ここは見知らぬ本の世界
「本の返却ですか?」
本棚の受付の女性に、会って早々質問されたアカリ。急な質問にあたふたと戸惑う
「えっと……違います。見学です」
とアカリの返事を聞きながら、受付に置いた本になっているヒカリの姿をチラッと一瞬見た後、手元の紙に書きはじめた受付の女性。書き終えると側にいたユイとミナモにも声をかける
「そちらは?」
「付き添いです。こっちは許可もらってると思うけど」
と、ユイがルカの方に指をさす。一瞬ビクッとするルカに、女性が一瞬見た後、手元にあった一枚の紙をルカと交互に見て確認している
「ルカさんですね。ルナさんより、見学許可書が提示されていますね。見学は可能です」
受付が話した内容に驚くアカリとルカ。そんな二人に気にせず、ルナからの許可書にサインを書くとルカに手渡した
「お母さんの名前……どうして?」
受け取った許可書に書かれている名前にうろたえるルカ。
アカリが横から許可書を見て、驚いた顔をしている
「ほら、二人とも行くよー」
いつの間にか出入り口に移動していたユイ達が、受付に立ったままのアカリ達を呼びかける
「あっ、はいっ!」
慌てて後を追うアカリとルカ。受付を出ると、アカリ達が知らない光景が広がっていた。始めてみる世界に、不安で手を繋いで辺りを見渡し歩くアカリとルカ。さくさく進むユイ達に置いていかれないように進んで、見知らぬ文字で書かれたお店や人々の雰囲気が見れずにいた。しばらく歩いて、受付があった場所も見えなくなった頃、ユイ達が見たことのない不思議な建物の前に立ち止まった
「ここは、新書の部屋。書き始めたばかりの本が集まる部屋で、大体の人が使える魔術が集まることが多いの」
リリの説明を聞きながら、扉を少し開けて覗き込むように見る。大きな本棚が部屋中に溢れ、人や本があっちへこっちへと、忙しそうに移動していた
「アカリの部屋はここじゃないから行くよ」
ユイに諭され、慌てて部屋を後にする。建物の回りには、ベンチに座って本を読んでいる人、広場では本を持って魔術の練習をする人、花壇で花を咲かそうとしている人など、あちらこちらで、本を頼りに動いている。しばらく歩いていると、先程の新書の部屋に似たような建物に着いた
「ここは、古書の部屋。ほとんどの本がここに集まるの。リリやモナカ、カグヤの本もここに本棚があるよ」
ユイが説明をしながら扉を開けると、さっきの部屋よりも、はるかに大きい部屋。天井も高すぎて見えず、奥行きも見えない本棚と本が溢れる部屋で、たくさんの人、本がこちらでも忙しそうに動いている
「僕、ここが広すぎて、たまに迷子になるんですよ」
と苦笑いで話すミナモの話も上の空。キョロキョロと部屋の中を見渡すアカリとルカ。階段を歩くことなく本を片手に、会話をしながら浮いて進む人達に見入っている
「そう広すぎるから、私達の本棚を見るのは、また今度ね」
再びユイに諭されて、部屋を後にして、更に奥へ奥へと進んでく。人も少なくなって、話し声も聞こえなくなってきた頃、二つの建物と同じ、でも古びた建物が現れた
「ここがヒカリの本棚がある部屋。主に面倒くさい本が集まる所」
と話すリリ。さっきまでとは違い、扉を開けた時ギイッと軋む音が鳴った
「魔術一つだけで本を書き終えてしまった魔術や、独特すぎて書いた本人にしか使えない魔術が集まる部屋で、あまり人が入ることはない部屋なの。だから、少し埃っぽいわね」
薄暗い建物の中を恐る恐る歩いていく。誰もいないのか、アカリ達の足音だけが響いている。進む度に静かさが増して、緊張感も増えてく中、たくさんあった部屋を過ぎて、部屋の奥、ポツンと孤立された部屋に辿り着いた。案内していたリリが、ふぅ。とため息ついてゆっくり振り返り、ヒカリを見た。視線を感じて目を背けるヒカリ。リリがユイの肩に移動して乗ると、先頭がアカリに変わって、その立ち止まった部屋の中へと、そーっと歩いていく。後を追うように部屋に入るリリがアカリに伝える
「アカリ。ここがヒカリの部屋よ」




