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神獣召喚①

「ルーベルさん!すごい。格好いい。最高です!」


「聖女見習い。興奮しすぎだ。」


興奮状態のエリカは鼻からフンフンと鼻息を出していた。その様子をみてルーベルは落ち着いて声のトーンで答えるが、やや耳が赤くなっている。


治療室に入ってきたルイ、アクト、アクス。

ルイとアクトは負けないと言わんばかりに競争するようにそれぞれの神獣を召喚した。


「エリカみて~」


「エリカ、僕の神獣もみて!」


先に神獣を召喚したルイが子供サイズの龍を見せてきた。子供の龍とは言え、エリカよりも大きいサイズだった。続いて召喚したアクトが負けまいと鷹を見せてきた。アクトもまだ子供のようで大人の鷹に比べると小さかった。


「わぁ〜すごい。可愛い!!」


元々動物好きのエリカにとって小さい鷹は頬ずりしたくなるほど可愛いと思ったし、龍もエリカより大きかったけど、大型犬だと思えたし、つい背中に乗ってしまいそうだった。

さらに興奮してしまったエリカは鼻息をブンブン出しながら、ぴょんぴょん跳ねていた。

ルーベルはエリカの気が自分の馬から離れたすきに患者を運んだ。

この中で一番年齢が上のアクスだけがその様子をみてクスクスと笑っていた。


「そろそろ自分たちの持ち場に戻りましょう。」


「え?嫌だ~嫌だ~!!アクスさんもう少しだけ。」


エリカの初めてのわがままにみんなびっくりしたけど、神殿で子供が子供らしい姿で表現できる機会はほぼないので、もう少しこの時間を楽しませてあげたいと思った。

アクスとルーベルがお互い目を合わせた後、小さく頷いた。


「ミリスが迎えに来るまでなら…」


「ルーベルさんありがとうございます。」


ルーベルの神獣が患者を待合室に降ろして戻ってきた。

エリカは馬の背中に乗ってみたり、鷹を手の上に乗せて、小さな頭を指でなでなでしたり、龍の羽を触ってみたりと神獣との時間を存分に楽しんでいた。


突然聖騎士は4人いるのに神獣が3匹しかないと気づいたエリカはアクスを振り返って見つめた。大きく眼を開けキラキラ輝く視線を送り、両手を握ってお願いする。


「アクスさんも神獣召喚できるでしょう?見せてください~」


キラキラと輝く目線に負けてしまったアクスも神獣を召喚してくれた。

アクスが召喚したのは、ハムスターだった。


「ハムスター?!可愛いです。」


「神獣召喚はそれぞれの役割というか、その人に必要とされる神獣が召喚される。」


「・・・?」


「偵察の仕事が多いからか召喚時、ネズミがでてきた。アクトは連絡かかりと役割のせいか鷹が召喚されたし…」


アクスが説明をしながら、ルーベルとルイの方をみると続けてルーベルが話をした。


「そうだね。僕は普段移動が多かったので、馬が召喚された。」


「なるほど、みんな必要に応じて召喚されたんですね。ならルイさんは何で龍??」


「知らない。格好いい神獣を召喚したいと思ったら龍が召喚された。」


「えん?そんなこともありますか?」


「ちょっとイレギュラーらしい。

こんなこと神殿でも初めてのようで、当時騒ぎになってたよ。ハハハ~」


「そうなんですね!」


じゃれてくる神獣たちと遊びながら、エリカは考えた。

自分に必要な神獣が召喚されるなら、治療水の運びや連絡とかに悩むことはなくなりそう。

神獣召喚どうやるのか聞いてみようかな?

いやいや。ここには監視役もいるわけだし…

やっぱりここはアクスさんかな?

監視役が今からルイさんに交代されるし、そろそろミリスも来る頃だし、

図書室で神獣召喚の本があるのか探してみるのがいいのかな?

あれこれ考えていると、ルーベルが言ってきた。


「ちなみに神獣召喚は聖騎士のみ許可されているから、召喚しようと考えたら駄目だ。」


「えん?何でですか?」


「ルールだ。」


「何のルール?」


「まだその辺は聞いていないのかな?後でミリスに言っておく。」


***


トボトボ。

力のない足取りをみた、ミリスがエリカの頭をなでなでする。

エリカが神獣召喚に興味を持ったことを先ほどルーベルから聞いたので、その気持ちが理解できた。自分に忠実で可愛い神獣召喚をしたいのは聖力を持っている人であれば、みんな持っている欲求だ。

ミリスも小さい頃、初めて神獣をみた時は召喚したいと強く思う時期があった。

だから今のエリカの気持ちを分かっているつもりだった。


「ミリス何で神獣召喚は聖騎士だけに許されているの?」


「そうね。まず聖力を持っている人と持っていない人がいることは知っているよね?」


「うん。」


「聖力を持っている人の全員が同じ力を持っているわけもはない。

そもそも神獣召喚が可能なレベルの人が少ない。聖騎士の中でも特別に力の強い人のみが召喚が可能なの。


しかも神獣を召喚して契約するということは常に自身の3割の聖力を使っていることになるし、神獣を召喚して使う時は5割以上の力を使うこともある。


じゃあ〜これはもう知っていると思うけど、聖力を限界まで使ってしまうと倒れるでしょう?それを精神力でカバーしながら使いすぎると死んでしまう。

聖騎士は守る、戦うために聖力を使う。だから神獣を召喚しても大丈夫。エリカは聖女見習いで、人を治すために聖力を使う。神獣は治療には向いてないから、もしエリカが神獣を召喚して契約してしまうと、どうなると思う?


今は治療している人数の2/3しか治療ができなくなるんだよ?

今後聖女になるエリカは無駄に力を使いたい?」


うん!

もちろん。

無駄だろうが、何だろうが。神殿で何人治療するかは大事な問題ではないんだよ。

そう思っていたが、口では違う言葉が出てしまった。


「…いいえ。」


あぁぁぁ!!以前の主であるエリカの本能、いいえって言いたくなかったのに!

無駄でもほしいと言いたかったよ。


まだ落ち込んでいるようにみえるエリカの頭を撫でては、部屋に向かった。

実際、エリカは落ち込んでいた。

たまに自身の体を制御できない元エリカの本能に負けたことに…

今回も私は負けたと心の中で嘆いていた。


何も言わず、後ろに付いて来ているルイは何だか不満げな顔でミリスとエリカをみていた。



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