100 こんなはずじゃなかった(マリー視点)
記念の100話がこの話かとちょっと反省しました。
計画通りにいかないものですね。
ああ、全く。イライラするわ。
昔からの癖で、ギリギリと爪を噛んでしまう。
爪の形が悪くなるから、最近は我慢出来ていたのに。爪が割れて、私は余計に苛立ちを感じた。
「マリー様。ああ、爪をそのように噛まれては……」
「煩いわね! 侍女の分際で私に指図しないで!」
余計な口出しをしてきた侍女に、私は思い切り手元にあったカップを投げつけた。カップは侍女の額に当たり、床に落ちて割れる。侍女は悲鳴を上げてその場にうずくまった。
ああ、割れてしまったわ。お気に入りのカップだったのに。
「ちょっと、どうしてくれるのよ! アンタのせいでカップが割れたじゃない! このカップ一つでアンタの給料の何倍すると思っているの? 弁償してもらうわよ!」
「お、お許しを……」
侍女は額から血を流しながら泣き出した。なんて鬱陶しいのかしら。これ見よがしに泣いたって、許す筈がないじゃない。床に額を擦りつけて謝る侍女の手をヒールで踏みにじって出ていくように命じると、侍女は転げる様に走って部屋を後にした。あの馬鹿、弁償のために娼館に売りつけてやろうかしら。
本当にイライラするわ。ようやくジーンとの結婚が決まったっていうのに、たかが当て馬のロックがあんな優良株に化けるだなんて。
幼い頃から、ジーンは特別だった。メルド街一大きな商会の跡取で、顔もいいし、女の子に優しいし。私なんて実家がちょっと大きな鍛冶屋ってだけで、容姿が可愛くても、ジーンを狙う沢山の女の子たちの中の一人にすぎなかっただろう。
幸運だったのはロックがジーンと仲良くなったことだった。本当だったら私みたいに可愛い女があんな貧乏な鉱夫の息子なんて相手にしないんだけど、その内何かに使えるかもと、たまに相手をしてやっていたらなんだかやたらと懐かれたのよね。道端に咲いてる花を束ねてプレゼントするような、どうしようもない男だったけどジーンと親しくなれたのだけは感謝してるわ。
ジーンはロックを気に入っていたから、ロックの側に居れば必然的に私と一緒に過ごす時間も増える。適当にロックをダシにして健気な幼馴染のフリでジーンの気を引けば、段々とジーンは私に夢中になっていった。2人きりになりたがる時に『ロックも一緒に』と言うと、あからさまにロックを敵視するようになった。
でも私は、そこでロックを切るような愚かな真似はしなかった。ジーンの中で私は『幼馴染を大事にする優しい女の子』だ。実際はロックの事なんてどうでもよかったけど、気に掛けている振りをすればジーンはロックに私が取られるのではないかと焦った。
もしもロックを早々に切っていたら、ジーンの興味をここまで引く事は出来なかったかもしれない。ジーンの周囲には相変わらず他の女が群がっていたからね。ロックという邪魔者を上手く使えたからこそ、ジーンとの結婚まで持って行けたと思っている。まぁまぁ、役に立ったわ。
それなのに。そのただの邪魔者が、あんな大出世を遂げるなんて。
メルドの街は今や丸石事業で沸いている。誰もが流れに乗り遅れまいと必死だ。丸石のお陰で街中が潤い、活気に溢れていた。その丸石研究の中心人物が、ロックだなんて。
丸石なんて、ロックみたいに何の役にも立たない邪魔者だったのに。魔鉄の周りに必ずいる邪魔者。少しでも魔鉄に交じれば、武器も防具も脆くなる。厄介なだけの邪魔者だったのに。
丸石を使った製品が、どの商会にも並ぶのが当たり前になった。丈夫で割れにくい食器。丸石特有の白地に可愛い絵付けがされていて、富裕層の平民の間では人気の品になっている。アルト商会の看板商品である魔石のポットや温冷空調機やヘアアイロンも丸石が使われて軽くなった。特にヘアアイロンはその軽さで髪の手入れがしやすくなったとすこぶる好評だ。
それに、武器や防具も丸石を使って軽量な物が作られるようになった。特にナイフや細身の片手剣を使う人たちには喜ばれた。ああいう武器は俊敏さを売りにする冒険者が良く買うから、軽ければ軽いほどいいのだ。
でもウチの店もジーンの店も、ちっとも丸石製品を仕入れる事が出来なかった。ジーンのお父様やウチのお父様がどんなに伝手を辿ろうとも、どこも相手にしてくれない。うちより格下の店だって仕入れているのに、なんでこんな目に合わなくちゃいけないのよ!
