私の願いを叶えるために
「あれ?ルカちゃん?」
ルカが家を出て大分過ぎた頃、目が覚めたアカリ。ルカがいないのに気づいて、少し寝ぼけつつもベットから降りて、うーんと背伸びをする
「リビングに行ったのかな?」
と呟きながら、机にいたヒカリにも声をかける。まだ本の姿に、ちょっとムッと怒って顔になったアカリ
「ねぇ、ヒカリ。起きてる?」
話しかけても、本のまま動かないヒカリ。アカリが、はぁ。とため息ついた時、ヒカリが本からいつものネコのような姿に変わって、ポツリと呟いた
「私は、スズだけじゃなく、たくさんの人達と本を書き続けていた……」
急に重い雰囲気で語り始めたヒカリ。やっと話はじめたかと思えば、暗い声のヒカリに戸惑うアカリ
「えっ?どうしたの……?」
そっとヒカリに触れると、突然アカリの部屋が、ぐらんと揺れた。揺れた勢いで、足元がよろけペタンと座り込む。そのままヒカリを抱いて、辺りをキョロキョロと見渡していると揺れが収まり、ゆっくりと立ち上がっていると、アカリの部屋にいたはずが、今、目の前に見えるのはヒカリの本棚。立ち上がるまでの一瞬にして、景色が変わっていた
「ここ……。ヒカリの本棚じゃ……どうして?」
驚き慌てるアカリに抱かれていたヒカリが、またポツリと呟き、語りはじめた
「たくさんの人達と出会って別れて……書けなければ、二度と会えないと知ったの……」
アカリから離れて本棚の前に立つヒカリ。そのヒカリが話した内容に、アカリがグッと息を飲む
「それでもみんな、私の願いを叶えるため書き進めてくれた……」
振り返りアカリを見ながら叫ぶヒカリ。いつもと違うヒカリの様子に少しずつ後退りするアカリ。更にヒカリが怒り悲しむ声で叫び続ける
「けど……!誰も叶えられなかった!スズも!きっとアカリも」
「私も……でもヒカリの願い……私、知らないよ……」
「あれ?ユイさんからだ……」
ルナと一緒にご飯を食べていたルカ。あまり来ないユイからの着信に不思議そうな顔をしていると、ルナの携帯も着信音が鳴った
「こっちもヒナタから電話が……」
二人とも携帯を持って、不思議そうな顔をする。ルカが先に携帯の着信を取るとすぐ、人々の騒がしい声が聞こえてきた
「はい。ユイさん、どうしましたか?」
「ルカちゃん!今どこ!」
ルカの声を聞くなり電話越しからユイが叫ぶ。その後ろでは、まだ騒がしい物音が聞こえている
「えっ?えっと……家でお母さんと会ってて……」
「大変なの!今すぐルナさんと本棚に来て!」
「……なにかあったんですか?」
ルナもヒナタからの電話で険しい表情をしている。ユイとルナの様子から、ただ事ではない雰囲気を感じて戸惑うルカ。その間も電話口からユイから叫び声が聞こえている
「アカリとヒカリが……とにかくルカちゃん、急いで本棚に……!」




