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#2 金鉱山採掘任務

「さあ、野郎共! 遅れるなよ!」

「ら、ラジャー!」


 フレイマーが入団早々団長を務める傭兵団の、元締めたるクラックス傭兵団の長・アルマ・クラックス。


 アルマの乗る唯血巨人は、凄まじい速さで走っている。


 ついて来れない者は去れ、とでも言いたげだ。


「さあ、俺たちも遅れないように!」

「くっ……待ってくれ!」


 その後に続く唯血巨人たちは、フレイマー率いる傭兵団員たちだ。


 さすがにペット達とリシリーは、今クラックス傭兵団の天幕で待機させている。


「くっ、追いつくのがやっとだ! さすが、フレイマー・ボーンか……」


 ヨハンは自身のはるか前を走るフレイマーの乗機を、羨ましげに見つめる。


 アルマ率いる元締めの傭兵団と、その傘下のボーン傭兵団の唯血巨人は。


 いずれも、ヘルガーディアンハウンドの卵が動力源である。


 皆、卵殻の鎧を纏った狼男のような形だ。

 その狼男型唯血巨人たちは、皆四つん這いの状態で。


 一斉に駆けて行く。


「さあ! そろそろ問題の鉱山地帯、その前の草原だ!」


 アルマは叫ぶ。

 そう、この任務においてはこの草原が関門だ。


「! クラックス団長、獣人の騎獣遊牧民が多数接近して来ます!」

「うむ……やはり奴らか!」


 アルマは部下の報に、顔を曇らせる。

 生身であっても強力なモンスター達を乗りこなせる、獣人の騎獣遊牧民族。


 唯血巨人を操る傭兵団も、その巧みな動きに翻弄された者たちは数多屠られて来た。


 無策のままに仕掛けていい相手ではない。


「……総員、散開! 各傭兵団にて騎獣遊牧民族を迎撃せよ!」

「ラジャ!」


 アルマの命令を受けたフレイマーは、ヨハン達団員を率いてクラックス傭兵団本隊から離れる。


 一挙に全滅を避けるため、まずは散らばる。

 ありきたりではあるが、成功率は低くはないやり方である。


「ぼ、ボーン団長! ぜ、前方から騎獣遊牧民が!」


 ヨハンではない別の団員が、叫ぶ。

 果たして、その目の先には。


 地を走るリザード系のモンスター・ソリッドアーマードリザードを駆る、仮面を付けた獣人たちが。


「ようし……アルマ団長! 本隊はそのまま金鉱山に突撃して下さい! 俺たちボーン傭兵団は、この草原で奴らを食い止めつつ後を追います!」

「そうか……分かった!」


 フレイマーの言葉に乗機の頷きを返し、アルマは本隊を率いてそのまま突撃する。


「さあて……ヨハン、ちびってないか!」

「は、はあ!? な、何言ってんですか! そんなこと!」


 フレイマーからの突然の振りに、ヨハンは乗機の中で真っ赤になる。


「今に見てろよ! あの借金卵塗れめ……」


 ヨハンは、静かに毒づく。


「……よし、総員前進! 敵を撃滅するぞ!」

「応!」


 フレイマーの呼びかけに、ボーン傭兵団は突撃する。


 ◆◇


「グルル! 族長、人共の木偶が! 突撃して来ますグルッ!」


 騎獣遊牧民の先鋒隊長が、後ろの族長に告げる。


「ガルルッ! ……よし、野郎共! 木偶共を蹴散らせガルルッ!」

「応!!」


 族長は高らかに叫び、背後からついて来ていた部下らを自身の両翼に、横一線に並ばせ。


 そのまま、走る。

 固い鎧を備えたリザード種が並走するその姿は、さながら動く城壁である。


「だ、団長! あいつら、横一列に!」

「ああ……どうやらそうそう簡単には勝たしちゃくれないか〜!」

「いや、感心してる場合じゃないから!」


 ヨハンが危機感を伝えるが、フレイマーはお気楽な声を出している。


「まあ大丈夫だ……皆! ソリッドアーマードリザードの、隊列の切れ目を狙え! ヘルフレイムを撃ちまくるぞ!」

「了解!」

「り、了解!」


 しかしフレイマーは、真顔になり。

 そのまま団員たちに命令する。