ジーンと私は、ロック宛に何度も手紙を送った。というか、いつの間にかロックがメルドの街から引っ越していたなんて気づかなかったわ。ジーンと婚約した後、ジーンがロックを切り捨てたから放置していたんだけど。引っ越すなら報告ぐらいすればいいのに。
いつもなら私から声を掛ければ、構ってもらえた犬みたいに大喜びで駆け付けるロックなのに、手紙の返事は一度も返ってこなかった。おかしいわ。ロックが私を無視するなんてありえない。もしかしたら、ロックの後ろ盾だとかいうドヤール辺境伯家が、手紙も出せないぐらい働かせているのかもしれない。そうジーンにいかにも心配してますと装って訴えたら、ジーンは伝手を辿ってカルドン侯爵様に訴えてみると言ってくれた。良かった! ジーンのお父様はメルドの街でも名士だもの。カルドン侯爵様もきっと力になってくださるわ。
きっと馬鹿なロックのことだから、田舎貴族にいい様につかわれているに違いない。それを私たちが助けてやれば、きっと感謝してジーンの商会やウチの鍛冶屋に手を貸してくれるはず。ジーンは嫉妬するかもしれないけど、お礼に頬にキスでもしてあげようかしら。ううん、もう昔の様に貧乏なロックじゃないんだもの。ジーンからロックに乗り換えるのもアリかしら。
そう思っていたのに。
ジーンの知らせを今か今かと待っていた私は、萎れた顔で報告するジーンの言葉に唖然とした。
ジーンとジーンのお父様は、カルドン侯爵に直々に厳しく叱責されたそうだ。軽々しく憶測で貴族を貶めるなど、本来ならば死刑となってもおかしくないと。ロックの後ろ盾であるドヤール辺境伯家は爵位はカルドン侯爵家に及ばないものの、その影響力は侯爵家にも匹敵する。悪い噂がカルドン領内で広まるだけでも許しがたいと。
ジーンの家は、カルドン侯爵家どころか、商業ギルドも敵に回してしまったらしい。ようやく会えたと思ったら、手入れのされていない髪に皺だらけのシャツ姿で現れた。それになんだか臭うわ。あんなに素敵で格好良かったジーンが、まるで道端の野良犬みたいに落ちぶれていた。なんて無様なのかしら。
「婚約は解消しましょう、ジーン」
当たり前にそう切り出したら、ジーンが目を丸くした。どうして驚くのかしら。
「領主様から取引を切られるような商会なんて、潰れるしかないじゃない。私そんな未来のない男に付き合う暇はないの。私のお父様も、ジーンとの結婚は白紙だって怒っていたし。ああ、婚約解消の慰謝料はいらないわ。まだ正式に婚約を交わしたわけではないもの。それより貴方と婚約していたなんてこと、周囲に言いふらさないでよ。次の縁談に影響しちゃうもの」
「そ、そんな、嘘だろう? マリー! 俺の事を愛しているって!」
「あーあ。こんな事になるなら、ジーンじゃなくてロックにしておけば良かったわ」
「どうして……。ロックの事が好きなら、どうして俺の求婚を受け入れたんだ? 」
「別に、どっちも好きなんかじゃないわよ。将来の事を考えるなら、貧乏なロックよりもジーンの方がお金持ちだったから選んだだけだもん。あんた達以外にも、何人かいい人はいたけど、断トツはジーンだったのよねぇ。まあ、今からロックに乗り換えればいいだけの話よね! 」
そうと決まったら、もうジーンには用はないわ。
ジーンは糸が切れた人形みたいに地面にへたり込んで、ブツブツとこんなはずじゃなかったとか繰り返していたけど、どうでもいいわ。
それにしてもどうしようかしら。このままじゃ有望株のロックを他の女に取られちゃうわ。こんなに大成功していて、周りの女が放っておくはずがないものね。
でも、勝算はあるのだ。ロックは、私が好きなんだもの。初恋の女の子がわざわざ遠いドヤール領まで訪ねて来て愛の告白をしたら、絶対に私を選んでくれるはず。もしかしたらロックはジーンに遠慮して私を拒むかもしれないけど、その時はジーンに他の女が出来て裏切られたと言えばいいわ。もしくは酷い暴力男だって吹き込むのもいいわね。ロックは昔から私の言う事はなんでも信じてくれたから、疑うはずがないわ。
