ホワイトハウス襲撃?事件?!
そんな昨夜のシュールな、それとも悪夢と言うべきか、仮に宇宙人白人外人型変身二人組みと名付けるとすると、の、二人は本当に私の家で昨夜、人類に対して旧約聖書の神が下す最後の審判の日、見たいな事を私がしていい、もっと言えば神のような、まさしく全能の神のような役割を
「工藤さん、お願いします」
みたいな状態でしたから、ある意味、本当だったのならもったいないことをしてしまったな~なんてことも考えながら、今は厳しい現実として池袋のハローワークへと職探しに、地下鉄有楽町線に揺られて、また憂鬱な現実の世界に戻ってしまった。
相変わらず午前の一〇時過ぎでも電車内は混雑していて、辛うじて私は座れたが、隣の若い男はシャカシャカとイヤホーンから音楽を漏らし放題だし、反対側のサラリーマンオヤジは足が短いくせに両足を思いっきり開いて座り、私の太ももにオヤジの太ももを押し付けてきている。
はっきり言って不快だ。
彼らはそして絶望するぐらい自分が他人に迷惑を掛けていることを何とも思っていないか、気付いてもいないのかもしれない。
ほんとに東京の通勤事情ほど、非人間的で殺伐とした空間もないものだとつくづく思えてしまう。
私が人類の審判だったら、と思わず考えてしまい、思わず苦笑いをしてしまった。
いつもの大混雑したハローワークの中は、職探しの人々でごったがいし、ここも気味の悪い空間を醸し出していた。
そういえば駅のキオスクの速報的チラシに『日本政府の隠蔽工作?実は減速しているGDP』とか『有効求人倍率のカラクリ!40代の人件費を無くそうとする中小企業の実態』など、暗いニュースが世の中を蔓延らせていた。
政府はこれ以上のリストラをさせない方針で政府というか、もともと我々の税金を使って社員の給料分を補填していたが、実際は企業内失業者の増加に歯止めがかからず、週休3日制を再び導入している工場や会社が続々と出てきた。
これでは実際、余剰人員を抱えた会社が多いから、とても就職など、それも40歳には人件費の問題もあり、どうせ採るなら若い人を、そして同時に人件費削減の究極な技術AI早期導入も、同時並行に行われ始めたので、再就職は茨の道としか言いようが無かった。
人の心を折るかのように、検索パソコン150台からは条件のかなり絞られた、と言うよりも年齢制限に近い条件や、採用されたとしても3ヶ月の試用期間が備考欄に記載されていた。
わたしよりも以前から検索している、わたしよりも年配な男は、半分諦めムードでタッチペンを使って画面とにらめっこしていた。
タッチパネルの画面には検索時間は20分というお知らせが5分間隔で流れて、余計、急がされた気分で自分がなんか就職マシーンのベルトコンベアーに乗っていて、自動的に処理されていく感覚を覚え、辺りを見渡してみた。
相変わらずハローワーク内では機械音の女性のアナウンスが3桁の番号をひっきりなしに流していて、係りの席に、また一人、また一人と入っては出て入っては出ていた。
こんな状況なのに政府はまた政権争いという、国民のためと名うっているが個人のための権力争いが、またまた始まったか?みたいにしか正直、私にはみえないでいた。
こんな出来合いの社会なんか潰れれば良いのに、こんなシステマティックな社会は一回チャラになればよいのに、なんて考えてしまう。
このどうしようもない閉塞感の中で、私は検索を止めて、ハローワーク池袋を出た。
今日も一日、ハローワークで時間が過ぎ、帰ったら帰ったで、書類選考のための履歴書と職務経歴書を自宅のパソコンで作るのが日課となっていた。
その日も夕飯を外で済ませてきて、ちょっとバラエティー番組のTVを見てから、パソコンに応募動機等の文面を打ち込んでいると、また玄関のチャイムが鳴った。
一瞬、嫌な予感がして様子を伺っていると賺さず催促のチャイムが鳴って、しょうがなく玄関に出た。
「あの~工藤さん居ますか?」
と、思い出したくもないアノ男の声がして、性懲りも無くまた来たのか?でも無碍に断ったなら彼らの恐るべきテクノロジーで、命の保障もない状況に陥らされるかも知れないと思い、イヤイヤながら玄関のドアを開けた。
やはり、当然のように彼ら二人は土足で私の家に入り、当然のごとく茶の間のソファーに座り、当然のごとく茶の間では靴は履いていなかった。
