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第4話 子のいない鬼ごっこ

「聞いたか。首なしの勇者が街道に出たって話」


「聞いた聞いた。もう何人も冒険者がやられてるらしいぜ」


冒険者たちの集う酒場を歩いていたメルセスとアルメイスはそんな声を聴いて足を止めた。


「その話詳しく聞かせて貰えるか」


「今度は何処に出たの?」


「え、ああ。この街の南の郊外にある村を超えた先辺りで3人やられたらしい」


「やっぱり、首なしの勇者は聖痕の力を引き出してたの?」


「多分な。その場にいたやつは全員死んじまったから証言は無いけどな」


「それでも、死体やその場を見たやつによると相当な威力の魔法が乱発されたことは間違いないらしい」


「そう、ありがとう」


「参考になった」


「どうも。って、お前たちのその腰の剣。最近、噂になってる新入りの冒険者か?」


「これ目立つんだな」


「ええ、村の外では珍しいみたいよ。私も他に会ったこと殆ど無いし」


「元々東方系の剣術だしな」


「なんだなんだ、首なしの勇者と何か因縁でもあるのか?」


「さあ、どうかしらね」


「情報提供ありがとうな」


酔った冒険者に興味本位で首を突っ込まれそうになったので、2人は軽くあしらって、そそくさとその店を後にした。


「流石に街の中までは入って来ないと思うけど何時鉢合わせてもおかしくないな」


「そうね。勇者としての力も保持しているみたいだし、あの時変に迎え撃たなくて正解だったわね」


首なしの勇者と相対した後、2人は今後の方針を話し合ったが、その結論は村を出て一度逃げると言うものだった。


そもそも、死霊術者(ネクロマンシー)が生み出したゾンビは、術者のレベルによって性能が異なる。


なんちゃってレベルの術者ならば、ただの動く死体であり魔法も使えず一度倒せばそれっきりだが、最高位の術者が生み出したゾンビは、文字通り不死の体を持ち何度倒しても再生する。


どのレベルの術者が製作者なのかは分からなかったが、あの時の攻撃を見るに少なくとも相応のレベルは持っている術者であることは分かっていたので、無理はしなかったのだ。


方針を固めた2人は首を持ってすぐに村を出た。


首は置いて行っても、捨てても良かったが、うっかり術者やラーファに回収され首なしの勇者が完成形となるのは避けたかった。


「ここ最近よく噂を耳にするし、体の適応が終わったようだな」


村を出た2人は、近くの街を拠点とする事を決めた。


ここならば、首なしの勇者の噂を仕入れやすい上にいざ決戦になっても周りに助けを求めやすい。


そして、敵わないと思えば、彼らを盾に逃げる事も容易になる。


そう判断した2人がこの街に入って既に一月が経っていた。


「そろそろ、術者を探し出さないとまずいわね」


首なしの勇者を叩けない可能性がある以上、首なしの勇者をかわしつつ、術者の方を探し出すのが最善の方法で、2人はこの1か月、術者の情報も探していた。


「術者から離れ過ぎればゾンビは自壊するからこの辺りのどこかに居るのは間違いないはずなんだがな」


これも術者のレベルによるが、どんなに高位の術者でも数十キロ以上離れた所から操るのは不可能で、この街はこの地域の中核都市。


この地域に首なしの勇者が居る以上は、この都市圏に居るのは間違いないはずだ。


しかし、この1か月で術者の情報はほぼ皆無に等しく、ただ日銭を稼ぐために刀を振るう日々が続いていた。


子のいない鬼ごっこの形勢は、かなり2人に不利な状況であった。


「表立って活動はしてないみたいなのは間違いなさそう」


「だとしたらどこかに根城があるはずだ」


冒険者が多いこの世界で往来が多いとは言え、都市を除けば村社会だ。


見慣れない人物が入り浸って居ればいやでも噂になる。


「余程の街道からの外れか逆にこの街か」


「この街は無いんじゃないかしら。私たち噂になってるみたいだし」


「確かにさっきの酒場でもすぐに気づかれたしな」


「元々この辺りの村に住んでた人だったとか?」


「可能性はあるけど首なしのゾンビ何て目立つものを作ってる以上人目につかない拠点があるはずだろ。村の中じゃ無理だろ」


「そっか。村は見方を変えれば双方監視してるみたいなものだものね」


「だろ。うちの村でもそんな変な奴が居れば一発で噂になってた」


「街道の外れだとしたら厄介この上ないわ」


「シラミ潰しになるし、人目がない分、情報も外に出きづらいからな」


「そうよね。でもまあ、考えてもどうしようもない事は考えない様にしましょ。時間の無駄だわ」


「それじゃあ、今日も日銭を稼ぎますか」


考えを整理した2人は論議をそこそこで切り上げ、日銭を稼ぐためによく出入りしている冒険者ギルドへ向かった。


「マスター何かいい依頼来てるか?」


「お、メルセスとアルメイスか。来てるぜ。首なしの勇者の討伐」


ギルドに入るとスキンヘッドの男がカウンターの奥で、酒の用意をしていた。


彼がこのギルドのマスターで、元冒険者らしいが今は引退して裏方に回っている。


ギルドマスターでありながら、酒場のマスターも兼任しており、事務仕事は従業員に丸投げしているらしい。


「それは勘弁。それは俺達でも骨が折れる」


「そうかよ。それなら勝手に見て勝手に受けやがれ」


マスターが冗談交じりにそう言うと2人は苦笑いしながら、掲示板に目を通した。

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