そう思って、お父様を焚きつけて、私は遠路はるばるドヤール領のモリーグ村にやってきた。
はぁ。メルドの街に比べてものすごい田舎だわ。やだ、畑ばっかり。ああ、お気に入りのヒールに土がついちゃったわ。
研究施設は、他の建物に比べればまだマシな方かしら。ロックへの面会の依頼の手紙を出しても全く返事がないからわざわざ直接出向いてやったけど、ロックを連れてさっさと帰りたいわ。こんな田舎町、長居をしたら家畜の臭いが染み付きそうだもの。
研究施設へ行き、ロックへの取次を頼むと、約束がない人とは会えないと言われた。
はぁ? 何言ってるのよ。ロックなんかの為にわざわざ私がきてやったっていうのに。一緒に来たお父様が少し声を荒げると、取次をしていた侍女が怯えた様に奥へ引っ込んだ。うふふ。侍女ごときが口答えするから悪いのよ。お父様は身体も大きいし強面だから、怒鳴られると怖いのよねぇ。初めからちゃんと取り次げばいいのに、使えない侍女だわ。ロックに言って、クビにしてやらなくちゃ。
私はいつもの可愛い顔を作る。ロックにとって、私は憧れの初恋の人。私のお願いを、ロックは断った事は無いもの。うふふ。早く出てこないかしら。
そう思って待っていたのだけど、ロックは待てど暮らせど出てこなかった。いい加減、焦れてさっきの侍女を呼び付けたら、違う女が出てきた。
「ロックへの面会を希望だとか。何か御用でしょうか」
出てきたのは、すらりと背の高い女。顔立ちは田舎女にしては見られる程度。
何この女。服装からメイドだという事は分かるけど、やたらと態度がデカくない? 主人であるロックを呼び捨てにするなんて、躾がなっていないわ。所詮は田舎貴族の研究施設ね。
「あの、私、ロックの友だちのマリーと言います! ロックに何度も手紙をだしたんですけど、返事が来なくて心配で!」
気に障る女だけど、私は猫を被ってそう訴えた。メイドとはいえ、ロックとは顔見知りの様だし。本性は隠しておくに限るわ。
「まぁ、お手紙を……。申し訳ありません。ロックには毎日大量の手紙が届きますので、全てのお返事は出来かねます。それに、研究で忙しくしておりますので、急にいらっしゃってもお会いするのは難しいでしょう」
女に慇懃無礼にそう言われ、私は腹がった。メイドごときが私を邪険にするなんて。なんのつもりかしら。
そこで私はピンときた。女の態度はメイドとして褒められたものではない。それに、落ち着き払った態度とは裏腹に、その目はギラギラとこちらをあからさまに敵視していた。この女、ロックを狙っているんだわ。私という強力なライバルが来たから、こんな風に威嚇しているのね。
ふんと、私は鼻を鳴らした。ちょっとばかり綺麗でも、所詮は田舎女だ。私が負ける筈がない。ロックにさえ会えれば、私を選ぶことは決まり切っているのに。
「ロックは私の大事な幼馴染なんです。そんな意地悪な事を仰らないで、なんとか一目だけでも会わせて頂けませんか?」
私は顔を伏せて両手で覆い、わざと震える声を出した。こんなに可愛くて可憐なわたしが泣いていたら、田舎女が私をいじめている様に見える筈。ああ、ここにロックが来てくれたらいいのに。私が泣いているのをみたら、きっとこの女を叱ってくれるわ。
「おい、女。お前、メイドの癖に客人を追い帰すなど無作法な! つべこべ言わずにロックを呼んで来い! お前なぞ、いくらでも馘首に出来るんだぞ!」
頼りになるお父様が先ほどのメイド同様、田舎女を怒鳴りつける。ふふ。これで女も怖がってロックを連れて来てくれるはずだわ。ロックに会ったら、この女の無礼な言動を言いつけて、クビにしてやるんだから。
「まぁ。申し遅れましたが、私はメイドではありません。研究所のお手伝いをさせて頂いていますので、便宜上このようなお仕着せを着ておりますが、ロックの妻、ローラでございます」
つま。
何それ。え? 妻?