私は、また昨日の続きが始まるのかと思い、憂鬱な気分で、でもまた飲み物か何か入りますかと聞いてみたりしたが、二人とも結構です、とハモって断った。
「え~今日は、今日あったことを、工藤さんに報告しにやって参りました。実は、やはりといいますか、ちょっと難しい事態になりまして、出来れば、ここに今日あったことの映像がホワイトハウスの中とか外に配備してあった監視カメラで撮られた内容を見ながら説明したいのですが」
と、オーランド系はジャケットの内側からDVDを取り出し、私に渡した。
「はあ?ホ、ホワイトハウスって、あのアメリカ大統領が勤務している、あの、ホワイトハウス、ですか?」
「はい、勿論です、工藤さんに昨日、説明を受け、早速、我々は彼らにお伺いに行ったのですが」
「正直、我々が考えていた通りの、野蛮でお話にならないお出向かいを受けました」
キャメロン系はそう言って早くデッキに入れて再生しろというゼスチャーを交えてそう言った。
この二人が私の家に再訪しただけでも、正直うんざりしているのに、ホワイトハウス、とか、監視カメラとか、訳が分からないぶん、得体の知れない恐怖が湧いてきた。
そんなことを考えながらも、なぜか好奇心も無くは無く、急いでDVDデッキにDVDを納めると再生させてみた。
TVのモニターには音声無しの映像が映し出された。
まずは長い廊下を二人で横一列になって歩くオーランド系とキャメロン系二人を俯瞰で撮っている映像、でも一瞬で半透明になってしまう。
カラーだけれどもなんかモノクロのような画像だ。
なんか幽霊みたいな映像に警備の人も相当びっくりしただろうに。
続いて今度は、いきなりホワイトハウスの中推、大統領室の中と思われるだだっ広い、贅沢な空間と大きくて威厳のあるデスクに座る男、これは大統領ではないか?そこに降って湧いたように出現する二人、オーランド系とキャメロン系だ。
大統領室には他に二人ぐらいいたのかもしれない、一瞬、みんながきょと~んとしていたが、そのあと慌てて一人の男が銃を出して構えた。
「一応、冷静な態度で、極力怯えさせないように、静かな声で、用件をお話したのですが」
映像を食い入るように見ている私に、オーランド系は状況説明をしてきた。
「どこから来た?とか、お前らはなんなんだ?」
とか言って、こちらの話を無視した態度ですし、そんな緊迫した状態の映像から、今度は二人の後ろにあるドアがいきなり蹴破られたように開いて、シークレットサービスみたいなごっつい男達が入ってきて、抑えかかろうとした。
が、身体がそこから動かなくなって、へなへなと倒れてしまった。
「一体、このヒトに何をしたの?」
「一瞬、脳の中の神経回路をシャットダウンさせたっていうか、そんなところです、後遺症は無いですよ、気絶みたいなものかな」
オーランド系はそう説明した。
「全然、彼らは、大統領以下、誰も我々の話など聞こうとはしないですね」
「そう、武力鎮圧しか考えてないみたいです、それが次のシーンで」
キャメロン系がそう言っている刹那、何発かの銃弾がオーランド系とキャメロン系に打ち込まれていた。
当たった時の衝撃で彼ら二人の身体は後方に弱冠下がったりしたが、まるでゾンビのようにそのまま立っていて、普通にゼスチャーを交えて止めてくれ、みたいなことを言っていた。
「ほんと、参りましたよ!一応、ホワイトハウスの大統領直通の電話にも再三、電話したんだけど、相手にされなかったので、直接行こうと、最初は正面玄関から行こうとしたのだけれども、門番の黒い背広の人たちに阻まれるし、脅されるし、で、今度は今の地球用の物質で出来ている身体を半物質化して、直接大統領に会えば、少しは話が分かるのかな、とやってみたのですが」
「この様で終わってしまって」
オーランド系は面目無いというような表情で私を見た。
「やっぱり、最初は夢の中で会って、徐々に現実の世界で会わないと、大体、こうなるのよ!」
と、キャメロン系はオーランド系にそう付け加えた。
「やっぱりそうでしたね、工藤さんみたいに上手く理解してくれる人類は中々いませんね」
オーランド系にそう褒められても、素直には喜べなかった。
