まずは親、兄弟、親戚一同にご迷惑と進捗報告の電話(UFO内から)
ヘリコプターからのライトが微動だにせず空中に停まっているUFOを必要以上に照らし続けている。
数機のTV局関係のヘリと、後方には自衛隊の軍用ヘリが待機していて、普通、逆じゃないのか?
とか、いつの間に位置が逆転したの、と突っ込みたくなったが、他にも一応、連絡しないと、みたいな妙に冷静な私がいて、どういう風な仕組みか全く分からないUFOの固定電話に次は東京都内に住んでいる弟にも電話をかけるだけかけてみた。
さっきの要領で弟の名前を言うだけで繋がる仕組みだ。
まずは自宅に電話する、そしてかけてから思い出して電話を切ろうとすると、弟の奥さんの遥子さんが出た。
参った、弟は夜の22時台はまだ仕事中で自宅には帰っていないのだ。そう思い出したが後の祭りだ。
参った、今までのように血の繋がった兄弟、妹でさえも、車のラジオごときで、パニくっていたのに、今度は血が繋がっていない、でも、義理の妹なのか結構複雑な立ち位置の人に説明しなければいけないのに、うんざりしたが、出てしまったのなら仕方がないので、諦めて、でも冷静に、勤めて冷静に明るい口調で声をかけたら、意外なほどそっけなく。
「大丈夫なの?家にいるの?まさか円盤の中?」
と開口一番に心配そうな言葉を頂いた。私はほっとするのと、同時に、これを、これを待っていたのです。
見たいな感じで、突然、目頭が熱くなってきたが、この状態で、40のおっさんが号泣しようが、何の解決にもならないことを思い出し、目頭を押さえながら
「うん、大丈夫、でさ、敬二はいる?」
と、私も意外なほどそっけなく、弟の敬二の名前を口に出した。
「まだ、会社だよ!おにいちゃん!で、これからどうするの?」
と、普段のように私をおにいちゃんといつものように呼んで答えてくれた。
いつも思うのだが、義理の兄貴になったとは言え、40過ぎておにいちゃんは恥ずかしい。しかも一様、義兄だ。
で、予想はしていたけれど弟は家には帰っていない、し、義理の妹の遥子さんの、まるで、日常のなんでもない、例えば、今から自宅に帰って何するの?
みたいな、とか、今度の日曜日は姪っ子のリサの運動会があるから、応援に来れる?
みたいな、凄く日常的で、グーな声質で受け答えしてくれるのが、こんな状態が一瞬、夢じゃないの?
みたいな感じで思わずUFO型地上30メートル上空マンションから夜景を観てますよ、気分に陥いらせてくれるような感じになった。
が、報道用ヘリからの強力ライトが私の目に直撃して、かなり眩しくなって、それと共に、やっぱりの現実だったんだ~の世界に戻されてしまった。
「これからって?今、TV中継している、多分、白く光るUFOなのかな、円盤の中にいるけど、今のところ大丈夫、一応、多分、宇宙人みたいな二人の外見は外人みたいな、と言うか白人の若い男女型宇宙人と言ったほうが合っているのかな、と一緒だけど、今のところ無事だから、大丈夫だからさ、このことを敬二にも話してくれない」
「何か、おにいちゃんのこと、その宇宙人のリーダーみたいな、テロとか、TVで言っているけど、本当に大丈夫なの?」
私の弟の嫁の遥子さんはTV中継を観ていてTVスタジオで真面目そうな男のアナウンサーが喋ったことを、リアルタイムで当の本人に質問した。
このUFOで観ているチャンネルと同じなのだろうか?
ニュースの音が、ここの部屋からのTVスピーカーからと受話器の奥のTVの音が一緒なのが偶然で不思議な感覚を私も味わったし、なによりも遥子さんも私から聞こえるTVの音にさぞ驚いただろう。
「いや、TVのは全部、と言うか、90%は嘘だよ」
と、ちょっと考えて100%はなんか間違っているような気がして、と言うか、私にも少しは責任はあるのかな~と、部屋のソファーに座り、考え込むように真剣に見詰め合っているオーランド系とキャメロン系をチラチラ見ながら、ちょっと弱弱しく言った。
「ま、とにかく、凄い状況になっているのには変わらないから、早いところ、自首するのか、捕らわれているのなら逃げるのか、早いほうが良いわよ!」
と、義理の妹、遥子さんにもっともな意見を述べられてどちらともなく受話器を置いた。