「う、嘘よ! ロックの妻? そんなの知らない! ロックは、ロックは私と結婚するのよ!」
「もちろん、嘘ではございません。私とロックは正式な夫婦でございます」
田舎女が自信たっぷりと言い切る。遠巻きに見ていた他の使用人たちが、女の言葉を肯定するように揃って頷いている。
「し、信じないわ! ロックに会わせてよ! ロックに会えば、そんなの間違いだって分かるもの!」
その時、待ち望んでいた声が聞こえた。
「間違いじゃないよ、マリー。ローラは僕の妻だよ」
でもその懐かしい声は、残酷な言葉を告げる。
久しぶりに会うロックは、相変わらずパッとしない風体だったが、いつもオドオドしていたのが嘘みたいに堂々としていた。田舎女の傍らに寄添うと、自然とその肩を抱く。まるでいつもそうしている様に。
「ローラ。僕にお客さんなら、ちゃんと声をかけてよ」
「貴方の手を煩わせるほどの事じゃないと思ったのよ」
「怒鳴り声が奥まで聞こえたよ。君に危険が迫っているかと、生きた心地がしなかったよ」
ロックは私の事など眼中にないみたいに、田舎女を甘い口調で咎めている。田舎女はツンとそっぽを向いているけど、顔を赤らめてまんざらでもない様子だ。なんなのよ、こいつら。なんで私を無視していちゃついているのよ。
「ロ、ロック。久し振りね! あなた、何も言わずに引っ越しちゃうから、私、心配したのよ!」
「やあ、マリー。どうして君のお父さんは僕の妻を怒鳴りつけていたの? 聞くに堪えない暴言も全部聞こえていたんだけど、どういうつもりなのかな」
ロックがようやくこちらを向いたと思ったら、冷ややかな目を向けてくる。
「あ、ご、ごめんなさい。だって、その人が悪いのよ。ロックに会えないだなんて、意地悪をするから」
私は唇を尖らせて、拗ねた声を出した。こうすれば、いつだってロックは慌てて私のご機嫌をとるのだ。
「そうか。返事をしない事で消極的に関係を絶とうとしたのは裏目にでたわけだ。僕がはっきり言わなかったから、妻を危険な目に遭ったんだ。反省するよ」
でもロックは、冷ややかな態度を崩さなかった。はぁっと溜息を吐く。
その態度に、不安がムクムクと大きくなる。ロックは今まで見た事のないような、怖い顔をしているんだもの。
「ねえ、どうしたの、ロック。そんなに怒った顔をしたら怖いわ」
わざと甘えた声を出しても、ロックの態度は変わらない。私は段々と焦って来た。
「じゃあハッキリ言わせてもらうけど、僕は君やジーンと二度会う気は無い。手紙にあった丸石事業への口利きも断るよ。事業に関わりたいのならキビリー商会に直接頼むといい」
「そ、それがダメだったからお前に、い、いや、君に口利きをお願いしに来たんじゃないか!」
お父様が悲鳴の様な声を上げた。
「ロック! ジーンが貴方を仲間外れにしたことは謝るわ。でも、私、ジーンとは婚約を解消したの。だから」
両手を組んで目を潤ませてジッとロックを見つめる。こうしたら、ロックはいつだって真っ赤になって照れていたわ。ジーンとの婚約も解消したと知ったら、こんな田舎女より、私を選んでくれるはず!
