再会2
「青柳さん!」
「はっ!んんぅ……、うん」
眠気と闘いながらも青柳さんは僕の背中にぐでっと覆いかぶさった
それから僕は青柳さんの両足を持ち、彼女が後ろにひっくりかえらないように気を付けてバランスをとりながら恐る恐る立ち上がる。
「おっも!」
思わず女性を持ち上げてそんなことを口走ってしまう。(繰り返しになるが青柳さんが特別重いわけじゃない、ただ単に人一人の重さを重いと言っているだけだ。人一人の重さを重いと思ってしまう非力な僕がいるだけで、体重の重い青柳さんがいるわけではない。)
二歩三歩歩くだけでもすでに足元はふらついており青柳さんのアパートまでこのまま運びきることができるのか不安になってきた。
「うーん、ふふ、少年の匂い……」
起きているのか寝言なのか、僕の後頭部からそんな青柳さんの声が聞こえた。念のために言っておくと今の僕は入浴後の状態だ、お風呂に入ってから散歩に出たのでにおいを嗅がれても何の問題もない。が、そんなことを言われると僕がこの前青柳さんとの別れ際に彼女にしたことが思い出され、とたん顔が熱くなり背中がむず痒くなった。
僕は、あんな、こんな、恥ずかしいことを……
死にたい、と今更ながら思う。
何とか、途中何度か青柳さんを道端に捨ててそのまま帰ってしまおうか、とそんな考えが頭をよぎったが、頑張って何とか青柳さんのアパートに到着した。
青柳さんは「ぐーぐー」と僕の後頭部に頭を密着させて寝ており。
僕は「はーはー」と青柳さんをかついだまま息を上げていた。
どうしよう、部屋、分かんない。
そして途方に暮れていた
この前青柳さんの部屋から出て行ったときには特に意識していなかったので僕がどの部屋から出たのかなんて分かるわけがなかった。もちろん部屋番号なんて見てもいない。分かるのは一階だったということだけだ。
「あ、青柳さん!」僕はとにかく青柳さんを起こそうとする。
「ん~、うん、うん。」しかし青柳さんはそう唸るだけで全く起きようとしない。
……どうしよう、この人ここに置いたまま帰っちゃおうかな……。
まぁ、冗談だけど
「青柳さん」「ぐーぐー」
……。
「青柳さん部屋わかんないんですって」「……いち、まる、……きゅー……」
喋った……
いち、まる、きゅー
どうやら部屋番号のことらしい
偶然にもその部屋の目の前にいた僕はとりあえず青柳さんを背中からおろして壁に背をもたれかけさせて座らせる。
「鍵……、バックの中開けますよ?」「ん~、うぅん、はい」
はい、と青柳さんはポケットから取り出したアパートの鍵を僕に差し出す。
……なんだかさっきからするすると、部屋の中へ僕を導くかのように青柳さんが動いてくれる。えらくなれた感じだ、おそらく酔っぱらって家まで送り届けられるという経験は今まで何度かしたことがあるのだろう。
この一連の流れがほとんど無意識のうちに行えるぐらいに……。
僕はそれを使って部屋の鍵を開け中に入る、青柳さんをずるずると引きずりながら。
また、来てしまった。
「ただいま」
青柳さんの代わりに僕はそう言った。
ここまで読んでいただき有難うございました!