そして、なおも映像というか、監視カメラ映像は続き、今度は長い廊下を二人で歩く映像と、そして、あろうことか玄関を出たところではホワイトハウスの庭のすぐ上に巨大な、間違い無く私の家の上空に出現した円盤よりも、大きさにして10倍くらいの円盤がきっぱりと上空に静止していて、オーランド系とキャメロン系は二人同時に右手を上げて、それが合図なのか円盤の中央から円柱状の光が昔のSF映画さらがらのように二人に伸びてきて、二人はその光に包まれて上空の円盤へと浮かんで、吸い込まれていった。
そして、その後ゆっくりと横に移動したかと思うと、一瞬で消えてなくなってしまう映像で終わっていた。
これは、よく出来たTVのバラエティー番組か、ビートたけしが司会のUFOシリーズみたいだった。
そして、一瞬の沈黙があり、怒涛のように私は彼らに質問攻撃をした。
あの監視カメラの映像はどうやって手に入れたのか?とか、夢の中に入ってこれるのか?とか、やはり英語で喋ったのか?とか、そんなところか?それに対し、
「あの映像は意識体として監視カメラの機械内に入り、それをここで物資化しました。夢の中にも勿論入りますが、あまりやりたくはありません。言葉は、彼らの意思を読み取るのでテレパシーみたいな仕組みだと思いますよ、もっとも相手が理解する言語で分かりやすくが、我々のモットーですから」
オーランド系は判って頂けましたか?みたいな態度で私に説明した。
「しかし、やっかいなことに、これからなりそうなんですよ。それと言うのも、彼らに我々は工藤さんの使いのものです、を、連呼したんですよ、いえ、下の名前までは言いませんでしたけど、彼らのネットワークも意外に張り巡らされていますからね」
オーランド系の話に私は正直、ピンとこなかった。
「え、どう言う事?彼らのネットワークって、まさか?」
「そうです、最悪、我々が行なったことは全部、クドウさんという男が指示した、アメリカ合衆国に対するテロ行為であると」
「まさか、そんな、それが何で分かるの?そうか、宇宙人みたいな、全能の神みたいなものだから分かるんでしょう?」
「この地球上の情報は全てチョイスすることが出来ますので、その中で、ホワイトハウスの今日の一連のことは、レベル5(最高レベル)ほどのテロ攻撃であることに、今決まって、」
オーランド系はそして、目を瞑って何かを通信しているように下を向いた。
「一旦、中央情報局にデーターを集めて、国防省とかの事務次官とか、軍隊の最高指令本部とかのトップが、今、緊急会議を開いているわ」
キャメロン系はオーランド系が黙っている間にそう話した。
「それって相当まずいんじゃない?て、ことは近々で私のところに、アメリカの要人が来て、捕まえるってことになるの?これって、本当の話?なんかさ~ピンと来ないんですけど」
私は、本当にピンときていなかったし、半分は楽観視していた。
「彼らの行動は逐一報告しますので、そこはご心配なく、それよりも、今後の展開ですが、やはり、ここは工藤さん本人が前になって行動すべきだと思うのですが!」
オーランド系がようやく喋ったかと思ったら、今後のことについてのご相談だった。
「い、今の状況でも、随分とまずい状況なのに、今度は、私が前面に立って、あなた達が前に言った、人類に対しての審判ですか?を実行しろと」
私は呆れた顔でそう二人に話した。
「そうです。やはり我々が間違ってはいなかったのです。工藤さん、あなたしか人類に対してジャッチ出来る存在はいないのです。これからでも直ぐにでも始めましょう」
彼らは迷うことなく、さも当たり前のように私に進言した。
ほんとかどうか未だに信用はできないけれども、アメリカの大統領に直接談判に彼らは行動したことは事実かもしれないし、それが昨夜、この状況を逃げるために咄嗟に言ったことを真に受けて動いたのだから、私にもいくらかの責任はあるのでは、と考えたりしていた。
が、でも、これはいったいどうなっているんだ、と言う、本来最初に浮かぶべく常識がもたれかかってもいた。
「とにかく、今、何時だと思うんですか?夜の10時を回りましたよ、私には今日やらなくてはいけないことがありますので、お引取り願えませんか?例えば、もし、そのアメリカのエージェントか要人とか、またまたアメリカからの要請で動いてきた警察が来ましたら、なんとかしますから」
と話を終えるか終えないかの時に、私の家のほうに何台かの車が止まる音と、赤いくるくる回るランプが茶の間の道路側の窓から見えてきた。
「こんなに早くアメリカは動くんですか?」