「君も、ジーンと一緒に仲間外れにしていたじゃないか」
「え?」
恐ろしい程平坦なロックの声に、私は演技を忘れて思わず引きつった声を上げた。
「……本当に優しい人ならね、マリー。ジーンが俺を仲間外れにして出かけようとしたら、彼の誘いに乗らずに一緒に残ってくれると思うよ。君はジーンを口で諫めてはいたけれど、結局一緒に出掛けていたじゃないか。楽しかった? お土産を受け取る僕の情けない顔を、嘲笑っていたのかな」
ヒュッと喉が鳴った。言い訳をしなくてはと口を開いたけど、何と言えばいいのか分からなかった。
だって、ロックはいつも笑って受け入れたじゃない。『僕の事は気にしないでいいよ』って。
「僕は君とジーンを大事な友だちだと思っていたけど、君たちはそうじゃなかったんだ。それならもういい。僕はこれから、僕の事を大事にしてくれる人を大事にするって決めたから」
ロックは冷たくそう言って、側に居た田舎女を抱き寄せた。
「……事業に関しては、カルドン侯爵家とキビリ―商会に一任しています。そちらへどうぞ」
ロックはそれだけ言って、私たちを断ち切るように背を向けた。田舎女がこっちを一瞥して、ロックに寄添う。
「ローラ、僕のせいで嫌な思いをさせてごめんね。お詫びに何でも欲しいものをプレゼントをするよ。王都で君に似合いそうな髪飾りを見つけたんだ。贈ってもいい?」
「贈り物は月に1つまでって決めたでしょ。お金があるからって、無駄遣いはダメ」
「そういう堅実な所も大好きだよ!」
ワザと聞かせる様ためか、2人の馬鹿っぽい会話が丸聞こえだ。周囲の侍女たちの生ぬるい視線から、これが2人の日常なのだという事が嫌というほど分かった。
何よ! 私がわざわざロックに声を掛けてやったって言うのに。
人の事を無視してイチャイチャするんじゃないわよ! 馬鹿にして!
怖い顔をした騎士たちに研究所から追い出された私たちは、仕方なくメルドの街に帰る事にした。
お父様は道中ずっと私に『お前の言う事を聞いてこんな所にまで来たのに、無駄だったじゃないか』と文句を言っていたけど、私はずっと聞き流していた。
もういいわ。私に言い寄っていたのはジーンやロックだけじゃない。彼らより多少落ちるけど、まだまだ役に立つ男はキープしているもの。大丈夫よ。
でも。
「自分の評判、知らないの? 男2人を手玉に取って友情を壊した挙句に1人は破滅させて、もう1人には逃げられたって」
キープしていた男の1人に会いに行ったら、そんな事を嫌悪感を隠しもせずに言われて、私はギョッとした。
「そ、そんなの嘘よ! 私、そんなつもりじゃ……」
「あの2人の間で、フラフラしてたのは事実でしょ? 悪いけど、君みたいな人と付き合うと、こっちの評判も落ちるし、下手したら勘当されるから、もう近づかないでくれる?」
どの男もそう言って、私から離れて行った。結婚どころか、私と話してくれる人など誰もいなくて。お父様は私の悪評のせいで余計に店の客が離れて行ったって毎日怒っているし、お母様は他の奥様方から白い目で見られ噂に晒されて、心労で倒れてしまった。
どうして。どうして。
私が何をしたっていうのよ。ただ、誰よりも幸せになりたかっただけなのに。
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