 命令を受けた、四つん這いの狼男型唯血巨人たちは。

 走りつつ遠吠えとともに、火炎弾を放つ。


「グルルッ! ぞ、族長!」

「ガルルッ、怯むなガルッ! 一歩も引くなガルッ!」


 騎獣遊牧民の先鋒隊長は、大いに揺らぐが。

 族長は怜悧にも、隊を鼓舞する。


「団長!」

「突破は難しいかな……だったら、せめて分断だ!」


 フレイマーも、負けじとばかり。

 尚も火炎弾を、隊列の切れ目に喰らわせて行く。


「グルルッ、グルッ!」

「今だ! 皆、それぞれ攻撃中の隊列の切れ目が揺らぎ次第敵部隊を分断、各個撃破せよ!」

「り、了解!」


 ボーン傭兵団の攻撃に、騎獣遊牧民の隊列は所々に綻びを生じ。


 それらを狙い、フレイマーは逆に遊牧民の隊を攻めさせる。


「グルルッ、ぞ、族長!」

「ガルルッ! ……おのれ、人間風情がガルッ!」


 両目で攻め寄せるボーン傭兵団を捉え。

 族長は、怒り心頭となる。


「ガルルッ、こうなれば……改血機(トランスブリーダー)、起動ガルッ!」

「グルルッ! な、族長……」


 しかし、この族長の言葉には。

 先鋒隊長が驚く。


「早くするガルッ! さあ!」

「グルルッ……了解! 改血機、起動グルッ!」


 先鋒隊長は族長に押しきられ。

 騎獣たるソリッドアーマードリザードの鞍に備えられたレバーを、手前に引く。


 その瞬間。


「ぐっ!」

「くっ! ま、眩しい! ……これは!」


 遊牧民の騎獣らは、一斉に光を放つ。

 その有様に、フレイマーの傭兵らは目が眩み進撃を中止する。


 そうして、騎獣たちは隙ありとばかりに。


「なっ!」

「あれは……まさか、また改血機か!」


 フレイマーは驚く。

 たちまちソリッドアーマードリザードの背中からは、無数のトゲが生え。


 先ほどまで従順さを感じさせていたその穏やかな目は、爛々と輝き。


 口からもより鋭い牙が生え、世にも恐ろしい咆哮を発する。


「だ、団長あれは!」

「ああ……改血機だ!」


 ヨハンの言葉に、フレイマーは歯軋りしながら答える。


「ガルルッ! さあ、人間どもよガル……今こそ、目にもの見せてくれるガルルッ!!」


 族長は俄然、勢い付き。

 再び同胞らに、突撃を命じる。


 が、ソリッドアーマードリザードたちは、先ほどの統率の取れていた動きとはうって変わり。


「がああ!」

「ギリリッ! ぐうっ!」


 騎乗している獣人らなどお構いなく、それどころか邪魔者を振り落とそうとしているかのような勢いで。


 大きく暴れ、激しく乱れた動きでフレイマー傭兵団に襲いかかる。


「グルルッ! ぞ、族長! 仲間たちが」

「ガルルッ、構わんガルッ! 人どもを屠れるならこの程度!」

「グルルッ! ぞ、族長おグルルル-!」


 自らも振り落とされまいと、必死になり族長に懇願する先鋒隊長だが。


 たちまち騎獣の背中の棘に刺さり、その叫びは断末魔と化す。


「ガルルッ、もう許さんガルッ! さあさあ……死ぬガルルッ!」


 族長は、何と凶暴化したソリッドアーマードリザードを乗りこなし。


 そのまま仲間を屠った他の個体らを率いて、突撃する。


「ひ、ひいい! 団長!」

「ヨハン……皆! 皆は金鉱山に後退しろ!」

「え……? だ、団長!」


 怯える団員たちを、尻目に。

 フレイマーは言うが早いか、乗機たる狼男型唯血巨人を駆り。


 そのまま凄まじい勢いで、凶暴化したソリッドアーマードリザードの群れへと突っ走る。


「団長!」

「何度も言わせるな! 早く金鉱山に行け! こいつらは俺一人で引き受ける!」


 背後から響いたヨハンの声にも。

 フレイマーは素気無い返事をし、尚も突っ走る。


 そのまま手をかけるのは、成長ボリュームのレバー。

 そう、フレイマーは。


「……悪いなおやっさん!」


 ―― いいか、もう聞き飽きたと思うが……金は返しても、卵は孵すなよ!


