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第2話 主なき勇者パーティー

「アルメイス。今日こそネルセスの首返してもらうから」


「別にもうメルに見せたから、あんなのが欲しければ返してあげても良いけど。あなたたちみたいな媚び売りビッチたちの言う事を聞くのも癪だし簡単には返さない」


アルメイスの挑発に3人は歯ぎしりしていたが、無暗に突っ込む事は無かった。


「3人も斬られれば、慎重にもなるか。あ、4人だったわね。勇者も入れれば」


「テメェ」


3人の内一番血気盛んそうな女性が今にも突っ込んできそうな勢いで、吐き捨てるが、他の二人はそれをなだめるように制する。


「おい、アルメイス。あんまり挑発するな。何とか穏便に済ませる方法を」


「無理よ。ここに来るまでもうあの娘たちの仲間を3人もぶった斬ったんだもの」


先ほどの会話で何となく事情は察してはいたが、改めて聞かされると言葉を失った。


「そうだ。テメェは勇者様だけじゃなく自分の仲間を斬ったんだ。許せるわけがないだろぉが」


「自分の?それは誰を指してるの?あなた自身の?…それともまさか私の?」


「テッメェ。本気かよ」


「嘘偽りを述べたつもりはないわ。私はあなたたちを仲間だと思った事は無いわ。あなたたちと一緒に行動してあの男に媚び諂ってたのは、メルのためよ」


「好きでもない男に股開いたのかよ。テメェは」


「だから未遂までケリをつけたのよ。好きな人のためならなんだってするそれが愛ってものでしょ。あなたたちは違うのかしら」


「狂ってる」


「ありがとう。私の愛を証明してくれて。愛は人を狂わせるって言うし」


「あなたが何を思おうが関係ない。私たちはあなたたちを殺してネルセスの首を返してもらうだけだから」


「俺は関係ないだろうが!」


「あなたが居なければネルセスは死ななかった。あなたも同罪よ」


「理不尽な理由で勝手に連座させんな。たっく、お前たちも中々だな」


「フフ、相手を褒めてるところ悪いけど。ちょっと頭下げて」


「褒めてねぇって。って頭?」


アルメイスの言葉の前半にツッコミを入れるのに気を取られて危うく後半の部分を聞き逃しかけたメルセスだったが、首を傾げながらも頭を下げる。


「裏名川流抜刀術単竜」


「はぁ!?」


いきなり頭上に横なぎの抜刀の一閃を放たれたメルセスは素っ頓狂な声を上げ、アルメイスを見ようとしたが、自分の近くに何かが落ちるのを感じてそちらに視線の先を変えた。


「ひ、人の首」


「あの男の4人目の仲間の首よ。迷彩で隠れて奇襲しようとしてた様ね。周りに気を付けた方がいいわよ」


「東方剣術の達人。これでも届かないの」


裏名川流


アルメイスの父親が修めていた剣術で、剣術と抜刀術を中心に組み上げられた流派になる。


幼い頃より裏名川流の英才教育を施され勇者を除けば人類でも上位に来るであろう戦闘力を誇るアルメイスにとって人の首を斬り落とすことなど造作もなかった。


「奇襲ごときで私たちの力の差が埋まるとでも?私があなたたちを何度助けたと思ってるの?」


刀を鞘に納めながら淡々というアルメイスに3人は、戦慄したが後に引くわけにはいかず3人は意を決して同時に動き出した。


「氷壁」


最初に3人の中でリーダーらしき女が氷の壁で2人を分断すると残りの2人が同時に駆け出しそれぞれアルメイスとメルセスに飛び掛かった。


メルセスはそれを下がってかわすが、アルメイスは静かに刀を抜き、受けて立つ構えを見せた。


「強化魔法剛力」


「裏名川流剣術紅一点」


襲ってきた女は強化魔法で強化した打撃で攻撃を加えようとしたがその拳がアルメイスに達する前にアルメイスの刀が最短コースを最小限の力で進み女の心臓を突き刺した。


「勇者が居なければあなたたちはこの程度の力。それを見誤ったのがあなたたちの敗因よ」


そう言いつつ刀を体から抜くと赤い血が1点からあふれ出した。


「美しい剣戟が美しい結果を生むから私はこの技が好きなのよね」


そう言って微笑むアルメイスの顔を見た氷壁を出した女は恐れを抱いて、後退りした。


「本当に狂ってる。この女もそれを簡単に受け入れているそこの男も」


「待て待て、俺を変人枠に居れるんじゃない」


「黙れ奇人」


「うわ、聞いてねぇし」


自分に襲い掛かって来た女を捌きながらツッコむメルセスだったが、狼狽えまくった女の耳には正しく意味が届いていなかった。


「こんなの人じゃない。勝てるわけがない。逃げなきゃ」


「逃がすと思う?裏名川流風花雪月・風」


逃げる女の背中に向けてアルメイスが刀を振ると魔法の斬撃がカマイタチの様に飛んで女の体を真っ二つに切り裂いた。


「おい、残りはお前だけになったぞ。どうすんだ」


「お前を殺してアルメイスも殺す」


「仕方ない。裏名川流感振」


相手の動きを感じとった上でのカウンターの一撃でメルセスは、女の片腕を斬り落とした。


「少しは冷静になれ」


「死ねぇ」


「あ、もう」


それでも止まらない女に仕方なくもう一撃入れようとしたが、刀を構え直した瞬間その必要がない事を悟った。


「腕は落ちてないどころか上がってるみたいね」


何故ならアルメイスが後ろから首を斬り落とすのが見えたからだ。


「当たり前だ。勇者になれなくても強くなって誰かを救えるからな」


「うん、メルの希望第3項だね」


「人の思い付きの願いを条約みたいに言うんじゃない。恥ずかしいだろうが」


「良いじゃない。言い方が無いと不便でしょ」


「忘れてくれて良いんだ」


「忘れないよ。それが私が私である存在理由だもん」


「大げさな」


「そんなこと無いんだけど。まあ、それはともかくこれからの事考えたいからちょっと落ち着かない?」


「そうだな。その前にこれを片付けないとな」


そう言って2人はせっせと3人の死体を片付け家に帰った。

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