれ、本宮に戻ってしばらくしてリオの事を知ったのだ。第二王子に兄妹が出来るとは聞いていたが死産したらしいと侍女から噂として聞いていた。だれもはっきり死を口にしないから黙秘案件なんだと理解していたが、あの日、義兄姉たちの心ない会話を耳にして驚いた。


 ――生き捨てられていたなんて・・・!!


「今更、何を言っても遅いのですが・・・。(わたくし)は軟禁状態の身であっても知ろうとしていれば容易にリオの事を知る事ができた筈です。リオに比べれば私の軟禁など・・・、本当に親のすることでしょうか?

血の繋がった兄姉(きょうだい) のする事でしょうか・・・」

嗚咽混じりに吐き捨てるルーリエの言葉をライラは何となく聞いていた。


 可哀そう、という感情が希薄な気がするな、とライラは自身の胸に手を当てて思った。


 前の世界線――もう、前世と言ったほうがわかりやすいかも――でも残酷な光景はいくらでも目にしてきた。

常に戦争状態だったのだ。女であろうが子供であろうが年寄りであろうが、皆、武器を手にして戦った。

最初の頃は国同士の領地の取り合いだったが、世界が歪み始めてからは主に魔獣や魔物、悪魔などと戦ってきた。

異形のモノ達との戦闘で感情の起伏はほとんど忘れてしまったのかもしれない。



でも、リオは気の毒だった。

いい時期がひとつもなかったから。優しい人、ルーリエに出会えたらすぐに命を落としてしまった。


いつの間に陽が傾きかけ、海が赤く染まっていく。白波がきらきらと夕陽の赤を弾いて綺麗だ。


「・・・魔法」


ライラは俯いてぼそりと呟く。ルーリエが顔をあげて少し微笑んだ。

「はい。微弱ながら魔力はありますが魔法として行使する事は(わたくし)にはできません。」

「この島国の加護があるから、魔法が使えてたって言ってたよね?」


ルーリエは頷く。


「そうです。海の女神様の加護により特に王族を中心に貴族達も魔力があります。現在は魔法を使う事まではできませんが・・・。だから魔力のみがある、と言うだけですね・・・。」

「そっか」


bライラは振り返り金と薄紫のオッドアイを僅かに細めてルーリエを見た。

ルーリエは不思議な光沢を放つ瞳に吸い込まれるような感覚を覚えてキュッと胸の前で手を組むようにする。



「もう、女神の加護はなくなったよ」



 ライラのオッドアイが綺麗に弓型になる。口元も弧を描いて、とても綺麗な笑顔を夕陽に染めた。


「だって、この国の王族が愛し子を殺したんだから」


最後までお読みくださりありがとうございます。

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