「……約束、守れそうにない!」


 一瞬は迷うが。

 結局、限界まで引き上げる。


 再び、卵が孵ってしまう。


「ガルル……何だあれはガルッ!」


 騎獣遊牧民族族長が、驚いたことに。

 フレイマー機は狼男型から、真正の狼そのものといった形になる。


「さあて、卵は孵しちゃうから……ひとまず、金を返すべくまだ生き残らせていただきまーす!」

「な、何い! ガルッ!」


 族長には理解できない言い方で、フレイマーは高らかに宣言し。


 改めて、狼型唯血巨人にて突撃する。


「ガルル……飛んで火にいる夏の虫ガルッ! 人ごときがあガルッ!」


 族長は眉をひそめ、フレイマー機を睨み。

 ソリッドアーマードリザードの群れを、差し向ける。


「ああ……来い! 最低族長め!」


 フレイマーは、仲間の命を顧みない族長への怒りを溢れさせ。


 乗機の狼口より火を滾らせ、高速で動き回る。


「がああ!」

「ぐうう!」

「な、何だとガルルッ!」


 族長が、驚く。

 勢い付いたフレイマー機は、瞬く間に族長の騎乗する以外のソリッドアーマードリザードを、ひっくり返して行く。


「ガルルッ……小癪なあ!」

「はああ!」


 族長もフレイマーも、互いに引かぬとばかり。

 ぶつかり合う。


「ガルルッ!」

「うおお!」


 フレイマー機は前脚を振り上げ。

 そのまま遠吠えを放ち、炎を滾らせる。


 族長も、騎獣をフレイマー機に迫らせ。

 たちまちゼロ距離となった両者は、一騎討ちとなる。


 その、行方は――


「ガルルルー!」

「ぐうう! ……ふん!」


 フレイマー機の爪が、騎獣ごと族長を貫き。

 族長の騎獣の棘は、乗機ごとフレイマーを貫く。


 そう、相討ちである。



「や、やった……こ、れで……ん!?」


 フレイマーは務めを果たした喜びに浸りつつも、痛みに悶える。


 が、すぐに敵族長のおかしな様子に気づく。


「ガルル……よくも、やってくれたガルル! こうなれば……俺自身を、この改血機に……」

「や、止めろ!」


 フレイマーは族長に叫ぶが、声にならない。

 たちまち族長は、騎獣の鞍を引き剥がし。

 その下に空く穴――改血機の中へと、入って行く。


 すると、倒れ込んでいた族長の騎獣・ソリッドアーマードリザードは起き上がり。


 たちまちその額の鎧は剥がれ落ち。

 中からは、先ほどの族長を思わせる上半身が生える。


「ガルルッ……ガルルル!」


 新たなソリッドアーマードリザードは、立ち上がり。

 そのまま、走り出す。


「くっ……あの方角は金鉱山の……止めろ!」


 フレイマーは、ソリッドアーマードリザードを止めようとするが。


 その身体は、傷つき動けない。


 ◆◇


「くっ……このまま、死ぬのか……? リシリーやクウマたちにご飯もやれない内に、借金も返せない内に……?」


 フレイマーは、自問する。

 しかし、このままでは本当に――


 と、その時である。


「キュー! フレイマー、大丈夫キュー!?」

「え……? り、リシリー!」


 何やら仰向けに倒れ込んでいるフレイマー機の装甲上に、何かが落ちた気配がしたかと思えば。


 それは、リシリーだった。


「今、行くキュー!」

「ま、待てよ! どうしてここに……かはあ!」

「キュー! フレイマー!」


 問いを口にするフレイマーだが、それにより腹の傷は広がってしまい血を吐く。


