絶望
少女に話しかけられてから数時間。
私は血眼になって、お母さんを探した。
絶対にこの町に居る。
お母さんの声は、確かに大きく成っている。
この町に居ると、確信できる程に。
「……もう夜」
だけど、一日中探しても、お母さんは見つからない。
でも、わかった事は有った。
あの少女が言っていたように、エルフと言うのは、基本は草色の髪を持っている。
おかげで、私達が襲われた理由も、大体見当はつく。
「許せない、本当に」
髪の色が珍しかった。
大体そんな所だ。
そんな理由で、私の生活を滅茶苦茶にしたあいつ等を。
「……ッ!!?」
そんな時、私の頭に頭痛のような衝撃が走る。
痛みは無く、代わりに聞こえたのだ。
お母さんの声が。
「いた、見つけた!」
そして、私は声のした方を向く。
視線の先には、私が閉じ込められていた場所と、似た外観の建物がある。
斧を握る力を強め、その建物へと入り込む。
ドアを壊し、中へ入ると、居眠りをしていた男を見つける。
「な、なんだお前グエ!」
すぐに男の首を掴み、斧の刃を向ける。
何をされるのか察した男は、その顔を恐怖で染める。
「お母さんは何処?」
「し、知らねぇ」
「チッ、私と、同じエルフ!!」
シラをきる彼に、私の素顔を見せる。
すると、彼は何かを思い出したかのような表情を見せる。
「こ、この地下だ!二か月前から、そこにつないでる!」
「……そ、ありがと」
「ま、まて!」
場所さえわかれば、もう用はない。
なので、斧で男の頭を割った。
力ずくで斧を引き抜き、彼の言っていた地下を探す。
「……ここだ!」
目立つ場所に置かれていた扉をくぐり、地下へともぐる。
大人数の声を聴きながら、階段を降りた。
そして、ドアをけ破った。
「あ、見つけ、た……」
視線の先には、お母さんの姿が有った。
だけど、そこに居たのは、私以上の大人数に乱暴される、お母さんの姿だった。
男達は、私の方を見ると、妙な笑みを浮かべる。
「何だ?」
「新しい女か?」
「……あ」
ここにいる全員、もはや人間とは認識できない。
いや、むしろ、コイツ等の考えが、何故か読み取れる。
私にも乱暴する気だ、あの部屋の時のように。
そう考えていると、ドロドロとした何かが、私の頭を覆いつくした。
「あ、あああ!!!」
喉が裂ける程、私は叫んだ。
もう、こんな奴ら、生きている価値はない。
何故生きているか、それさえも、もはや解らない。
「殺す、全員まとめて、殺してやる!!」
そこから先、私は暴れた。
一方的に、無防備な男どもを斬殺した。
抵抗しようものなら、もっと痛くしてころしてやった。
あの部屋の連中が、私にしてきたように。
「止めろ!」
「黙れ、教えてやる、一方的に暴力を振るわれる、痛みと恐怖を!!」
命乞いをしても無駄だ。
全員殺すまで、私はお前たちを許さない。
斧を振り下ろし、男に止めを刺す。
「オラ!」
「ッ!?」
その瞬間、頭に強い衝撃が走る。
頭から、陶器の破片と、少し苦い液体が頭を流れる。
また酒瓶か。
倒れかけ、斧を離してしまうが、すぐに殴り返す。
「フン!」
「ブヘ!」
斧を無くしてもどうでも良い。
素手で十分。
逃げる奴もいたけど、如何だって良い。
ここで怯えている連中だけでも殺す。
殴り、蹴り、踏みつぶし。
時間はかかったけど、全員を殺しつくした。
「はぁ、はぁ」
肩で息をしながら、私はお母さんの元へ行く。
私と同じように、乱暴されるときは、首の鎖を解かれている。
大分手を痛めていたので、手間が省けた。
「あ、あはは、やっと、見つけた」
大分弱っているが、まだ生きてる。
「(すぐに体を綺麗にしてあげるからね)」
そう思い、私はお母さんの事を担ごうとした時。
更に大人数の人間が、部屋に入り込んで来る。
しかも、今度は全員武装している。
「何?」
「お前か!?門番を殺し、入国税を踏み倒し続けるエルフは!?」
「知らない」
「しらばっくれても無駄だ!お前を逮捕する!大人しくしていろ!!」
何を言っているか解らない。
でも、間違い無いのは、こいつらも私の邪魔をしようとしている。
だったら、殺すだけだ。
邪魔な奴らは、皆。
「黙れ、黙れ、私はもう、何も信じない、家族以外の言葉には、耳をかさない!」
私は、再び暴れた。
武装している連中は、向かってくる私に、武器を向けて来る。
でも、邪魔な連中は、どんな奴だろうと、殺してやる。
「(絶対に、帰るんだ、絶対に)」
頭のドロドロは、全身に回って行くのを感じる。
何故だろう、こうしていると、力が増している気がする。
でも、丁度いい。
「こ、この化け物!!」
「ッ!」
でも、数が数。
剣で背中を斬られる。
まるで、燃える松明でも押し付けられているかのような痛み。
でも、この程度で、倒れる訳にはいかない。
「死ね!」
私を斬った奴は、すぐに顔面を潰す。
それと同時に、前後から槍や剣で刺される。
「コイツでどうだ?」
「……うるさい」
皆嫌いだ。
絶対殺す。
私を刺した連中を、すぐに始末し、槍や剣を引き抜く。
身体から抜いた剣で、また戦いを始める。
「何なんだコイツ!」
「悪魔だ!魔王の手先だ!」
「ええい怯むな!もう死にかけだ!」
死にかけ?全然余裕だよ。
血を垂れ流しながら、剣を振り回す。
剣で叩き斬り続け、次々数を減らす。
その度に、私は斬られた。
「死んじゃえ、みんな、みんな!!」
「そ、そんな」
そして遂に、最後の一人を残して、トドメをさした。
剣をそのままに、腰を抜かす男へ、ゆっくりと近づく。
「ウソだろ、一人で、武器も持たずに、ああ」
恐怖に蝕まれ、まるで、絶望で動けなくなっているように見える。
でも、何だろう、こいつを見ていると。
凄く心地が良い。
「来るな、来るな!」
「……ふふ、アンタはそうやって絶望しているのが、お似合いだよ」
そう言い、私は最後の人間を殺した。