悲しみ迷いは、温もりでほどいて
「もうページ少ないね……」
スズの家から帰ってきた日の夜、今日はノドカとミツキは仕事のため、二人で夕御飯を食べている。ヒカリはあれから本から戻らず、ずっと塞ぎこんでいる
「誰も書き終えられなかったっていってたけど……」
夕御飯を食べ終えたルカが、おやつのプリンを冷蔵庫から三人分取り出すと、リビングに移動して、アカリと一緒に食べ始める
「ヒカリ、おやつ食べないの?私とルカちゃんで食べちゃうよ……」
とアカリが話しかけても、無反応なヒカリ。しばらくヒカリからの返事を待っても、ずっと本の姿のまま変わらず時間だけが過ぎていく
「ずっと無視だね……」
「もういい。ルカちゃん、食べちゃおう」
アカリが怒った様子でヒカリの分のプリンを取り、ルカと半分にしても無反応なヒカリ。二人ともヒカリを見ながら食べていると話が途切れて、リビングが静かになった。沈黙が続くなかで、ルカがふとスズの家での出来事を思い出して、話はじめた
「スズさんでも書けなかったんだよね……」
ヒカリを見ながらポツリと呟くルカ。アカリが小さく頷いて、ルカの話に返事をした
「うん……そう言っていたね」
「でも、どこまで書いたのかな?」
「そういえば、そうだね……。最後のページまで書いたのかな?」
アカリがそう話すと、また静かになったリビング。そのまま無言で、おやつのプリンを食べ終えてしまった二人。結局ヒカリは戻らないまま、おやつの時間が終わってしまった
。アカリがカチャカチャと音をたてて、食器を片付けていると、突然ルカがアカリの手のつかんだ。食器を落としそうになって慌てるアカリに目もくれず、涙声のルカがアカリに叫ぶ
「アカリちゃん!やっぱり本を返そう!カグヤさん達に言えば今からでも、きっとどうにか……。スズさんのように、アカリちゃんも居なくなっちゃうかもしれないんだよ!私……私……」
「ルカちゃん、大丈夫だよ。心配しないで」
ルカの心配をよそに、笑って話すアカリ。泣き顔のルカをぎゅっと抱きしめて、気持ちを落ち着かせようとする。だが、明るく話すアカリに、余計に泣いてしまうルカ
「どうしてそんな笑っていられるの?まだヒカリの願いだって分からないのに……」
「それはね……」
と、ヒカリを持って椅子から立ち上がると、パラパラとページをめくりはじめたアカリ。慌ててルカがアカリの腕をつかんで止めようとする
「待って!書かないで!」
止めるルカの声もむなしく、少しだけページを書いたアカリ。すると、二人の前にスズが現れて、二人に向かって微笑んでいる
「これはね、スズさんの思い出……」
とアカリが話していると、スズがアカリを抱きしめた
「アカリちゃん……」
ルカが心配そうに見ていると、アカリを抱きしめていたスズが少しずつ消えてく。いなくなると、まだ本のまま変わらないヒカリをぎゅっと抱きしめた
「ヒカリ、あなたの願い叶えるから……もう少し待っててね」




