テオドールの記憶④
少し痛い表現があります。気分を害されるようでしたらスルーしてください。
脳裏に母の笑顔が浮かぶ。父と母と3人で一緒に離宮で、毎日朝食は一緒にって・・・。
一瞬で今までの優しい記憶が走馬灯のようにテオドールの頭の中を浮かんでは消えていく。
ーー死ぬ。
「だめーー!!」
小さな女の子の声が聞こえたと思ったら背中を踏んづけていた暗殺者が吹っ飛ばされる。
数十メートル吹っ飛ばされた男は木に叩きつけられ、呆気なく気絶した。
「すごくわるいにんげん」
舌足らずな可愛らしい声に拍子抜けする。とても幼い少女の声にテオドールは左眼を抑えながら身体を起こす。痛みで体がぶるぶる震え、呼吸がうまく出来なくなる。意識も朦朧としてきたが、テオドールは幼女を見た。
ふんわりした瑠璃色の髪が幼い丸みのある顔の輪郭を包み肩のあたりで揺れている。瞳の色が金色に輝くようでテオドールはきれいだな、と思った。小さな幼女はテオドールのそばに屈んで座ると、顔を覗き込んで泣きそうな顔になった。金の瞳が揺れていて潤み出している、とても綺麗・・・。変わった、瞳だ。水晶のような煌きの中に縦にスリット状になっている・・・。
「・・・いたい?」
今にも泣きそうな幼女にテオドールは震えながら首肯する。
「だいじょぶ」
舌足らずな話し方で幼女はテオドールが左眼を覆う手をどけ、自分の右手で覆う。
自身の左手で左眼を覆って、短く呟く。
「あげる」
幼女の手が眩く光る。テオドールは先ほどの激痛の熱とは違う熱さを全身に感じて、左眼が暖かくなっていくのを感じた。真っ白な発光が次第に落ち着いて、元の樹海の昏さに戻る。幼女がそっと手を離すと、貫かれて痛みと熱しか感じなかった左眼が、見得た。
――― そんな、嘘だ。
目の前の幼女の左眼が、薄紫色になっている。
テオドールの瞳の色は薄い紫色をしている。母フィリアと同じ紫水晶の色だ。
だが、暗殺者に貫かれて眼球は潰れた。 だから視えない、だろう? どうやってやった?
魔法なのか、呪術なのか、テオドールに苦痛を与えていた痛みはきれいになくなり、左眼がほんのり温かい。
取り替えた?って、何だよ。僕の目じゃ視えやしないだろう?
思った通り、幼女の左眼にはテオドールが映り込んでいない。視えてないんだ、瞳の色と形だけ残り機能は停止してしまったままだ。
「なん・・・・っ、僕の、眼?」
「うん」
「だって・・・剣で潰されたんだ・・・!!視えていないだろう!?」
テオドールは幼女の小さな両肩を揺さぶって叫ぶ。驚いた顔をして幼女はテオドールを見て首を振る。
「だいじょぶ。みえるから」
「嘘だ!!」
幼女はもじもじしながら小さな手を拳骨にして口元にあてて困った表情をする。
テオドールはそんな幼女の頭を優しく、優しく撫でて「大声出してごめんね」と謝った。
「あのね、だいじょぶなの。りゅうだから、だいじょぶ」
「りゅう?」
――りゅう、ってもしかして竜の事か?
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