「助けるキュー! えいっ!」

「な……また卵殻機関の中に! リシリー!」


 リシリーは、フレイマーの静止を振り切り。

 コックピットのフレイマーの背後の装甲を開き、勝手に卵殻機関に入り込んでしまう。



 ◆◇


「!? お、お前ら! ソリッドアーマードリザードの群れはどうした!」


 金鉱山へと急ぐ、本隊。

 後ろから突然ボーン傭兵団がついてきたため、アルマは驚く。


「ん? ヨハン機はどうした?」

「は、はい! そ、それが」

「ひいい! 化け物来たあ!」

「な……な、何だあれは!?」


 アルマはしかし、更に後ろから追いかけて来る奇妙なモンスターに驚く。


 それはソリッドアーマードリザードの額から、何やら獣人の上半身が生えたような奇怪な姿。


 が、その時だった。


「!? こ、今度は何だ!」


 アルマが更に、驚いたことに。

 そこには、かなり損傷しながらもこれまた奇形の唯血巨人。


 その姿は。

 耳や後ろ脚が兎のごとく伸びた、狼そのものを思わせるもの。


「あの色みは……フレイマーか!」

「だ、団長!」


 アルマや団員たちは、かなり驚いている。



「リシリー……お前、どうしたんだ?」


 コックピットの中にて。

 フレイマーはリシリーの変わりように驚く。


 いつもなら、兎耳の獣人少女。

 おまけに口癖のごとく(実際口癖なのだが)キューキュー言っているのだが。


「フレイマー・ボーン……さあ、あなたの思いの丈をぶつけなさい!」


 卵殻機関の影響か、そこには兎耳こそ健在だが。

 凛々しい大人の女性になった、リシリーの姿が。


「ああ……そうだな、いろいろ突っ込むのはその後か!」


 フレイマーはリシリーの言葉に。

 乗機にてソリッドアーマードリザードを捕らえる。


「さあて……ヨロイトカゲ野郎! さっきお前が屠ったお前自身の仲間の痛み……倍にして、味わせてやる!」


 フレイマーは高らかに、言い放つ。


「ガルルッ! ……にん、げん、ごときガルルッ!」


 リザードの上半身より、怨嗟が返ってくる。


「なるほど……まだ口は生きてたか、それは罪悪感を禁じ得ないなあ!」


 フレイマーは、言葉とは裏腹に。

 たちまち乗機の口をガバリと開け。


 炎を滾らせて。


「はあああ!」

「ガルルルル! ……ガルルー!」


 そのままソリッドアーマードリザードに、噛みつき。

 牙により生じた傷から炎を注ぎ込み、爆発させる。


 かつて、騎獣遊牧民の先鋒隊長がそうであったように。


 上半身は雄叫びを、断末魔へと変えて果てた。


「はあ、はあ……これで、完了だ……」


 しかし、フレイマー機もフレイマーも、限界を迎え。

 倒れ込む。


「キュ、キュー……フレイマー!」

「ああ、リシリー……元に、戻ったんだな……」


 リシリーは、さして消耗した様子もなく。

 卵殻機関から抜け出し、フレイマーに心配そうに寄り添う。


「最期に、いいものが見れたな……」

「ふ、フレイマー! 駄目キュー!」


 フレイマーは、目を閉じ――


 と、その時。


「フ、フレイマー、見るキュー!」

「……え? ……痛っ、眩しい! ……皆……」


 急に乗機の装甲がひっぺがされ、光がコックピットに注ぐ。


 そこから見えるのは。

 ペットのモンスターたるフライングリザード、クウマ。


 それにイーグルヘッドレオン・フライングホースが。

