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第13話 呪術

「あなたが首なしの勇者を作ったって言うならーあなたも同罪だよねー。使用者責任ってやつー?」


「…ここで…あなた方と当たるのは…予定にはないが…強い死体はこちらも大歓迎だ」


サーシャの不意打ちの一撃を自ら後方に飛ぶ事でダメージを抑えた黒いローブの人物は立ち上がると懐から釘を取り出し、釘を空中にばら撒き魔力で浮かせる。


「釘?あなたタダの死霊術者(ネクロマンシー)じゃないわね」


「…博識だな」


通常、死霊術者(ネクロマンシー)は戦闘向きの力を持っていない事が多い。


魔法とは鍛錬によって習得されるスキルで磨けば磨くだけ強力な魔法になる。


しかし、その研鑽にかかる時間は膨大で、分野を絞って研鑽しなければどっちつかずな半端者にしかなれない。


例えばメルセスとアルメイスにとっての剣術に付与する魔法、ナルセスとサーシャにとっての体術に付与する魔法のような具合である。


死霊術者(ネクロマンシー)は、ゾンビを生み出すことに特化した人物の総称であり本来、本国待機レベルで、戦闘向きではない。


「呪術辺りを参考にしたのかしら」


「…あくまで参考程度だ。…使い方は違う」


その言葉通り、黒いローブの人物の釘の使い方は呪術で用いられるような藁人形と相手をリンクさせる様な使い方ではなく、呪術師が戦闘で用いる様な釘で直接3人を狙った。


「速いし細かいけど捌けないほどじゃない」


「まさかーこの程度で私たちの相手になるとか―思ってないよねー」


釘の動きは、緩急自在ではあるがプロ的なレベルで見てしまえば全体的に緩慢で、3人には余裕で捌ける。


「…まさか」


黒いローブの人物が拳を握ると釘があちこちで結合し大小さまざまな大きさの釘が完成した。


「…それにこういう使い方も…ある」


大小と緩急をつけた攻撃を繰り出しながらも黒いローブの人物は、釘の何本かを自分の近くに引き戻し、その釘を次々と蹴り飛ばし、速さと威力の増した釘を3人に飛ばす。


その速度は3人が3人とも反応し切れず、咄嗟に回避行動を取り、芯を外すのが精一杯だった。


「これは厄介ね」


「細かい釘で牽制しつつ大きな釘で一撃を狙い。さらに速度と威力を上げた大砲を狙ってくるのがあいつの基本スタイルなんでしょうね」


「…それで終わりじゃ…ないぞ…真なる人形(ひとがた)


釘を捌きなながらも情報を整理していたメルセスとアルメイスに大きな釘を蹴って飛ばすと自らも走り出し、強化魔法で釘に追いつくとさらに殴って加速させた。


加速にさらに加速がついた今度の釘を2人は避ける事が出来ず、肩と太ももを突き刺された。


そのまま走り続け、サーシャを釘で重点的に牽制しながら、メルセスに突撃した黒いローブの人物は、肩に刺さった釘をそのまま殴りもっとめり込ませた。


するとメルセスが釘で刺されたのと同じ個所にアルメイスにも痛みが走り、鮮血が飛び散った。


「これは…呪術師が使う人形(ひとがた)の応用なの?」


通常人形(ひとがた)とは、対象者の体の一部を藁人形などに入れ、対象者と藁人形をリンクさせ、藁人形を攻撃する事で相手も攻撃できると言う魔法だ。


今回は藁人形の代わりにメルセスとアルメイスがリンクした状態になっていてメルセスへの攻撃がそのまま、アルメイスへの攻撃となったようだ。


「メル、ちょっと痛いけど我慢して」


「お互い様だろ」


仕組みに目途を付けた2人は同時に刺さった釘を抜くと同じように互いに鮮血が飛び散った。


「熱風回脚」


近づく釘を一度にすべて薙ぎ払ったサーシャが2人を助けるために炎を纏った旋風脚で黒いローブの人物を追い払った。


「刺さった人に質もーん、これって金属?」


「そうだろうけど、それがどうかしたか?」


「ならこうだ―」


脚に巨大な雷属性の魔法を纏わせたサーシャが逆立ちしながら踊る様に回転すると釘は全てその雷に吸い寄せられるように集められ、回転と魔法の調整で全て黒いローブの人物に向かう方向で魔法を解除して逆に釘の集中攻撃を狙った。


「…そう来るか」


釘の主導権を奪われた黒いローブの人物は、一瞬驚いたが、すぐに釘の主導権を取り返した。


「裏名川流抜刀術単竜」


釘の主導権を取り戻し釘を分散させた瞬間にその釘の陰からメルセスが飛び出し抜刀術を放った。


「裏名川流剣術大車輪」


その刀を紙一重で躱した黒いローブの人物だったが、さらにメルセスを踏み台にして、高さを出して上空からの攻撃をアルメイスが狙う。


アルメイスに釘を殴って飛ばし攻撃を中断させた黒いローブの人物だったが、メルセスたちの攻撃はそこで止んだりはしかった。


「熱炎脚」


空中に意識を持っていかれた黒いローブの人物の注意が地上から離れた隙を狙いサーシャが、地面すれすれに身を屈めながら足元へ飛び込み、体を捻りながらの後ろ回し蹴りを顔面に当てる。


「…付け焼刃では…このぐらいが…限界か」


その攻撃でよろめいた黒いローブの人物だったが、メルセスからの追撃の気配を感じ、その場から飛び退き木の枝の上へ飛んだ。


「本来の目的で…ある…実験の観測は…終えた…今回は…これで…失礼する」


そう言い残して黒いローブの人物は森の闇の中に消えて行った。

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