試しに新たな魔法薬を開発してみる
テオドール先輩卒業
「さて、次はどんな魔法薬を開発するか…」
うんうんと頭を悩ますオスカー先輩。私は期待を込めて提案をする。
「あの、オスカー先輩」
「どうした」
「形の無い不定形のものに、形を与える魔法薬を作りたいです!」
マノンにとりあえずの身体を与えてあげたい。だから、オスカー先輩に協力して欲しい。…家の恥になるから、言えないけれど。
「形の無い不定形のものに、形を与える…聞いたことがないな。だが、なんの役に立つ?」
「えっと…使い魔の作成とか…」
「なるほど。確かに使い道としては妥当だな」
使い魔とは、文字通り人が使う魔物。といっても、例外はあるが通常は野生の魔物とは全く違う、魔法で生み出した生物であることがほとんど。たまに野生の魔物を使役する猛者もいるらしいけれど、通常は自分の魔力で生み出した自分の魔物を使役する。その方が逆らわれる危険がないから。
「よし、やってみるか。だが、俺一人では難しそうだ。ミレイ、マチアス、テオドール。手伝ってくれ」
「なになに?オスカーがヘルプ要請なんて珍しいね」
「オスカーはいつも一人かミレイと組んで魔法薬作るもんな。そんなに難しい魔法薬か?」
「凄く難しそうだ。先生も暇なら、自分の存在を消そうとしてないで手伝ってくれ」
「ちっ…結局こうなるのか。先生は好きで暇してるわけじゃないんだぞー!」
イレール先生が可哀想なことを口走るのを無視してオスカー先輩が話し出す。
「不定形のものに形を与える魔法薬って可能だと思うか?」
「なんだそりゃ」
「聞いたことがないけど…先生、どうなんですか?」
「今まで一度も聞いたことがない。逆に言えば、発明出来ればかなり脚光を浴びる可能性がある。夢のある魔法薬開発だな。まあ、その分かなり難しいとは思うが」
「そんなに難しいんですね…」
ということで、頼もしい先生と先輩方と一緒に毎日部室に通い詰め、あれやこれやと使えそうな薬草を片っ端からミリ単位で調整して調合しまくり、その過程で様々な新しい魔法薬を開発しては発表しながら、気付けばテオドール先輩の卒業間近になっていた。テオドール先輩は、なんと今までの様々な新しい魔法薬の開発、発表の功績で卒業に必要な単位を取ってしまったらしく、私達より先に部室に来てイレール先生と二人でさらに不定形のものに形を与える魔法薬の開発を進めてくれていた。
「ミレイ。今までのトライアンドエラーの結果、理論上はこれが俺達の目指した不定形のものに形を与える魔法薬の完成形になるはずだ。早速その硫酸を浴びせて溶かした金属に魔法薬を掛けて見てくれ」
「はい、テオドール先輩。…えい!」
結果は…。
「…やったー!」
金属は元の形を取り戻していた。
「すごい、これこそ世紀の発明だ…!今度こそ先生は学会で引っ張りだこになるはずだ!ありがとう、ミレイ、テオドール、オスカー、マチアス!お前達は自慢の生徒だ!」
「先生は調子が良いなぁ…あと、ちゃんと俺達の名前を載せろよ?」
「もちろんだとも!」
「これでまた単位がもらえるな。俺もう要らないけど」
「テオドール先輩、今までありがとうございました。最高の発明でした!」
「テオドール。俺はあんたを尊敬する。今までありがとう」
「テオドール先輩。またいつでもOBとして遊びに来てよ。僕達、待ってるから」
「おう、ありがとうな!」
「…テオドール。先生は本当にお前達が誇らしい。どうか、爵位を継いでも、この経験は忘れないでくれ」
「ん。先生こそ、俺の功績を忘れるなよー?」
「もちろんだ!」
「先輩。これ、私達からの気持ちです」
花束を渡す。先輩は一瞬涙ぐんだものの、すぐにいつものカラッとした笑顔で笑った。
「俺こそ、尊敬する先生や、可愛い後輩達に恵まれて幸せだ!ありがとうな!」
そうして、先輩は卒業を迎えた。
さて、マノンに新薬は効くのか?