「助けに来てくれたキュー!」

「そりゃ、どうも……」


 フレイマーは、力なく笑う。


「……借りだらけのあんたに借り作ったのは嫌だったからな! これは貸しにしとけよ!」

「ははは……そうだな、俺はやっぱり借りだらけが性に合ってるわ……」


 外では、イーグルヘッドレオンたちを連れて来たヨハンが目を逸らしながら言う。


 ◆◇


「……行っちまうのかい?」

「ええ……お世話になりました。」


 フレイマーはアルマに、ぺこりと頭を下げる。

 結局金鉱山の採掘任務は、大成功に終わった。


 が、フレイマーは例によって、ここを去るらしい。


「今回で得た金は莫大だ! 一重にあんたのおかげで……何なら、あんたにそれを全部やるし! うちがあんたの借金も肩代わりする! だから」

「ありがたいんですけど……気持ちだけでいいっすよ。この傭兵団、俺一人にかまけていられる程余裕ないでしょ?」

「うっ……いや! そんぐらいしてもあんたは手放し難い! 他には」

「いいんですよ。本当に。」


 アルマは、食い下がるが。

 フレイマーはまた、アルマにぺこりと頭を下げる。


 ◆◇


「キュー、ヨハンとお別れするの寂しいキュー……」


 クラックス傭兵団を、後にする道すがら。

 イーグルヘッドレオンの背中で、リシリーは名残惜しげに振り返る。


「まあまあ、リシリー! きっと、またいい出会いがあるさ!」


 クウマの背中で、フレイマーが笑う。


「キュー……い、痛いキュー! ヘルガーディアン(ハ  デ   )ハウンド()!」


 物思いに沈むリシリーだが。

 腕に噛みついてきたヘルガーディアンハウンド・ハデスに怒る。


 言わずもがな、結局卵はまた孵ってしまったのだった。


 名前は、ハデスに決まった。


「ハデス、ハウス!」


 フレイマーの一声に、ハデスは直る。



「さあて……また借りを返さないとな! さあ行くよ、皆!」


 フレイマーはクウマを促し。

 我先にと、先を行く。


「あ、待つキュー! フレイマー!」


 リシリーも、乗るイーグルヘッドレオンやその他のペットたちを率いて。


 フレイマーの後を、追いかける。


 ◆◇


「何? それは本当か!? 俺が、憧れの王女を独り占めできるって?」


 とある小国・アドン王国。

 王城謁見の間にて。

 王子マルダは目の前のフードの人物に問いかける。


 果たしてフードの人物からは、頷きが返る。


「で、でも……あの王女の国は中堅規模だ。うちみたいな国が挑んだ所で……ん?」


 マルダは渋るが。

 フードの人物はふと、自らのマントの裾をテーブルに翳し、かと思えば次にはめくる。


 それは何やらカタログのようだが。

 その内容を見て、マルダは。


「と、改血機(トランスブリーダー)!? な、何故お前が……あ、いや待ってくれ!」


 首を傾げるが、いらないならいいんですよとばかりフードの人物は。


 再びマントの裾をカタログに翳しかけたために、慌てて彼を止める。


「わ、分かった! 前向きに検討する……ふふふ、しかし! これで彼の国の王女が俺の物か……ふふふふ、はははは!」


 マルダは、高笑いする。

 フードの人物もそのフードの下で、密かに口角を上げる。


 こうして。

 新たに火種は、撒かれていたのだった。


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