私は何と早い展開で大事件になるのかと、感心したり、急に不安になったり、そして、誰もが思う、友達や、親戚、それよりも親、兄弟にどう説明したら良いんだろう、と言う事が頭の中を巡っていた。
てっきり、こちら側に直接来るのかと思い、憂鬱な気分で待っていたら、警察は、我が家の道路を挟んで反対側の家にチャイムを押して玄関先で事情聴取を始めだした。
「工藤さん、彼ら警察は埼玉県警の警察官ですから大丈夫です。それに、彼らはお向かいの吉田様宅から昨日の謎の閃光のことで、彼らの解釈として、雷か、近くの送電線のショートが原因だったら火事の原因になりかねないから、色々と調べてくれ、みたいなことを言っています」
オーランド系は丁寧に説明したが、お向かいだし、玄関先での会話だから彼の説明を聞かなくても聞き取れていた。
「次は私のところかな?」
私は身構えながら玄関へ移動しようとすると、
「次はお隣さんですよ、しかし、彼らとは違う東京からの本警が向かいだしましたね」
と、キャメロン系がオーランド系を見ながらそう喋った。ホンケイ?って何、てな感じで質問しようと、あと、お向かいの方の名前もよく知っているな?も聞こうとしていたが、彼らはなにやら黙って見詰め合いながら、次のことを考えている感じで、話が切り出せないでいた。
「ほぼ工藤さんのことが、アメリカを通して日本政府にも連絡がいったようですね、ここも、まもなく包囲されると思います。すいませんが一先ず、ここを離れましょう」
「はい?ここを離れるって?ここは私の家ですし、そんな大袈裟になることは無いでしょう?ここは日本ですよ?平和の国、ニッポンですよ」
彼らは、慌てず、しかし確実に次の手を考えながら見詰めコミュニケーションを終えて、ソファーから同時に立ち上がった。
彼ら二人は私の近くに寄り添う形で近付いてきた。
「な、なんですか?暑苦しい、これは何の真似ですか?私のボディーガードのつもりですか?」
「工藤さんは生身なので、もし万が一、銃撃戦になった場合、我々が盾にならないと命の保証がありませんので」
キャメロン系にそう言われて、身体を密着されると、正直、変な気持のほうが先に立ってしまった。
「何時ごろに、ホンケイだっけ、が来るの?あなた達はエスパーみたいな力もあるんでしょう?あ、そうだ、アレ、あれですよ、その本警とか言う向かっている奴らの意識を遠隔操作すれば良いじゃない、そうすればここまで来れないし、あ、そうだ、何だったら映画みたいに関係者全員の記憶を削除するとか?ね、聞いてますか?」
私はナイスアイディアだと言わんばかりに得意になって言った。
「申し訳ございません、それは出来ないんですよ、それは余りやってはいけないことなのです」
オーランド系は大変、申し訳ない、と言う感じで深くお辞儀をした。
「でもさ、さっき、余りって言ったよね?だから、その余りをここで使おうよ、ね?」
「宇宙の摂理に反しますから、勝手に人様の星の感情やら考えを変えることは、我々は出来ないのです。ましてや、精神レベルが低い者をいじってはいけないのです」
キャメロン系の私のアイディアに対し、猛反発してきた。
「だったら、なんで、私にはこんなに関与するんですか?はっきり言って大迷惑ですし、かなりいじられているんですけど!」
私は半分、納得がいかないという表情で怒りながら言った。
「工藤さん、あなたは薄々、感ずいているのではなにのですか?あなたはこの地球上で、誰よりも精神レベルが高いのですよ、もし彼らに、我々が工藤さんと同じように接したなら、発狂する者も出ることでしょう」
また、得意のヨイショ攻撃を二人は仕掛けてきた。だが、確かに一つ当たっていることはあると思った。
私はこの状況を比較的すんなりと受け入れているもう一人の自分がいることである。
なんかドタバタ喜劇みたいだが、こんなもんだろうな!みたいに妙に冷めている自分が俯瞰で見ていたりする。あれ、だ。
アレ、幽体離脱して、自分が寝ているのを天井まで上昇して魂になった自分が見てる、みたいな、アレだ。
「とにかく、何時ごろにココにアメリカの息が掛かった奴らが来るのよ」
私は半分、諦めて投遣りな感じで聞いた。
「すいません、もう到着してしまいました」
オーランド系とキャメロン系が同時にハモって答えたと同時に、我が家の玄関からチャイムが鳴り、当然だが私だけがびくっとした。