テオドールの記憶①
久しぶりの投稿です。だいぶ書き溜めておきましたので徐々に更新していきます。
お付き合いくださいませ。
やっとヒーロー登場です。今回はほぼヒーロー視点になります!
昏い鬱蒼とした樹々が行く手を阻み足取りが重い。何度、通って草木を掃ってもすぐに先を阻むように生い茂って身体に打ち付ける様に邪魔をする。全くイライラする、この森はいつだってそうだ。何度目かの枝払いに彼は悪態をつきながら枝を叩き折った。
少し長めのアッシュゴールドの前髪が揺れる。
「・・・くそったれ!!」
木っ端を撒いて打ち割れた枝は四方に舞う。同時に足で地を蹴り上げて土埃を上げる。
隣で同じように枝払いをしながら樹海を進む長年の親友は彼の態度に肩を竦めた。
「・・・テオドール様~、お下品ですよ」
「うるさい」
注意してくる幼馴染は赤茶色の長髪を後ろで高めに一つで結び呆れた顔をしてこちらを見ている。
整った顔は少し垂れ目がちな優男でテオドールの側近である。昔から女性に対しては物腰柔らかく女受けする幼馴染はテオドールと同い年で侍女長の息子、幼少期から何かと一緒に行動していた為、成長してそのまま側近に収まった。
「クラウス、この森は呪われてるな」
「ですよね~」
「ここで瀕死になったし・・・。」
「ですが、ここでかの姫とお会いできたんでしょうが」
クラウスに言われて、んんっと咳払いする。
「・・・まあな」
ベンゼンティア王国の一部に『魔の森』に接する領地がある。
ベンゼンティアは王政制度が色濃い国で、国王のみが一夫多妻制が認められている。血縁世襲を重視するゆえの制度だがテオドールはこれを毛嫌いしている。
テオドール自身が王族であり、それも側妃の息子で正妃の子供よりも先に生まれている。
しかも第一王子だったから厄介だ。
母親はベンゼンティア王国の最北にあり『魔の森』を背に王国を守護するアイルノルト辺境伯の娘だった。
アイルノルト一族から猛反対をくらったが、現ベンゼンティア国王ヨシュアと当時恋仲だった母は、反対を押し切って結婚した。
当時、王太子だったヨシュアには婚約者がいた為、テオドールの母フィリアは正妃にはなれず側妃として嫁ぐ事になったのだが、これにアイルノルトが大激怒。それでもフィリアはヨシュアを慕い嫁いでしまった。
ヨシュアの婚約者は没落した国とはいえ王女だった為、婚約解消はできずそのまま娶る形になってしまったが、名ばかりの王太子妃となりはしたものの、堅実に政務をこなす姿に周囲の同情を誘ったという。高貴な身分もあり侍従たちはヨシュアに幾度となく諫言したが、ヨシュアはフィリアへの愛を貫いた。
寵姫フィリアはすぐに当時王太子だったヨシュアとの間にテオドールを設けたが、危険を感じたヨシュアによってすぐに存在を隠され二人に大事に育てられた。
しかし、テオドールが8歳の頃に母フィリアとともに辺境伯領へ里帰りの際に襲撃にされ、テオドールを守ってフィリアは亡くなってしまう。
――憎まないであげてね・・・。
最後の母の言葉に失笑が漏れる。
今でも理解できない。
父が憎い。ベンゼンティアの王位継承権を放棄してればフィリアと今でも家族仲良く暮らせていただろうに。
あんな風に暗殺される事なく、二人でアイルノルト辺境領地に行ってれば・・・。
親子三人、幸せな時間を過ごせただろう。
「・・・ここにもないか。」
「もう12年も探してるんでしょう? 樹海に呑まれて見つけるのは厳しいですよ」
「そうだよな・・・。」
テオドールは俯いて吐くように言う。
忘れられないあの日に、無くした母の形見。母とテオドールの瞳の色と同じ、紫水晶のペンダント。森の中に逃げ込んだ後から思い出せない。
遠い記憶。
忘れられない、運命の日。母フィリアにとっても、テオドールにとっても。
襲撃のあった日は。母フィリアが猛反対された結婚後、初めてのアイルノルト辺境領地へ里帰りの日だった。
冬になる前の少し肌寒い、そんな日・・・。
最後までお読みいただきありがとうございます。




